シリーズ最新作は、定番から隠れ名曲までのバラード集!
2008年、名曲カバーブームを背景に「歌姫~オリジナル女性ヴォーカリスト~」(こちらで紹介)から始まった女性ボーカリストのスタンダード集「歌姫」シリーズ。
よくカバーされる名曲のオリジナルという発想がコンセプトだったので、初期は「歌姫~センチメンタル女性ヴォーカリスト~」(こちらで紹介)や「歌姫~アンフォゲッタブル女性ヴォーカリスト~」(こちらで紹介)という風に、名曲カバーのオリジナル曲集の続編がコンスタントに発売されていきました。
やがて切り口や年代、ジャンルを変えたり、「歌姫~BEST女性ヴォーカリスト~」(こちらで紹介)や「歌姫~SUPER BEST女性ヴォーカリスト~」(こちらで紹介)、「歌姫クロニクル~1968-1984~」(こちらで紹介)といった集大成ベストや、隠れた名曲を集めたスピンオフが企画されたり、これまでに数多のタイトルが登場し、それぞれ好セールスを記録。
セルでもレンタルでも、ショップの棚に定番タイトルとしてずらりと並んでいるのを目にした人は多いと思います。
個人的にはスタート時からライナーの解説をお手伝いさせていただいたこともあり、思い入れも深く、このコーナーでも折に触れてプッシュしてまいりましたけど、最初はシリーズ化の予定はなかったようだし、ロングセラーのご長寿ヒットシリーズとしてここまで定着したことはホントにウレシイ限りです。
ラインアップは今月新たに加わる2タイトルを入れて、なんと計19作になるのだとか!
それだけ出ているとなると、おなじみを通り越して重複する曲があったりしますが、いろんなチャネルでそれだけ需要があるということの証しですから、ますます縮小していくCD市場において、とても喜ばしいことではないかと思ったりしています。
パッケージ派としてはやっぱりCDが存続してほしいし、それにはセールスが伴うことが必須ですからね。
ということで、手前ミソではありますが、歌姫シリーズのさらなるロングセラーを願って、第19弾「 歌姫~バラード・ベスト~ 」をご紹介させていただきましょう。
今回の内容は、70年代から90年代までの30年間から、世代を越えて支持されるバラードの名曲32曲を幅広く厳選。
松田聖子(「瑠璃色の地球」)や岩崎宏美(「聖母たちのララバイ」)といった実力派アイドルから、五輪真弓(「恋人よ」)らのシンガー・ソングライター、欧陽菲菲(「ラヴ・イズ・オーヴァー」)、しばたはつみ(「マイ・ラグジュアリー・ナイト」)などのアダルトな歌謡曲系まで、誰もが知っている定番ソングを中心に、中村晃子の大ヒット「恋の綱わたり」といった今となっては知る人ぞ知るマニアックチューンをちりばめるという、バラエティー豊かな選曲となっています。
ます目を引くのは、ちょっとタイムリーなナンバーで、いま話題を呼んでいる企画アルバム「 なかにし礼と12人の女優たち 」で桃井かおりが歌っているアン・ルイス「グッド・バイ・マイ・ラブ」。徳永英明がカバーシングルを発表した山口百恵「さよならの向う側」、作家に訴えられた沢田知可子「会いたい」など、いろんな意味で聴き逃せない感じです。
あと、ポプコン系が目立つのも今回の特徴で、大友裕子「傷心」、柴田まゆみ「白いページの中に」というシブイ選曲に注目です。
ちなみに、ポプコン出身者で最も成功した中島みゆきも、研ナオコ「かもめはかもめ」、増田けい子「すずめ」という提供曲に加え、薬師丸ひろ子の「時代」のカバーという3曲も収録。
その分、ユーミンソングが入っていませんが、マイカファミリーの障子久美「あの頃のように」で対抗しているような気もしますね。
また、聖子が入っているのに明菜はどうしてないの?!という声も聞こえてきそうですが、そこは「難破船」のオリジナル、加藤登紀子バージョンでしっかり補完という感じでしょうか。
芸能界相関図に詳しい上級者の皆さんの中は「コレが入っててアレが入っていないのは大人の事情というヤツかしらん…」などというブラックな楽しみ方をされるケースもあるらしいのですけど、それも確かにコンピ盤の魅力の一つかもしれませんね。
個人的には、王道系のコンピなのに、お決まりの代表曲ではない選曲を支持してしまう傾向にありますが、今回はその側面もあり、平松愛理は「戻れない道」、岡村孝子は「Believe」、辛島美登里は「あなたは知らない」と、ドラマ主題歌であるもののさほど知名度は高くないナンバーが多数。
今井美樹の場合も、アーティスト化した後の一連の大ヒットではなく、筒美京平作品にして初期のスマッシュヒットである「野性の風」となっていてポイント高し!という感じです。
極めつけなのが、ラストに収録された太田裕美が歌う伊勢正三作品「君と歩いた青春」。
近年はなごみーずとして太田さんと一緒に活動する正やんが、風時代に作ったナンバーで、太田さんは風のバージョンが出た76年の同時期にレコーディング。
アルバム(こちらで紹介した「12ページの詩集」)の中の1曲だったワケなのですが、ずっとコンサートで歌われ続け、81年にファンのリクエストに応える形でシングル化されたナンバーなのです。
結局は起死回生のヒットとはいかず休業に入りましたので、第1期太田裕美のフィナーレを飾ったという意味でも記念碑的な名曲なのですね。
よって太田裕美ファンとしてはこの曲でしめくくられているだけで感動が倍増するというワケなのです。
それはさておき、絶妙な選曲で構成された女性ボーカルのバラード集には絶対的な癒やし効果がありますので、気が張る新年度や、体調を崩しがちな季節の変わり目のBGMとしても、もってこいと言えそう。
このシリーズは一般の方へのプレゼントにもオススメですので、今回のバラード・ベストも含め、ぜひショップの店頭であれこれ見比べて選んでみては。
なお、ドライブにぴったりなナンバーを集めたシリーズ第18弾「 歌姫~ドライヴィン・ベスト~ 」も同時発売されますので、併せてどうぞ。
(2015.4.1)