ナベプロ系70年代アルバムがオンデマンドCD-Rに！

　すべてCD化済みだし、CD-Rだし、ということでスルーしていたのですが、久々にリクエストをいただきましたのでリコメンドいたしましょう。渡辺音楽出版の音源をAmazon DODのオンデマンドCD-Rとして復刻している「昭和歌謡・復刻盤シリーズ」。
 
　昨年11月に第1弾10タイトルでスタートし、この6月には第2弾10タイトルが追加。レコードデビュー順に紹介しますと、小柳ルミ子「 私の十二曲 日本抒情歌集 」「 京のにわか雨 」「 昨日・今日・明日（2枚組） 」、アグネス・チャン「 ひなげしの花 」「 花のように 星のように 」「 草原の輝き 」「 あなたにありがとう 」「 AGNES IN WONDERLAND／不思議の国のアグネス 」、あいざき進也「 気になる男の子 」「 キューピットの青春 」、アグネス・ラム「 I AM AGNES LUM／アグネス・ラムです 」「 With Love／Agnes Lum 」、大上留利子「 Typhoon Lady 」「 Dreamer From West 」「 ええ歌ばっか。 」「 大阪で生まれた女 」「 スターキング・デリシャス 」、桑江知子「 BORN FREE. 」「 熱風 」「 MR. COOL 」というラインアップ。すべて渡辺プロに所属し、レコード会社もナベプロ系のワーナー・パイニアとSMSだったメンツばかりとなっております。
 
　まずご紹介したいのが、清純派アイドルだった“みんなの恋人”小柳ルミ子さん。デビュー同期の南沙織さん、天地真理さんとともに新3人娘として活躍、今日まで続くアイドルブームの基礎を築いた立役者といえる存在です。
　今回は3タイトルで、まず71年9月発売の「 私の十二曲 日本抒情歌集 」は、71年の年間オリコン1位に輝いたデビューシングル「わたしの城下町／木彫りの人形」をフィーチャーしたファーストアルバム。「知床旅情」「女ひとり」「さいはて慕情」「南国土佐を後にして」といった列島各地を歌ったヒット歌謡から、「城ヶ島の雨」「浜辺の歌」といった古き良き叙情歌まで、売り出しのコンセプトとなったディスカバー・ジャパンそのものという内容。うるさ型のお年寄りにさえ愛されたルミちゃんの清らかな歌声が堪能できます。
 
　72年8月発売の「 京のにわか雨 」は、オリジナル曲だけでまとめた初のアルバムで、「京のにわか雨／東京わらべ歌」「瀬戸の花嫁／それでも川は流れる」という２大オリコンNo1シングルを収録。“はるかなるこころのふるさと”というサブタイトル通り、初期のふるさとシリーズの総集編といった趣で、千葉紘子がカバーしてヒットさせた「折鶴」のオリジナルが入ったLPとしても有名ですよね。
 
　そして74年11月の「 昨日・今日・明日（2枚組） 」は、オリジナル＋ベストで構成された2枚組。オリジナルは2年ぶりにオリコン1位を獲得した「冬の駅／つむぎ恋唄」を中心に。弾厚作作品も入っております。ベストは「わたしの城下町」から「ひとり囃子-「祇園祭」より-」までのシングルA面12曲を完全網羅。オリジナル盤よりもお買い得なプライスです。
　なお、ファーストは97年の「70's smile」シリーズで単体復刻済み、その他も2011年のBOX「小柳ルミ子 デラックス・ボックス」（ こちらで紹介）で全曲CD化済みですが、単体としてコレクションしたい人にはオススメですね。
 
