黄金のHITSTORYふたたび!45周年の各社共同企画!
思い返せば、ここ15年ほどのレーベルの枠を超えたコンピレーションや、豪華なBOXセットなど和モノの復刻ブームは1997年暮れの筒美京平作曲家30周年記念から本格的に始まったのでした。
金字塔となったソニー発のLPサイズ2BOX「HITSTORY 筒美京平 ULTIMATE COLLECTION 1967-1997」を皮切りに、各社から「筒美京平 ウルトラ・ベスト・トラックス」シリーズが出たり、充実の関連本が出たり、筒美サウンドと同様、プロダクツのセンスもピカイチの商品リリースが相次ぎ、全国津津浦浦の筒美フリークたちは狂喜乱舞したものです。
あのリスペクトの嵐は一大ムーブメントとなりましたが、まさに復刻時代の狼煙という感じで他の先生方やアーティストにも波及していき、アイドルポップスや流行歌という意味での歌謡曲の再評価が一般にまで広まっていくきっかけになったといっても過言ではありません。
ちょうどIT時代の到来と重なったり、続くミレニアムの20世紀回顧に連なったりしたことも運命的というか、天からの啓示のような気がしたものです。
これに伴い、それまでオタク扱いをされ肩身の狭い思いをしていた愛好家たちも水を得た魚のように輝きだし、同好の輪は蜘蛛の巣の上に広がっていき、歌謡曲というものに対する世間的な地位はぐんぐん上がっていったように思います。
かつては時代に使い捨てられる宿命に甘んじていた流行歌が、まずキッチュな取り扱いで注目され、次第に息を吹き返し、やがて本質的な魅力が再認識され、いつしか昭和歌謡という名がついたスタンダードになっていく…「ブルー・ライト・ヨコハマ」を筆頭に、そんなビューティフルなお話をリアルに体現してみせたことこそ、筒美マジックの真骨頂ではなかったかと思っています。
さて、その後も40周年目となる2006年には、ソニー発で非売品CMソングやTV音源など初CD化のレアナンバーも入ったコンパクトな4枚組BOX「 THE HIT MAKER-筒美京平の世界- 」や、レコードメーカー5社共同企画のインスト盤「筒美京平ソロ・ワークス・コレクション」シリーズが発売。
ほかにも、ソニー系の「筒美京平を歌う」シリーズを中心にアーティスト別の選集(南沙織、朝丘雪路、平山三紀、優雅、中原理恵、浅野ゆう子、沖田浩之、早見優、奥村チヨほか)が企画されたり、その時々に先生の天才的なセンスに基づく名曲群を堪能させていただいたワケですが、今年はぴったり45周年。
45周年目に入った昨年末にはオールカラーにリニューアルされ大幅増強補完された必携のデータブック「 筒美京平の世界 [増補新訂版] 作曲家・筒美京平データブック 1966-2011 (P-Vine Books) 」(和田誠さんの新装丁も泣けます)が発売されたり、筒美作品も取り上げた由紀さおり&ピンク・マルティーニの「1969」が世界中でヒットして一般層にもまたあらためて再認識されたり(今春「 真夜中のボサ・ノバ 橋本淳&筒美京平 ゴールデン・アルバム ~Around 1969~ 」が出たのはその流れ)、否が応でも祝賀ムードは高まっていた感じですが、ここに来て、ようやく45周年記念CDのリリースが決定した模様です。
最初は5社による合同企画と発表されていましたが、キングとポニーキャニオンが加わり7社からのリリース。
日本の音楽界で最も多くのヒット曲を生み出した作曲家にふさわしい大スケールとなるようです。
それが、ユニバーサル ミュージックの「 筒美京平 GOLDEN HITSTORY~また逢う日まで~ 」、EMIミュージック・ジャパンの「 筒美京平作品集 GOLDEN HITSTORY ~あなたを・もっと・知りたくて(仮) 」、ソニーミュージックの「 筒美京平 THE HITSTORY ~木綿のハンカチーフ~ 」、ビクターエンタテインメントの「 筒美京平 GOLDEN HITSTORY~ロマンス~ 」、日本コロムビアの「 筒美京平 GOLDEN HITSTORY~さらば恋人~ 」、キングの「 筒美京平 GOLDEN HITSTORY(キング編) 」、ポニーキャニオンの「 筒美京平 GOLDEN HITSTORY ~抱きしめてTONIGHT~ 」という7タイトル。
