オススメ復刻盤「田中星児／ゴールデン☆ベスト」

　近年は人気コミック「GANTZ」の田中星人のモデルとして注目を集めたりしたようですが、我々世代にとってはやっぱり“NHKのうたのおにいさん”的なイメージがある田中星児さん。

　もう45年ぐらい経ちますけど、子どもの時に見た「ステージ101」や「おかあさんといっしょ」はとても印象的ですし、TBSの朝の情報番組「おはよう720」や、その後に続く「8時の空」など、爽やかな朝にふさわしい清廉な歌声は聴き返す機会がなくとも強く耳に残っています。

　ジャンルにかかわらず、何をどう歌っても星児節にしてしまうところが最大の魅力ではないかと思っておりますが、このたび初のSHM-CDとなる単独ベスト「 ゴールデン☆ベスト 田中星児 」が登場します。

　先日こちらでも触れましたが、コレはビクターのG☆B・SHM-CD化シリーズにラインアップされたもの。
　このシリーズ、4月から6月にかけ27タイトルが発売されるそうですが、中心となるのは既発のG☆Bを単にSHM-CD化したタイトル。しかしながら、往年の「BEST ONE」や「COLEZO！」シリーズを焼き直したような1枚ものや、レア曲を含む新編成のものも含まれており、このベストもそんな1枚なのです。

　星児おにいさんのCDとしては、現行品ではさまざまなレパートリーをまとめた2枚組の「 田中星児＜COLEZO!TWIN＞田中星児 」がありますが、今回はこのエッセンスを凝縮して再構築し、新たな選曲を加えたという印象。２枚組では２枚目に追いやられていた流行歌というジャンルの歌を、前面に押し出した感じの構成となっています。

　ポピュラーミュージックはもとより、童謡や愛唱歌といったファミリーソング、フォーク＆ニューミュージックのカバーや自作曲を含むオリジナル曲まで、全22曲を収録予定とのことですが、注目したいのはテレビで人気者になったおにいさんらしく、テレビ番組から生まれたナンバーが目白押しだということ。

　アナログシングルの時もビクターの流行歌品番・SVより学芸品番・KVが多かったのでしょうがないのでしょうが、これまで田中星児のCDというと、小鳩くるみおねえさんと歌っていた童謡をはじめ、ファミリーソングばかりがクローズアップされてきました。
　しかし今回は「小さい秋みつけた」「秋の子」「大きな古時計」「ぼくのこもりうた」といった曲も入っているものの、流行歌色が前に出た珍しい感じのリイシューとなっているんです。

　まずはNHK育ちのアーティストですので、ヤング101時代の71年に放った阿久悠＋都倉俊一作品のソロデビュー曲「僕の故郷へおいで」をはじめ、73年にミッシェル・ポルナレフをカバーしたシングル「愛の願い Love Me Please Love Me」、アルバート・ハモンドの「落葉のコンチェルト」といった「ステージ101」路線のナンバーに、NHK「あなたのメロディー」で優秀作品に選ばれ布施明が歌った自作曲「その日まで」や、77年にNHK「歌はともだち」の司会に就いたタイミングでシングル発売した名曲「切手のないおくりもの」などなど、NHKゆかりの歌が勢ぞろい。

　一方、民放では「おはよう720」「8時の空」が有名ですが、その２大番組を象徴するシングルが76年の「オー・マリヤーナ／ビューティフル・サンデー」。片や自らが日本に紹介し「8時の空で」歌った旧ユーゴスラビアの愛唱歌。片や「おはよう720」キャラバンコーナーのテーマ曲となったダニエル・ブーンのナンバーを出演者としてリリースした競作曲で、このシングルはオリコン4位をマークする自己最大のヒットを記録。代表曲として認知されていますよね。
　また「8時の空」ファンにとっては、水越けいことのデュエットでシングルリリースした加藤和彦作品「空よ雲よ小さな風よ」の収録も大きなニュースでしょう。

　ほかにもトワ・エ・モワで知られる「誰もいない海」や、やまがたすみこ作品「とどけ僕の愛」、フォーク＆ファミリーソングを歌ったアルバム「さらば青春」からユーミンの「卒業写真」、もとまろの「サルビアの花」、赤い鳥の「竹田の子守唄」といったカバーがチョイスされていますので、これまで童謡メインだと買いにくかった層にもアピールできそうな内容といえますね。

　ただ、企画盤といえどもシングルリリースが多かった人なので、このベストが売れて、シングル曲も網羅した続編が出てほしいもの。
　ちょっと思い出しただけでも、名作絵本のレコード化「きかんしゃやえもん」、「山口さんちのツトム君」が大ヒットした当時のみなみらんぼう作品「ゆるしてママ」、王選手の756号記念曲「ホームラン王」、屈斜路湖のクッシーブームの時に出た「ネッシーとクッシー」、NHKみんなのうた「悲しきマングース」など、結構知られたナンバーがありますし、何より「おはよう700」のキャラバンテーマ曲となったボビー・ヴィントン「パロマ・ブランカ（幸せの白い鳩）」やオリビア・ニュートン＝ジョン「カントリー・ロード ～故郷へ帰りたい」、ダニエル・ジェラール「バタフライ」といったカバーシングルも入ったベスト盤が出てほしいと思います。

　もっと言えば、北原健二と山本譲二の間で歌った「ふるさとのはなしをしよう」や、ポプコン入賞曲としても知られるC. Wニコルさんのナンバーを競作した「リンゴの木にかくれんぼ」などもぜひ。
　それまではこのベストと、前述の既発2枚組などを聴きながら待つことにしましょう。

　ちなみに「 田中星児＜COLEZO!TWIN＞田中星児 」の2枚目では、ヤング101の定番オリジナル「涙をこえて」をはじめ、カーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」やエルトン・ジョン「僕の歌は君の歌」、アート・ガーファンクルの「青春の旅路」、CCRの「コットン・フィールズ」なども聴けますし、76年の名（迷？）アルバム「オー・マリヤーナ」収録の星児イン・ディスコ「ザッツ・ザ・ウェイ」＆「ビバ・アメリカ」は「 R&Bディスコ歌謡コレクション ビクター編 恋のハッスル・ジェット 」、自作の初期シングル「オートバイ野郎」は「 ソフトロック・ドライヴィン ビクター編 ~空と海とわたし 」でCD化されています。
　また、101時代のソロやメインボーカル曲はベスト「 GOLDEN☆BEST/ステージ101 ヤング青春の日々 」やBOX「 ヤング101　ギフト・ボックス 」に入っていますよ。

（2015.4.3）