　続いてはアグネス・チャン、デビューから２カ月後の73年1月発売のファーストアルバム「 ひなげしの花 」。シングル「ひなげしの花／初恋」以外はすべてカバー曲で、いきなりの人気にあやかった即席盤のイメージもありますが、とにかくフレッシュな魅力がいっぱいです。
　選曲はフォーク中心で、得意の英語曲は香港でのデビュー曲「サークル・ゲーム」の日本録音版をはじめ、カーペンターズの「スーパースター」、南沙織「17才」のインスパイア元として知られるリン・アンダーソンの「ローズ・ガーデン」。一方の日本語は森山良子の「遠い遠いあの野原」「この広い野原いっぱい」やトワ・エ・モワ「或る日突然」「誰もいない海」などが入っていますが、注目は、同じナベプロで、元々はフォーク志向だった天地真理の「水色の恋」。アグネスは、この真理ちゃんの後をぴったりと追い、１年も経たないうちに真理ちゃんに取って代わるように国民的人気のトップアイドルへと上り詰めていくんですよね。
 
　73年5月のセカンド「 花のように 星のように 」は、第2弾シングル「妖精の詩／いじわる雨の日曜日」をメインにしたオリジナル＋フォークカバーで、初の全曲日本語。香港時代から歌っていたという「思い出のグリーン・グラス」を筆頭に、ベッツィ＆クリス「白い色は恋人の色」、シモンズ「恋人もいないのに」、チェリッシュ「ひまわりの小径」など爽やか。
 
　73年8月の「 草原の輝き 」は、数々の新人賞に輝いたシングル「草原の輝き／山鳩」をベースにしたサード。ビザの書き換えや芸能活動のため、しょっちゅう帰国していたせいでレコーディングの時間がとれなかったのか、当時でもことさら再収録の多いアグネスですが、ここでは既発のシングル「ひなげしの花」「妖精の詩」に「遠い遠いあの野原」「白い色は恋人の色」「サークル・ゲーム」が再収録となり、ハーフベストと言ってもいい内容です。カーリー・サイモンのカバー「うつろな愛」や独自のアレンジによる「トップ・オブ・ザ・ワールド」などの英語カバーに加え、自作曲「You’re 21, I am 16」も収録。トータル的にとても聴きやすい構成だと思います。香港の爽やかな夏を思わせるジャケットも素晴らしいですよね。
 
　次の２枚組「 あなたにありがとう 」は、「ひなげしの花」から「美しい朝がきます」までを網羅したベストアルバム。74年11月リリースでルミちゃんの「昨日・今日・明日」と対をなすものですが、こちらはオリジナルはなく、これまでのシングルとアルバムからの既発音源のみで構成されています。帯の“ハイ！アグネス・チャン”がタイトルだと思っていた人は多い模様…。
 
　そして最後の「 AGNES IN WONDERLAND／不思議の国のアグネス 」は79年4月発売、月刊「明星」の表紙も飾ったゴダイゴmeetsアグネスの意欲作。76年の引退騒動、カナダ留学を経て78年に本格復帰してから３作目で、タイトル通り「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」をモチーフに、かわいいけどシュールなファンタジーの世界がきっちり音楽で表現されています。先行シングルとなった「鏡の中の私（Through the Looking Glass）／I'm Lost」、後に日本語詞をつけた「100万人のJabberwocky」としてシングル化される「Talkin' Jabberwocky」（タケのジャバウォッキーが楽しい！）、ポップな妖精アグネスが戻って来たような名曲「Wonderland」など、ゴダイゴらしさ満載の名盤です。
　ファーストは97年の「70's smile」シリーズで単体復刻済みですし、セカンドとサード、2枚組ベストは、オーダーメイドファクトリーで2011年に商品化された10枚組BOX「アグネス・チャン プレミアム」（ こちらで紹介）で、「Agnes In Wonderland 不思議の国のアグネス」（ こちらで紹介）も2009年に単体復刻済み。いずれもレア度は低いですが、内容的には折り紙付きですぞ。
 
　ほか、プッチことあいざき進也の2枚にしてもBOX「FOREVER SHINYA～コンプリート・アルバムズ＆プレミアムDVD BOX 1974-1979」（ こちらで紹介）で復刻済みなのですが、現在は入手困難ですので、CD-Rとはいえども喜ぶ人は多そうではないでしょうか。
　個人的には、ムーンライダースがバックを務めたライブ盤「ファミリー・コンサート」などアグネスの未CD化のものを長年熱望しておりますし、第3弾、第4弾と今後の展開にも期待したいところです。