ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#932
岩崎宏美 80年代後期アルバム7タイトル<タワーレコード限定>
ディズニー・ガール +6(NCS-10219)・I Won't Break Your Heart +6(NCS-10220)・戯夜曼 +9(NCS-10221)・cinema +9(NCS-10222)・わがまま +8(NCS-10223)・よくばり +10(NCS-10224)・Me too +7(NCS-10225)
*2019.3.27発売、各¥2,300+税

80年代後期のオリアル7作がタワレコ限定復刻!

 昨春から、タワーレコード限定でアルバム再発が進んでいるヒロリン。
 70年代のライブ盤5タイトル( こちらで紹介)、70年代のオリアル( こちらで紹介)、 80年代のライブ盤6タイトル&リミックス・ベストアルバム( こちらで紹介)、80年代前半のオリアル( こちらで紹介)と続いてきましたが、いよいよ80年代後期の7タイトル「 ディズニー・ガール (+6)<タワーレコード限定>」「 I Won't Break Your Heart (+6)<タワーレコード限定>」「 戯夜曼 (+9)<タワーレコード限定> 」「 cinema (+9)<タワーレコード限定> 」「 わがまま (+8)<タワーレコード限定> 」「 よくばり (+10)<タワーレコード限定>」「 Me too (+7)<タワーレコード限定> 」で、最初の岩崎時代が完結することとなりました!
 
 いずれも2007年に発売されたオリジナル・アルバム紙ジャケット・コレクションのタワレコ限定再発(一部内容が異なります)なので、発売されたものは型番違いも含めて全部集めるというヒロリンコレクター以外は食指が伸びないかもしれませんが、当時未入手だった方や、MEG-CD復刻では満足できなかった方はこの機会にぜひお求めいただければと思います。
 何せオリジナルに忠実な紙ジャケ仕様はもとより、ボートラやセルフ・ライナーノーツなど非常に充実していますからね。一応、完全生産限定盤と銘打たれておりますしね。
 
 まずは83年10月の洋楽カバー企画盤「 ディズニー・ガール (+6)<タワーレコード限定>」。
 前年に出した「聖母たちのララバイ」のメガヒットで一段と脂がのってコッテリ艶やかになったヒロリンボイスを駆使し、ポピュラーナンバーに挑戦した1作です。全曲をハネケンさんがアレンジ、ジャジーな雰囲気もありますがポピュラー性の高い正統派という感じで、まさにヒロリンの歌唱にぴったりといえましょう。
 「ナイアガラ」「この愛に生きて」などライブでよく歌われたナンバーもチョイスされていますが、特筆すべきはやはりタイトル曲。作者のビーチ・ボーイズのブルース・ジョンストンは、ヒロリンだけでなく多くの歌謡曲歌手に愛された「歌の贈りもの」でも知られておりますが、このナンバーはミッキーマウス大好きっ子として知られたヒロリン自身のことのよう。
 79年の「恋人たち」がレッツゴーヤングだとしたら、このアルバムはサウンド・イン“S”という雰囲気。英語で歌ったナンバーも入っていますし、歌い方も含めショービズチックになったヒロリンの歌声が堪能できます。
 ただ、やっぱり抜群と呼ばれた歌唱力と成熟した若さでグイグイ押し出している感がするのも確かで、「その人は誰」などは後にレコーディングした抜きの歌唱と比べてしまうと…。例えるなら若くして頂点に上り詰めた美空ひばり円熟期のような、上手いがゆえの傲慢さみたいなものを感じてしまうのは気のせいでしょうか。
 
 ボーナストラックには、当初オリアルの予定が変則ベストになった81年の2枚組「EXCEL ONE 岩崎宏美のすべて」のみに収録されていたナンバー6曲(残り4曲は既発の「すみれ色の涙から… +5」に収録)を追加。
 クラシカルに重心を傾けすぎてボツになったという萩田光雄アレンジの「思秋期」は聴きものですぞ。
 
 続く「 I Won't Break Your Heart (+6)<タワーレコード限定>」は、84年4月発売。デビッド・フォスターら錚々たる一流ミュージシャンが参加したロサンジェルス録音盤です。90年代の定番コレクションから漏れたもあり、当初のオリジナルCDにはビックリするようなプレミア価格がついていましたので、初復刻時は待望度ナンバー1でしたよね。
 本場のAORサウンドにも引けを取らないボーカルは、さすが日本が誇る若手実力派シンガー、ヒロミ・イワサキ。デビュー時から声の艶そのものに黒っぽさのあったヒロリンですからね。今聴くとノスタルジックではありますが、あちらのモノホンのサウンドをバックにすると、余計に引き立つような気がします。
 ここではなんと、シカゴのビル・チャンプリンを相手に堂々としたデュエットも披露していますし、幾分優等生すぎるきらいはありますが、日本にだってこういう歌手がいるんですよ!と胸を張って言いたくなるようなアルバムです。
 ボートラは「20の恋/眠りの船」「未完の肖像/二時に泣かせて」「橋/逃亡者」という3枚のシングルを収録していますが、忘れてはならないのがデビュー10周年目突入を記念してデビュー曲「二重唱(デュエット)」と同じ阿久悠+筒美京平+萩田光雄トリオが手がけた「未完の肖像」。なんだか独立へのはなむけを思わせる歌詞に泣けますが、EVEのコーラスも相まってが、よりアダルトになったヒロミ・イン・ディスコの傑作です。
 なお、リミックス・ベスト「ダル・セーニョ」が単独で復刻されたため、2007年の紙ジャケ復刻時のボートラだった「そばに置いて」は未収録。よって、この作品は2019年リマスタリングとなっています。
 