当初、15年前のHITSTORY BOXとちょうど同じ発売日(12月12日)だったので感慨もひとしおだったのですが、延期となりガッカリ…と思いきや、よく考えると前も11月発売が延期となったように記憶してますんで、そのへんもデジャヴ的といいますか、まさにHITSTORYふたたびという感じです。
内容は、各社自社音源を中心にした2枚組、40曲。大ヒット曲を中心に、7社合計280曲というスケールはウルトラ・ベスト・トラックスを再編集したような印象ですが、30周年時はソニーがBOX担当で単品のリリースがなかったので、今回は待望の発売といえますし、キングとポニキャンの新規参入組も期待大。
ちなみにキングは前回のインスト盤は参画していましたが、歌もので単独はソニーとともに初。ポニーキャニオンに至ってはまったくの初参画となります。
いずれもおもな音源はBOXで網羅されていたものの大ヒット曲に限られていましたので、スマッシュヒット以下の音源も含む今回のリリースは大いに楽しみですね。
ただ、先生自身の基本的な考えとして、シングル盤をヒットさせることが最大の使命であり目的であり、その見地からはヒットしなかった作品は価値がないとされていることが前提にあるがゆえ、こういうアンソロジーはどうしてもいつものヒット曲、王道の選曲がメインになってしまいます。
フリークやコレクターとなると、どうしてもレア音源にしか興味を示さなくなってしまうものですが、そこは先生の45周年。素直にお祝いしたいものですし、先生のまた新たなリイシューシリーズがラックに加わる喜びをかみしめたいと思っています。
しかもジャケットは、和田誠さんのイラストらしいので!
それに、15年前の「筒美京平の世界」初版本の時点ではかなりの未CD化作品がありましたが、この15年の間には思わず「まさか!」「奇跡!」と言っちゃうほどのマイナーアーティストのものまでが、筒美京平作品というだけで優遇され、CD化されてきたワケですしね。
といっても、今回は前のリイシュー以降にリリースされた近年の提供作品のチョイスもありますし、アーティストによってはこれまでとは重複しないナンバー(それも当初入る予定だった曲が多し)が選ばれていたり、モノによっては初CD化もあり、レア度が高いモノもちゃんとあるようです。
特に初参入組は魅惑たっぷりで、キング編では安倍律子「孔雀の羽根」、高田恭子「ラブ/貴方の暗い情熱」、中村晃子版「美しきチャレンジャー」などが含まれているようですし、ポニーキャニオン編に至っては第1回新譜の桜木健一「帰らない町」、クマとアサ「男と女」、結城大「若草の秘密」、ペイネの映画の日本版主題歌としても知られるあにたゆみ「恋するふたりに」、有砂しのぶ「そんなあなたが」などマニア垂涎のナンバーもごっそり。
ユニバーサル編の葵テルヨシ「かんじる10代」も待望の収録といえるんじゃないでしょうか。
ということですから、これまでの全集を持ってるから今回は見送ろうと思っている方も細かいチェックをお忘れなく。もちろん、かつてCD化されていても現在では入手困難になっている音源も多数ありますので、前回そろえなかった方はぜひこのチャンスにどうぞ。
ともあれ15年で激変した音楽メディアや視聴スタイル、購入方法や市場を思うと、50周年の際にはリアルショップが皆無になっても不思議じゃないかもしれません。もしかしたらパッケージとしてショップに並ぶ周年モノのはコレが最後になるかも。
先生の楽曲の素晴らしさに触れ、心地よい音楽を体感して育った筒美チルドレンとしては、次世代に伝えていく義務を全うしなければ…なんて思いを新たにしています。
なお、このタイミングで、2011年に制作され、先生も出演なさったNHK-BSプレミアムのドキュメンタリー番組「希代のヒットメーカー 作曲家 筒美京平」が11月14日に再々放送されるようです。
あの輸入盤チョイ聴きのエピソードや、最後の「雨だれ」のピアノ演奏など見どころ満載ですので、未見だった方は今回こそお見逃しなく!
(2012.11.2)
*ソニーミュージック編は発売中止となりました。ご注意ください。
収録曲は予定と一部異なっています。詳細については特設サイトでご確認ください。