聖夜に…ソニー時代のバラード集＆90年代オリアル再発!
例の「 レコード・コレクターズ 2014年 11月号
」の「日本の女性アイドル・ソング・ベスト100 1980-1989」でも得票数、ランクイン楽曲数ともに最多を誇っていますし、80年代アイドルの女王であることに異論を唱える人はいないでしょう。もちろん過去の栄光に頼るのではなく、今でも第一線で活躍し続けている聖子。今年は家族事務所から独立し、自身のブランド・フローレスセイコも一新するという穏やかならぬニュースも飛び出しましたが、まったく影響を受けないのはさすがの一言。
タレントの価値を問われるCMでも、今シーズンは世界のトヨタに起用されたり、レギュラーの富士フイルム・アスタリフトに至っては松たか子と「赤いスイートピー」を歌って、沙也加のブレイクをも取り入れた“アナのママと雪の女王”とでもいうべきコラボを見せたり、相変わらず話題の中心にいる感じです。
本業の歌の方でも毎年ニューアルバムを発表し、コンサートツアーを満杯にする希有なアーティストとしての活動は緩まず、シングル「 I Love You!!~あなたの微笑みに~
」、アルバム「
Dream & Fantasy
」と来て、来月には夏コンのDVD「
~Pre 35th Anniversary~ Seiko Matsuda Concert Tour 2014 Dream & Fantasy(初回限定盤) [DVD]
」をリリース。さらには恒例のクリスマスディナーショーも控えていますし、まさに何があろうと不動の聖子という感じがします。来年はいよいよデビュー35周年のメモリアルイヤーに突入と、いろんな意味で期待を深めていましたら、旧譜でも古巣のソニーからうれしいニュースが届きました。
まずは、ホリデーシーズンにぴったり、Blu-spec CD2による2枚組バラード集「 Seiko Matsuda Best Ballad
」。最初は覆面歌手として歌った「SWEET MEMORIES」以来、昔からバラードに定評のある聖子ですし、ベスト盤の女王としてはバラードベストも以前に出てはいますが、今回はソニー時代のすべて、すなわち80年代から90年代（正確には80年から95年まで）、出戻った2000年代（2004年から2008年まで）の音源から選りすぐった31曲という、近年にしては珍しく幅の広いベストとなっています。
目を引くのはやっぱり「SWEET MEMORIES」や「Pearl-White Eve」といったナンバー１ヒットや「瑠璃色の地球」や「抱いて…」など聖子バラードの定番曲は言わずもがな、12曲も収録された80年代の名曲群。
オープニングがセカンドアルバム「North Wind」から「しなやかな夜」というチョイスに泣けますが、「風立ちぬ」から「December Morning」、「Pineapple」から「LOVE SONG」、「Candy」から「真冬の恋人たち」、「ユートピア」から「赤い靴のバレリーナ」、「Tinkerbell」から「Sleeping Beauty」、「Windy Shadow」から「Star」、「シトロン」から「林檎酒の日々」という流れは聖子ファンの中でも通好みの選曲と言えそう。
90年代は9曲ですが、聖子のセルフ期ということもあってのことでしょうか。レコード大賞最優秀歌唱賞（ポップス･ロック部門の最優秀ボーカル賞）受賞曲「きっと、また逢える… 」と「あなたのすべてになりたい」というドラマ主題歌＆挿入歌に、「もう一度、初めから」というシングル曲が中心ですが、セルフではないカップリング曲「Matins～朝の祈り～」が入っているのにも注目です。
また、ソニーから移籍した後に放ったメガヒット「あなたに逢いたくて」はソニー時代のセルフカバー音源でしっかりフォロー。
これを加えた10曲が2000年代で、「逢いたい」「永遠さえ感じた夜」「涙がただこぼれるだけ」「あの輝いた季節 」というシングル曲のほか、2005年の「Under the beautiful stars」から「戻れないあの日」、2006年の「bless you」から「Tears」、2007年の「Baby's breath」から「あなたのいない日々」「蒼い雨」、2008年の「My pure melody」 から「星空の下の君へ」という
というアルバム曲もバランスよくチョイスされています。
90年代は語彙も含め歌詞がシンプルになったのにもかかわらず持って回ったようにくどく思えたり、2000年代からは審美歯科的には格段に美しくなったのに唾液分泌が激減したように粘っこく聴こえたり、通して聴くと聖子の歌についての変遷が手に取るように分かりますが、ブックレットでビジュアル的な変化も併せて楽しめると味わいは深まりそう。
80年代半ばから90年代にかけて、嶋田ちあきさんによる目の覚めるようなメイクマジックに驚いていた日々が懐かしく思えますが、どうなろうが、聖子は聖子。なんだかんだ言っても唯一無二、下々のゴタクなど超越したスーパーアイドルなのですからね。
なお、今回はデジタル・リマスタリング音源で、90年代、2000年代は初となるブルスペ２という高音質に加え、初回限定でスリーブ付き仕様。グッズ的にとらえるファンの皆さんならやはり初回という感じでしょうね。
そしてもう一つというか、もう１シリーズも同時発売。
そう、80年代の名盤復刻（こちらで紹介）に続き、90年代のアルバムもBlu-spec CD2で登場することになりました。
ソニーのCBS買収に併せた全米デビュー作となった90年の英語盤「 seiko
」（オリコン2位）、聖子は作詞のみにつき完全セルフではない「
We Are Love
」（3位）、渡米中に聴いていた洋楽をカバーしたという「
Eternal
」（3位）、小倉良とタッグを組み作曲も手がけるヌーヴェル聖子として日本での再スタートを切った「
1992 Nouvelle Vague
」（8位）、セルフカバー中心のバラードアルバム「
Sweet Memories ’93
」（12位）、ドラマ主題歌「大切なあなた」で往年の聖子を取り戻した「
DIAMOND EXPRESSION
」（4位）、茶髪になり始めた聖子のクリスマスアルバム「
A Time for Love
」（21位）、マドンナ信仰は止まず80年代の激変ヘアを思い出すウイッグジャケットの「
Glorious Revolution
」（8位）、キラキラ聖子の「輝いた季節へ旅立とう」で再浮上した95年の「
It’s Style ’95
」（２位）という9タイトル。セルフ期突入ということで80年代に比べ評価が低い90年代ですが、10万円BOX以外は再発がなく、その多くが廃盤でしたし、いずれもヒットアルバムでしたんで、待っていた人は多そう。特に出るモノすべて買うというコアなファンは、80年代だけで同じモノを何枚もお買い上げなさってて、たまには違うタイトルを買いたいと思っているでしょうからね。
個人的にオススメしたいのは、やっぱり世界のSEIKOをめざした「seiko」、英語カバーが秀逸な「Eternal」でしょうか。
孤軍奮闘の中、世界におけるニッポンの象徴として頑張った聖子の努力の結晶ですし、CBSイチ押しの座をマライア・キャリーに取って代わられたことや、ジェフやアランのことをうっかり思い出してしまいそうですが、そういう裏話抜きに、ボーカリスト聖子の力量を堪能できますのでね。
時代のサウンドが顕著な「Seiko」はこれまで避けてきたのですが、時代が一周してニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックもノリよく聴けるようになった今、再びの愛聴盤になりそう…なんて思っています。
他のアルバムも、聖子のセルフ時代を検証する意味でも今聴くことに意義がありそうな気がしますね。聖夜発売ですから、90年代、どんなバッシングや逆境にも負けずひたすら前進を続けた聖子の姿に勇気づけられてきた人なら、自分から自分へのクリスマスプレゼントにしてもいいかもしれません。
（2014.10.27）
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