 そして85年。太眉と裸一貫で心機一転出直し、カメリア・ダイヤモンドのCMソング「決心/夢狩人」で久々のスマッシュヒットを放ったヒロリン。事務所独立後初のオリアルとなったのが6月リリースの「 戯夜曼 (+9)<タワーレコード限定> 」です。
 三文字熟語でほぼほぼ統一したタイトルをはじめ、ぐっとアダルトになったシティポップスというムードで、オトナのいいオンナをイメージさせるナンバーがいっぱいですが、この復刻盤のポイントはボートラ。デビューから4枚の筒美シングル「二重唱/月見草」「ロマンス/私たち」「センチメンタル/そうなのよ」「ファンタジー/パピヨン」のオリジナル・カラオケが収録されております。
 
 85年はもう1枚、注目の新人作家・久保田利伸を起用した先行シングル「月光」をフィーチャーした「 cinema (+9)<タワーレコード限定> 」。タイトル通り、往年の名画や主題歌のタイトル、主人公の名前など、映画にちなんだキーワードを散りばめたコンセプチュアルなアルバムです。やはり、ソウルな黒っぽさ全開の「月光」が突出した出来ではないでしょうか。
 これもボートラ目当てに必携の1枚で、12インチシングル「25時の愛の歌」のほかはオリカラ。「未来/夏からのメッセージ「霧のめぐり逢い/感傷時代」というシングル両面から、「ドリーム」「想い出の樹の下で」「悲恋白書 」「熱帯魚」までのA面曲のオリカラが入っています。筒美シングルという意味では「スイート・スポット」「わたしの1095日」が漏れたのが残念な限りではありますが…。
 
 続いては86年7月の「 わがまま (+8)<タワーレコード限定> 」。山川啓介が詞を付けたNHK「小さな旅」テーマ曲、CMソングとしておなじみの「好きにならずにいられない」のアカペラバージョンを収録したアルバムで、一段と濃ゆくなったヒロリン流シティ歌謡ポップスが好きにならずにいられない…という感じですね。
 ボートラはシングルの「好きにならずにいられない/春乙女」のほか「思秋期」から「万華鏡」までのオリカラを収録。なお「泣きながら目覚めて」のシングルバージョンは今回のシリーズでは「10カラット・ダイヤモンド+7」にまとめられたため、ここには収録されず。よって、このアルバムは2019年リマスタリングとなっています。
 
 87年4月の「 よくばり (+10)<タワーレコード限定>」は、火曜サスペンス劇場の主題歌にして筒美作品の「夜のてのひら」、「最初の恋人達」という先行シングルを収録。
。メイクは濃いものの、沖中美樹の強がる笑顔を思い出してしまうジャケットに象徴されるように、女性作詞家でまとめた世界観が特徴のアルバムです。
 ボートラには、次のシングル「風の童話集/ラスト・クルーズ」と、「夜の手のひら」のB面「せつなさのバランス」、さらにシングルカセットのみに入っていた「せつなさのバランス~Lonely Long Dream」を収録。オリカラは「すみれ色の涙」から「橋」までとなっています。
 
 そしてラストは88年7月発売、最初の岩崎時代最後のオリアルとなった「 Me too (+7)<タワーレコード限定> 」。お久しぶりとなった濱田金吾作曲のシングル「聞こえてくるラプソディー/Interva」をフィーチャー。眉毛以外はナチュラルなジャケットのように、全編抜きの魅力で綴られたアルバムです。
 それはやはり、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の後ということも大きいのでしょうか。ひと頃のコテコテ歌唱法から脱し、肩の力を抜いたヒロリンのボーカルが、毒気を抜いたというか、憑きものが落ちたという感じで、素晴らしいのですね。
 中でも シネマパート2というようなバラード「さよなら夏のリサ」は出色。84年公開のフランス映画「さよなら夏のリセ」からでしょうが、85年に南野陽子「さよなら、夏のリセ」や河合その子「さよなら夏のリセ」といった楽曲が発表されていたことも関係したのか「リサ」と変えてしまったことでチープな印象がつきまといますが、どっこいハマキンさん渾身の大名曲となっています。
 ボートラは、独身最後のシングル「未成年/透きとおった時間」、結婚後、初めて益田宏美名義で出したシングル「夢見るように愛したい/A PEACE OF MIND」のほか、「決心」「夜の手のひら」「未成年」という後期代表曲のオリカラを収録。
 
 これにて紙ジャケの再発は完結となりますが、やはり今回の目玉は「戯夜曼」以降の5枚、それもボートラ。珠玉の名曲オリジナル・カラオケ全29曲の収録でしょう。
 まさにビクター純正のオリカラLP「あなたが唄う岩崎宏美ビッグ・ヒット!」「岩崎宏美カラオケ決定盤!」を超える充実度。ガイドメロディーが入っていない、正真正銘のオリカラなワケですしね。
 
 特にヒロリンの初期における筒美作品はディスコ歌謡の傑作群というばかりでなく、音の宝石箱か、サウンドの玉手箱かというほど凝った音づくりがなされておりますのでね。カラオケでは、すみずみまでこだわった職人芸が堪能できるでしょうし、30年以上何万回となく聴いたおなじみの曲でさえ新たな発見がきっとあることと思います。オリカラマニアだけでなく、筒美フリークも必携ですぞ!
 
 

(2019.2.8)

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