90年代以降、第2期ソニー時代のセルフ聖子ベスト！

　今年の4月1日で、デビュー40周年目に突入した松田聖子さん。プレ40周年ということもあり恒例のコンサートツアーは“Seiko's Singles Collection”と題したシングル曲縛りという構成で、各地のファンを大満足させています。
 
　今回のコンサートのセットリストを見ても分かるように、聖子といえば、どうしても黄金期の80年代ばかりクローズアップされてしまいますが、80年代は40年のキャリアで最初の10年だけ。
　あとの30年、血気盛んなセルフ時代の聖子もヨロシク！ということかどうかは分かりませんが、90年代から2000年代まで、それもソニー時代に絞った33曲を厳選した2枚組ベスト「 SEIKO STORY～ 90s-00s HITS COLLECTION ～＜初回限定仕様＞ 」が編まれることになりました！
 
　80年代の「SEIKO STORY ～80's HITS COLLECTION～」（ こちらで紹介）に続くシリーズ第２弾というタイトルですが、聖子の場合、デビューから長年在籍したソニーを95年でいったん離れているんですよね。2002年には出戻ってくるのですが、2008年にはまた移籍と、実質の90年以降のソニー時代は10年余り。
　であるからして、タイトルが同じでもオールタイムではない分、やっぱり80年代編とは別物と考えた方がよさそう。しかも全米デビュー後の日本での活動は自ら作詞を手がけ、やがて作曲もと、物議を醸すセルフ聖子時代となりますからね。
 
　思えば、80年代は誰もが認めるトップアイドルとして1位が当たり前といわれた聖子ですが、90年代は紅白歌合戦に落選し、数々のスキャンダルに見舞われるなど、各方面から完膚なきまでの聖子バッシングが巻き起こった苦難の時代。
　言い換えると不撓不屈の聖子精神の真髄というか、比類なき強靱なスター性が証明された時代でもありました。
 
　せっかくですので今回のベストの流れで振り返ってみますと、聖子の日本での90年代は「We Are Love」（シングルはデュエットじゃないから大丈夫ですヨ！）からスタートしますが、レギュラーシングルでは初めてトップ10入りを逃してしまうんですよね。
 
　それでも小倉良さんというよき音楽パートナーを得て、神田正輝さんとの夫唱婦随でレコード大賞最優秀歌唱賞を受賞したバラード聖子のビギニング「きっと、また逢える…」、このピリオドで最大のセールスを記録したキラキラ聖子ポップス「大切なあなた」と、主演ドラマ主題歌によるベスト10ヒットを連発。
　誰が何と言おうがセルフ聖子を推進し、ついにはたかの友梨ビューティークリニックのCMソング「輝いた季節へ旅立とう」で紅白に返り咲き。復活ののろしを上げ、96年には聖子史上最大のヒット曲「あなたに逢いたくて～Missing You～」をリリース…するのですが、これはマーキュリー移籍後のため、本作にはソニーで再録した2004年のバージョンが収録されています。
 
　そして愛娘・神田沙也加もSAYAKAとしてソニーからデビューすることになる2002年、満を持してソニーに復帰。「めざましテレビ」テーマソングとなった「素敵な明日」が第１弾シングルでした。
　余談ですが、この時、間髪入れず発売予定だった移籍第１弾アルバムが直前になって中止となりましたが、実はセルフをいったん中断して、スピッツなど第一線アーティストからの提供を受けてアルバムを制作していた…というまことしやかなウワサが流れたんですよね。
　公式には事実無根の怪情報としてすべて否定されてしまったような記憶がありますが、松本隆＋平井夏美コンビ作品としてタイトルまでがリークされた「さいごの抱擁」は、後に同タイトルのナンバーがクミコの歌で発表されています。ですので、もしこの時実際にレコーディングされていたとしたら、いつの日か蔵出ししてほしいものですね。
 
　このあたりがソニーvsセルフ聖子の潮目だったと思うのですが、2003年には、聖子がアマチュア時代ファンだったという原田真二さんがプロデューサーに。
　真二作品でイメージチェンジした「Call me」、ライオンズマンションCMソング「逢いたい」といったシングルをはじめ、傑作と誉れ高いアルバム「Sunshine」だけでなく、コンサートも一気にレベルアップし、セルフ否定派からも支持を集めますが、結局は2年ほどで解消してしまうんですよね。
 
　その後のサウンドプロデュースは、「永遠さえ感じた夜」の鳥山雄司さんを経て、小倉さんが映画「奥さまは魔女」日本版テーマソング「I'll fall in love」で復活。全国民放FMラジオ47局統一キャンペーンソング「しあわせな気持ち」、SAYAKAがペンネームで作詩作曲した「bless you」などを発表するも、2007年にはまた小倉さんと離れ、作詞作曲のすべてを自身で手がけるようになった聖子。
 
　コンサートで合唱曲になった人気作「涙がただこぼれるだけ」では小林信吾さん、企画盤カップリングの「二人ならば」と「クリスマスの夜」では船山基紀さん、「花びら舞う季節に」では𠮷川慶さん、「Love is all」では宮野幸子さんというように1作ごとにアレンジャーを変えていきますが、翌2008年のシングル「 あの輝いた季節」では小倉さんがカムバックし、それがソニー最後の作品となりました。
 
　という聖子90年以降のソニーでの歩み。ファンであっても、なかなか振り返ることがないような気もしますが、聖子らしくシングル以外でも大きなタイアップが付いたナンバーも多いですし、詩はともかく曲に関してはバリエーションも多彩。一口にセルフといっても長い歴史があったことを痛感しますよね。
　ツアー時期にオリアル発売のなかった令和元年に出るこのベストは、来年の満40周年に向けてという観点でも大きな意味がありそうな気がします。
 
　なお、今回は、2018年の大村雅朗作品集「SEIKO MEMORIES ～Masaaki Omura Works～」（ こちらで紹介）のためにマッキーこと槇原敬之さんがリアレンジした「櫻の園」（松本隆さんが取り持った大村さんの聖子への遺作です）も収録。
 
　さらに、ボーナストラックとして謎の演歌歌手・MATSUYAKKOとしてリリースした怪作「かこわれて、愛jing」、アニメ主題歌として登場キャラクターのPawPaw名義でリリースしたSAYAKA作品「WE ARE.」という、今となっては貴重な別名義シングルも追加されていますし、初回仕様限定でホログラムジャケット封入、オールカラーブックレット、デジタルリマスタリングのBlu-spec CD2、ショップによっては外付けの特典付き（Amazonは「 【メーカー特典あり】 SEIKO STORY～ 90s-00s HITS COLLECTION ～ (ポストカード付) 」）ということですので、やっぱり早めに押さえておいた方がよさそうです。