オススメ復刻盤「クライマックス ~BESTフォーク~」


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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#721

クライマックス ~BESTフォーク~

(2014.12.24発売、MHCL-2491~2、¥3,000+税)

クライマックス~BEST歌謡曲~(MHCL-2493~4)も同時発売!

名曲コンピのご長寿シリーズ、最新作!

 長らく続いている名曲ブームを背景に、ひと頃は乱発と言えるほど玉石混淆、多くのタイトルが発売されてきたコンピ盤。
 最盛期に比べるとセールスも振るわず、淘汰されてリリースされる数も少なくなっているようですが、このシリーズは別格でしょう。

 そう、毎度おなじみ、セルでもレンタルでも安定した人気を誇る「クライマックス」シリーズ。

 シリーズ開始からはや7年。よく知られた大ヒット曲や人気曲だけを集めたクライマックスは、オリコンのトップ10入りを果たしたタイトルも多く、累計売り上げはとっくに100万枚を突破と、名曲コンピとしては空前の大ヒットを記録してきました。
 CMスポットがオンエアされ、ショップでも平積みとなるなど、数字が落ち着いたとはいえ今もって名曲コンピの王者として君臨してるのは一般にもよく知られています。

 1970年代から2000年代までの名曲たちがいろんな切り口で集められてきましたが、2014年のしめくくりとして登場するのは70年代(一部60年代後半もあり)で、フォークを集めた「 クライマックス~BESTフォーク~ 」と、歌謡曲を集めた「 クライマックス~BEST歌謡曲~ 」の2タイトル。

 これは名曲ブームの中核をなすのが70年代フォークと昭和歌謡ということも大きいですが、背景には、ことし話題のドラマの主題歌としてリメイクされた2大ヒット曲の存在があります。
 そう、フジテレビ系リメイクドラマ「若者たち」の主題歌として森山直太朗がカバーした「 若者たち 」と、同じくフジテレビ系「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」の主題歌として一青窈がカバーした「 他人の関係 」です。

 企画の発端に、中高年にはおなじみの懐かしいナンバーがヤングには新鮮に受け止められてスマッシュヒットしたこと(「若者たち」はオリコン最高25位、「他人の関係」は55位)があるのは、各収録曲リストの1曲目を見るとすぐに分かると思います。
 いずれにしても、今の世にも十分受け入れられ、カバーするとヒットするであろうフォークと歌謡曲がぎゅっと詰まっているような印象を受けますよね。

 と、そんな2タイトル。手前ミソではありますが、特にオススメしたいのがフォーク編です。
 一口にフォークといっても、あの頃はプロテストソングのような思想系から、上品なカレッジフォークはもちろん、伝承歌を含む抒情歌まで、さらにはロックやニューミュージックも含めてフォークと総称されていたこともありましたので、幅が広かったんですよね。

 「ヤングフォーク」だの「ガッツ」だの楽譜付きの雑誌には、自作自演のシンガー・ソングライターだけでなく、フォーク風の歌謡ポップスやアイドルも載っていましたし、ギターコードが載っていた月刊「明星」の歌本を頼りに弾き語りしていた少年少女は多数いましたしね。

 そういう意味では今回の選曲も、GSとカレッジフォークの間に位置していたヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」を最古に実に幅広いものとなっていて、「若者たち」も66年のブロード・サイド・フォーによるオリジナルではなく、72年の森田健作によるカバーヒットを収録。台詞入りのビブラート唱法も泣かせてくれますが、70年代の青春の象徴は誰が何と言ってもモリケンですので、こちらの方がしっくりくるんじゃないかと思います。

 また、チェリッシュ「ひまわりの小径」やビリー・バンバン「さよならをするために」、ガロ「学生街の喫茶店」、本田路津子「耳をすましてごらん」など、フォークにカテゴライズされるのに職業作家さんの作品を歌っていたアーティストや、逆に布施明「シクラメンのかほり」や山口百恵「秋桜」などシンガー・ソングライターから楽曲提供を受けた歌謡曲畑の歌手が入っているのも、フォークと歌謡曲の融合黎明期らしい流れです。

 もちろん本物のフォークも入っていて、その筆頭が70年代フォークのシンボル・吉田拓郎。「旅の宿」「結婚しようよ」という自身のヒット曲に加え、たくろうファミリーの猫「雪」、かまやつひろしへの提供曲「我が良き友よ」と八面六臂の活躍。フォーライフレコードを興した好敵手の 井上陽水「Good,Good-Bye」も見逃せません。

 ファミリー的な視点では、グレープ「精霊流し」とクラフト「僕にまかせてください」の兄弟、かぐや姫「妹」とイルカ「なごり雪」の兄妹、赤い鳥「翼をください」と紙ふうせん「冬が来る前に」の本家と分家というように、芋づる式な続柄も多数です。

 さらに、フォークの登竜門だったポプコンからは、小坂明子「あなた」、N.S.P「夕暮れ時はさびしそう」、ふきのとう「白い冬」、小坂恭子「想い出まくら」、因幡晃「わかって下さい」がピックアップ。
 加えてフォーク界のアイドルデュオといった風情のベッツイ&クリス「白い色は恋人の色 」やシモンズ「恋人もいないのに」もしっかり押さえられています。

 フォークの舞台を貧乏学生のボロい四畳半アパートから、アンノン族の住むお洒落なマンションへと変えたユーミンの功績も大ですが、注目すべきは大ブレイクのきっかけとなったのが、ナウいナンバーではなく作家としてバンバンに提供した学生運動ノスタルジー「『いちご白書』をもう一度」だったこと。

 その感じは、最初からキャロル・キングと共演するなどアメリカンフォークの王道的存在だったのに、結局はシャンソン歌謡みたいなナンバーで成功した五輪真弓「さよならだけは言わないで」にも共通していますが、今回収録されたその2曲で、流行歌として成立しなければならなかったフォークのいろんな側面を垣間見ることもできるのではないかと思います。

 いずれにしても、一族郎党、世代を超えて集まる機会が多い年末年始。BGMにはこのコンピをオススメしますぞ!

(2014.11.28)

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