タワレコ限定、次はオリアル紙ジャケ単品発売！

　来年でデビュー40周年を迎えるカナリーガールこと河合奈保子さん。 9月にはライブアルバム4タイトル（こちらで紹介）がタワーレコード限定で紙ジャケ復刻されましたが、今度は80年から84年までのオリジナルアルバム9作「LOVE＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」「Twilight Dream＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「DIARY＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「サマー・ヒロイン＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「あるばむ＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「SKY PARK＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「HALF SHADOW＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「Summer Delicacy＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」「DAYDREAM COAST＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」がラインアップされました！
 
　河合奈保子オリアル復刻というと、93年からQ盤のCD文庫としてリリース。2001年にはオンデマンドCD-R「あ～る盤」として流通し、2007年にはアルバムBOX「NAOKO PREMIUM」として紙ジャケ復刻されております。
　BOXが入手困難になってすぐの2008年にはオンデマンドCDとしてリリースされていますから、音源入手には困らない状態でしたが、やっぱりCD-RではなくCD、それも紙ジャケというパッケージが欲しいものですよね。
 
　ということで、今回は「NAOKO PREMIUM」に準じた紙ジャケット仕様で復刻。音源も同一の2007年リマスター音源を使用して単品発売となるそうですから、BOXを買い逃していたファンには必携のアイテムといえるでしょう。
 
　さて、1980年代という新しい時代の到来は、歌謡曲とニューミュージックの融合が理想的な形で結実するニュータイプのアイドルポップスの夜明けでもありました。それは80年にデビューした新人でいえば、キャニオンの岩崎良美とCBS・ソニーの松田聖子という両巨頭が展開した音楽に顕著だったのですが、同期の河合奈保子の場合はコロムビアということもあってか、初期の楽曲はどこか70年代を引きずった歌謡ポップス。どんどん高度化してゆくアイドルポップスにおいて、ビジュアルを含め野暮ったい印象が強かったのは確かです。
 
　であるからして、80年10月リリースのファースト「LOVE＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」（オリコン最高7位）の世界観やテイストはやっぱり70年代的。林哲司作曲のタイトル曲はともかく、デビューシングル「大きな森の小さなお家／ハリケーン・キッド」（アルバムバージョン）が核となっているのですからね。
　しかし、実はそれこそが生真面目で丁寧な歌唱を信条とする歌手・河合奈保子の本質に重なった部分であり、あのナハハ的スマイルと相まって生まれた独特の魅力だったのではないかと思っています。
 
　結局あっさり人気が出てしまったこともあり、この流れは「愛してます」「17才」をフィーチャーした81年のセカンド「Twilight Dream＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」（2位）や、「スマイル・フォー・ミー」で聖子のライバルとなった「DIARY＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」（3位）まで引きずっていくこととなります。
 
　とはいえ同時期のアイドル全般が職業作家の手を離れて行くに連れ、結局はシフトチェンジせざるを得なくなっていきますが、その兆しが表れたのが82年の「サマー・ヒロイン＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」（6位）。そう、竹内まりやの初起用でした。
　これがシングルでも展開され、「けんかをやめて」「invitation」での上質で知的なイメチェンが行われていくワケですが、アルバムとしてぐんとグレードアップしたのが、まりや＆来生姉弟作品を収録して唯一の首位を獲得した「あるばむ＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」（1位）。聖子のユーミン、ヨシリンの尾崎亜美など、好敵手の影響もあったのかもしれませんが、これで河合奈保子にもアーティスティックな色合いがつき始めたのでした。
　ここで特筆すべきは、普通「夏のヒロイン」みたいな前時代的な価値観を歌っていたアイドルがこういう方面へ転換すると、どうにも居心地の悪い違和感がありそうなんですが、彼女の場合とても自然だったこと。やはり、素直で柔和な人柄と音楽的素養の賜物だと言わざるを得ません。
 
　そして、その流れは、より洗練されたアイドルポップスの追求と自然体アーティストっぽい流れの両輪操業へ。83年には筒美京平と石川優子を半分ずつ収録したアルバム「SKY PARK＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」（2位）として結実することになります。
　ヒットと脱皮を狙い、筒美先生がハードに変身させた同日発売のシングル「エスカレーション」はスコーンと抜けるように大ヒットするのですが、この成功を踏襲するように「HALF SHADOW＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」（2位）からの作品は、本人のキャラとはちょっと乖離した主体的な女性像がメインになっていくのです。キャラも含め資質的には石川優子路線が最も合っていたのかもしれませんが…。
  
　事実、84年になると初期の天真爛漫さはすっかりなりを潜め、アダルトで高度なシティポップスが基本に。
　きっと本人が目指したかった路線であろう八神純子の曲が半分を占める「Summer Delicacy＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」（6位）を経て、初のLA録音にしてD.フォスターなどが総力を結集した新境地「DAYDREAM COAST＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」（3位）と続きますが、やはり「エスカレーション」のヒットで売野雅勇さんがメイン作詞家となってしまったことが、シンガー・河合奈保子にとっての運命の分かれ目ではなかったかと思っています。
 
　という含みを残しながらの9タイトル。80年から84年までの変遷を通して聴くと、ひときわ幼かった少女が、駆け引きも手管とする大人の女性へと大きく変身した様子に驚きます。もしかしたら80年組で最も激変度合いが高かったのかもしれませんね。
　そういう意味でも今回は奈保子ファンやコレクターのみならず、見逃せないラインアップといえそうです。