スタ誕出身、フォーライフ所属の異色アイドル!
このところリリースが相次ぎ、コアなアイドルフリークや歌謡曲マニアを狂喜乱舞させている高護さんの「Hotwax presents 歌謡曲 名曲名盤ガイド1980's」(こちらで紹介)関連のシリーズ。
今年に入って、堤大二郎(こちらで紹介)や工藤夕貴、杉浦幸(こちらで紹介)、狩人(こちらで紹介)や芦川よしみとシングルコレクションが続いていましたが、今度はオリジナルアルバムも登場です。
それも個人的に切望していた松尾久美子、唯一のアルバムに、未収録のシングル曲を追加したコンプリート・コレクション「 メモワール +5 」!
松尾久美子といえば、ご存じ「スター誕生!」出身。すらりとした長身にショートカットで、ぶりっこ系ではなくボーイッシュな魅力をたたえたモデル系美少女。15才とは思えない大人っぽく、クールな感じもニュータイプのアイドルっぽかったんですよね。
しかもレコード会社はフォーライフと、ルックス重視のアイドルというよりも音楽性で勝負するアーティストの雰囲気が漂い、杏里から今井美樹へと連なるフォーライフ的アイドルの系譜に入るイメージだったのですね。スタ誕的に言えば、金井夕子の路線といえばいいでしょうか。
その証拠に名曲と誉れ高いデビューシングル「メモワール/マイナスLOVE」は松本隆+吉田拓郎というビッグネームが手がけ、ジャケットはアイドルにあるまじきモノクロ。まさに大物感たっぷりに登場したのでありました。
ただ、83年というデビューの年が悪かった…。花の82年組の面々が2年目にブレイクを迎えてしまったせいで、鳴り物入りも大器もこぞってコケてしまいましたが、彼女もそんな1人だったのですね。結局シングル4枚とアルバム1枚を出して歌手業はフェイドアウト
また、長身でボーイッシュという点が、ホリプロが大プッシュしたスカウトキャラバン優勝者の大沢逸美と被ってしまったのも敗因だったような気がします。
そんな状況だったので、CD化についてもデビュー曲ほかがコンピ盤に収録されただけだったのですが、2012年にはシングル4枚すべてが「 メモワール (MEG-CD) 」「 やせっぽち (MEG-CD) 」「 かすみ草 (MEG-CD) 」「 東京メルヘン (MEG-CD) 」としてMEG-CD化。そして今回めでたくファーストアルバムが初CD化となるワケです。
個人的には彼女と同い年だったので親近感が強かったこともありますが、何より曲とボーカルが良かったので応援していたので、ホントにウレシイ。
ただ、結局はデビュー曲を超えるナンバーが出せず、デビューの時点がピークという感じでしたし、ロックっぽい第2弾、フォークっぽい第3弾と迷走気味に哀愁化が進むうち、当初のシティポップな路線がどんどん薄まっていったのが残念でした。カルピスソーダのCMみたいな弾けたナンバーがもっとあったらよかったのかもしれません。
アルバムにおいても瀬尾一三サウンドプロデュースで統一感はあるものの、路線が定まってない印象があり、正直名盤とは言いがたかったりして…。
でも、さすがはフォーライフで、拓郎作品を4曲収録。シングル「メモワール/マイナスLOVE」のほか松本さんとのコンビで「哀しい願い」、岩里祐穂さんとのコンビで「パステルビーチ」が入っていますので、拓郎コレクターという方にとっては見逃せませんよね。
ちなみに松本+拓郎作品はもう1曲、木之内みどりのカバーにしてラストシングルとなった「東京メルヘン」がありますが、今回はそのB面「Just Friends」や、本人のイメージを打ち出した第2弾シングル「やせっぽち」、AB面それぞれを実川俊晴さんとNSPの天野滋さんが書いた第3弾シングル「かすみ草/思春期エナジー」とともに追加収録されます。
ということで、アイドルコレクターの方にとってはコンプリートコレクションになっている点も大きな魅力ではないかと思います。
なお、フォーライフで杏里と今井美樹の間に位置する女性アーティストといえば、松尾久美子の後にもう1人いますが、それは宝田明&児島明子夫妻の愛娘・児島未散。
デビュー曲「セプテンバー物語(ストーリー)」が有名ですが、この曲を含むデビューアルバムの復刻盤「 Best Friend 」も同時発売されるとのこと。CDとしては4回目ぐらいのリリースだと思いますが、全編松本隆+林哲司作品のリゾート&キャンパスポップで構成された名盤ですので、未聴の方はぜひこの機会にどうぞ。
また、大映ドラマ「乳姉妹」で渡辺桂子の妹・耐子役を好演した80年代アイドル森恵(「ダウントン・アビー」のメアリーに似てません?)の復刻「 少女 +1 」、なかやまて由希の全曲筒美京平作品にして待望の初CD化「 オクトパシー +2 」も同時発売だそうです。
(2015.4.8)