筒美先生50周年で3社から初の自選コンピ集！

　昨年は、没後10年＆作詞家50年の阿久悠さん（ こちらで紹介）や、作曲活動50周年の村井邦彦さんと作詞活動50周年の山上路夫さん（ こちらで紹介）、ちょっと半端ですが作詞活動47周年を記念して風街イベントを開催した松本隆さんというように、アニバーサリーイヤーを迎えた作詞家、作曲家の先生たちが多かった印象ですが、かの筒美京平先生も作曲家生活50周年でした。
 
　これまで多くのコンピ盤がリリースされ、いろいろと出尽くした感がある先生の企画ですが、今回50周年記念盤として、コロムビア、ユニバーサル、ビクターの３社より音楽ジャンルごとに分けた3タイトルの初の自選集が登場することになりました！
　当初は昨年の12月20日発売という情報もあったようですが、正式には今年3月のリリースへと変更になった模様です。
 
　筒美先生の50周年記念のリリースとしては、ソニーから昨年2月に「TSU-TSU MIX」（ こちらで紹介）という画期的なノンストップDJミックスコンピ2タイトルが出ておりますが、今回は、コロムビア編のAOR歌謡「 筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス AOR歌謡 」、ビクター編のアイドル「 筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス アイドル・クラシックス 」、ユニバーサル編のニューミュージック&J-POP「 筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス シティ・ポップス編」、という3タイトル。
　しかもメーカーの枠を超え、筒美先生ご本人の意向をふまえた選曲となるそうですから驚きです。
 
　売れなかった曲には何ら興味を示さなかったという筒美先生ですから、レアナンバーのチョイスは期待できないかなと思いましたら、そこはかの高護さんの企画監修。
　大いに期待できそうですし、先生自らが選曲に関わるというのも初めてのことでしょうから、これは内容の好みに限らず、ぜひとも入手すべき記念アイテムではないかと思っております。しかもデザインは信藤三雄さんとのことですからね。
 
　ちなみに、これまでの周年アンソロジーを近い順に振り返りますと、まずは今から5年ほど前、2012年の45周年時。ソニーが途中脱退したもののメーカー6社による「筒美京平作品集 GOLDEN HITSTORY」シリーズ6タイトル（ こちらで紹介）がリリース。代表曲に交じってレアな初CD化音源もチラホラと収録され、これまでのCDを持っている人でも新たな発見があったと思います。
 
　そして企画から外れたソニーは翌年、30周年時の「筒美京平HITSTORY」を1組にまとめた上その後の15年間のナンバーも入れてグレードアップした「筒美京平Hitstory Ultimate Collection 1967～1997 2013Edition」（ こちらで紹介）を発売しました。このBOXは今も入手可能ですので、今から筒美先生のアンソロジーを買おうという人は、コレを真っ先にどうぞ。
 
　続いては10年前、2007年の40周年。各社合同のシリーズとしてはインスト集「筒美京平ソロ・ワークス・コレクション」シリーズ（ こちらで紹介）。BOXは、日音が企画し、阿久悠BOX「人間万葉歌」と対になるような「THE HiT MAKER -筒美京平の世界-」（ こちらで紹介）がソニーから発売となりました。
 
　そしてかつてない再評価が高まったのが、30周年の97年。そう、信藤三雄さんデザインのとびきりお洒落なLPサイズ２BOX「HITSTORY 筒美京平 ULTIMATE COLLECTION 1967-1997」の発売です。発売社はソニーで、予想を超える予約が殺到、発売日を延期しての対応となり、さらなる話題を呼んで追加プレスも行われるなど、大反響を呼びました。
　その後のBOXブームに先鞭をつけたパイオニア的商品ですが、特に画期的だったのは、メーカーの垣根を飛び越えた合同企画で、業界のコンピ盤改革に与したことでしょう。もっとも各社に実績を残す筒美先生だからこそ築くことができた協力体制でしょうが、音源の貸し借りが今や常識になったことにあらためて感謝したいと思います。
 
　それが当時常識ではなかったことは、BOXの後各社から出た「筒美京平 ウルトラ・ベスト・トラックス」シリーズがレコード会社別の選曲だったことで分かるでしょう。
　いずれにしても、この30周年記念リリースこそ、作曲家・筒美京平の偉大さを全国津々浦々まで改めて知らしめる出来事となったのでした。
 
　それ以前は、大ヒットメーカーであっても職業作家である以上、さほどクローズアップされる存在ではありませんからね。その証拠に、その前の87年の20周年は、京平フリークの第一人者・近田春夫さん解説による2枚組「Times～筒美京平20thアニバーサリー ビクター編」のみが発売という状況で、寂しい感じでしたから。
 
　ちなみに、最初の周年は10周年目を迎えた1976年。コロムビアが「粋なうわさ　橋本淳・筒美京平ゴールデン・アルバム」、ビクターが岩崎宏美、桜田淳子、チェリッシュ、麻丘めぐみによる「四人娘と筒美京平」、ソニーが和田誠さんのジャケットイラストによる「ひとふし 筒美京平メモリアル・アルバム」という3枚のLPをリリース。それぞれ1枚物ではありましたが、業界的には盛大なお祝いを行っていた印象があります。
 
　その際、筒美先生とのコンビで数々の名曲を生み、お互い初のレコード大賞をコンビで受賞したかの阿久悠さん（昨年のレコ大では特別賞を受賞）が「したたかな地の花のように」という一文を贈られています。
　当然ですけれども名文でありますが、今となっては埋もれているような気がいたしますので、せっかくの機会、最後にそちらを引用させていだき、筒美先生の50周年をお祝いしたいと思います。
 
 
「したたかな地の花のように　　　　阿久悠
 
　京平さん
　あなたがしたたかな地の花なら
　ぼくは
　その花のしたたかさを知る風になりたい
　風は花を散らすことなく
　花は風をそらすことなく
　互いの強さを雄々しさを
　ひそかに賞讃し合う
　そんな風景が
　ぼくの心の中では
　望ましい姿としてあるのです
 
　京平さん
　あなたは日本の歌を
　弱者のためいきだけでなく
　精神の快感としても存在し得ることを
　証明してくれた革命家です
　そして
　それが如何にもさりげなく
　まさに
　したたかな地の花のごとくでもあることに
　敬服するのです」