オススメ復刻盤「須藤薫／GOLDEN☆BEST シングルコレクション」

　青春の思い出は永遠で、人それぞれ百者百様の美しい輝きを放つものだと思いますが、上質なポップンロールに彩られると、2割増し、いや少なくとも3割増しでキラキラするような気がします。そういう意味では、リアルタイムで須藤薫というボーカリストのうたを聴いてこられたことは本当に幸運だったと思いますし、何より多感な頃にめぐり逢えたことに、ただ感謝しています。

　何より薫ちゃんのうたはいつまでも永遠ですから、これからもずっと聴いていくでしょうし、きっとこれからも多くの人に聴き継がれていくことと信じています。ジョン・レノンだって、エディット・ピアフだって、美空ひばりだって、今もなお新しいファンを獲得し続けているのですからね。

　とはいえ、まだひと月も経っていないし、どうしても追悼盤という響きに涙してしまうのですけれど、ここはひとつ前向きにとらえて、まだ聴いたことのない人に手にとっていただくことを願いながらご紹介させていだきましょう。

　今回、新たに編まれるベストアルバム「 ゴールデン☆ベスト 須藤薫 シングル・コレクション 」！　しかも初の2枚組、それもソロ名義のシングルAB面完全コレクションなのです！

　あの心地よく安定したハスキーファルセットを駆使し、ポップスの歌姫として、杉さんはもとよりナイアガラ周辺にも根強い人気を持つ薫ちゃん。であるからして、昔からオリジナルアルバムやコンセプトベストのCDは早くからちゃんと出ていて、最初の引退までのアルバムはCD選書化もしっかり進んでおりました。

　選書が入手困難になっても、2007年には同志いや同盟の杉真理さん30周年に伴ってオリジナルアルバムが紙ジャケ復刻（ソニー盤の７タイトルは3月に再プレスされましたので、入手したい方は Sony Music Shop でお早めに！）されていましたから、コアなファンに至っては何度も買い直したりするなど、潤沢に入手できていたという環境にありました。しかも、その際には、未CD化だったアルバム未収録のシングル曲やレアトラックも入っていたので、他のアーティストに比べ飢餓感は全然なかったのです。

　ところが、一般向けのベストというと、2002年の廉価版6曲入りミニベスト「DREAM PRICE 1000 / 須藤薫 あなただけI LOVE YOU」というのもありますが、フルベスト盤としては、86年にオリジナルがリリースされ、93年にCD選書のスターコレクションとして再発された「須藤薫 ベスト・セレクション」１枚きり。
　CBS・ソニー時代のシングルA面は全曲（厳密にはシングルバージョンではないものも含む）入っていましたが、とっくに廃盤になっていたので、熱心なファンや当時を知っていて懐かしがる人以外にとっては、気軽に聴こうと思えるチャンスが少なかったというワケなのです。

　そんな状況のなか、お手軽でお得なG☆Bシリーズに仲間入りするのですから、これはホントに朗報でしょう。旧盤のCDや選書を持っているため紙ジャケに手が回らなかったという人にとっても、今回のCDは未収録曲を補完できるモノとなりますから、ぜひぜひオススメします。

　さて、薫ちゃんのソロとしてのシングルは全部で16枚。ほとんどがアルバムからのリカットとなっていますが、CBS・ソニーでのシングルは全12枚で、79年の「やさしい都会／卒業」が最初。
　ご存じ平山三紀さんのカバーで、ユーミン＋筒美京平コンビによる作品で、オリジナルはソニー時代の三紀さんを担当していた白川隆三さんプロデュース（白川さんは2番の頭の歌詞が特にお気に入りだとか）によるもの。
　後輩である川端ディレクターが大切に温め、薫ちゃんがカバーすることになったそうですが、ご本人はあまり乗り気じゃなくヒットもしませんでしたので、継子的な扱いを受けております。
　でもですね、薫ちゃんのバージョンはぐんとソフィストケイトされたシティポップスになっていて、ユーミンの詞の世界もまるで薫ちゃんのために書かれたようにマッチして聴こえるのですが…。

　さて、80年からはマンタさんプロデュースで、杉さんとのアメリカンポップス路線がバッシリ決まった「LOVE AGAIN／恋に落ちよう」からスタート。
　その後もファーストアルバムからの第２弾シングル「FOOLISH（渚のポストマン）／WOW WOW トレイン」、ホントはディズニー映画のイメージソングになるはずだったというワンダフルムーンな「THE BLACK HOLE／やさしい嘘つき」、当初はソニーのラジカセのCMソングに予定されていたという「恋のビーチ・ドライバー／悲しみのジュークハウス」、セカンドアルバムと同時発売の「思い出のスクール・ラブ／花いちめん 夢いっぱい」、ナイアガラブームに乗ってシングルカットされた「あなただけI LOVE YOU／涙のマイ・ボーイ」、代表曲となった「涙のステップ／緑のスタジアム」、ワンダフルムーンコンサート記念曲「セカンド・ラブ／さよならはエスカレーターで」、ラジオのオンエアがハンパなかった「涙のランデブー／悲しき恋のマンデイ」、つのだ☆ひろとのデュエット「噂のふたり／LITTLE SHORT ON LOVE」、そして84年の「裸足のままで／遥かなる肖像」まで、杉さん作品を中心に名曲が目白押しです。
　なお、これでいったん引退、87年に復帰してソニーからアルバムを2枚出しましたけど、この時はシングルカットはありませんでした。

　あとは89年の移籍後から93年までに出た4枚で、ハミングバードからの音壁ソング「つのる想い／さよならYESTERDAY」、秋元康作詞の「Continue／ミッドナイトにベイブリッジ」、ブレバタの二弓さんプロデュース「南の島からメリークリスマス／Blue Snow Midnight」、そしてファンハウスから出たテレビテーマ曲「小さな奇跡／With You」となっています。

　今回はこれら32曲を完全網羅。さらに「ウィンター・ラウンジ」「サマー・ラウンジ」という夏冬の企画アルバムに入っていた「LONELY DECEMBER」「８月生まれ」、そして近年の復活後杉さんとの４曲をボーナストラックとして追加。最後にはおくる会で杉さんが歌った「Forever Young」が収められる予定です。

　薫ちゃんの場合、他のボーカリストとは違い、シングルリリースはアルバムからのリードシングルという洋楽っぽいスタイルでしたから、ベスト盤でも違和感なく流れを感じながら聴けるのではないでしょうか。

　なお、今回はBlu-spec CD2による復刻盤として、最初の引退時に出たコンセプチュアルな姉妹ベスト「 SUMMER HOLIDAY 」「 Tear-Drops Calendar 」も同時発売。
　こちらはシングル、アルバムに関係なく選曲されたり、新曲や別バージョンが収められたりしている上、SEなどの仕掛け満載、オリジナルのように楽しめる構成となっていますので、また別の雰囲気。夏と冬、季節のBGMに最適なので、G☆Bと併せてお持ちになっても全然OKだと思いますよ。
　現在もCD選書が生きていると思いますし、長く愛されたベストセラーなので、既に持っている人も多いでしょうが、この機会に買い換えしてみるのもオススメします。

　そしてベスト盤をきっかけに薫ちゃんが残したポップンロールに魅了され、今回再プレスされた初期から最後のアルバムとなった「恋愛同盟」（こちらで紹介）まで、オリジナルアルバムへと進む人が増えれば、薫ちゃんもきっと天国で喜んでくれるような気がします。

（2013.3.27）