タワレコ復刻続編は、お兄さんとのコラボ5作の初CD化!
71年に「博多みれん」でデビューした野口五郎さんも、来年で45年目に突入。
第一線のボーカリストとしてはもちろん、ギター小僧・GOROとしてもご健在で、先ごろもギタインスト集「 Playin’It All-My Fingers Sing J-Female Melodies- 」をリリース。今回はまんまフュージョンではなく、百恵ちゃんや聖子、明菜ら日本の女性アーティストの名曲を取り上げたとあって各方面で話題を呼んでいるようですが、ご存じの通り旧譜の再評価も進んでおります。
演歌デビューかつアイドル時代にも演歌アルバムを出しているくらいですから、歌唱法も含めドメスティックな歌謡曲のイメージが強いゴローですが、今夏にはかのLight Mellowシリーズのラインアップ(こちらで紹介)にも加わったり、今や歌謡曲ファンではなく、フュージョンやAOR、ソフトロックなどの愛好者にうウケているといいますから、面目躍如という感じがしますよね。
むろんその評価は、アメリカ四部作をはじめとするタワレコ良盤発掘隊・Tower To The Peopleでの復刻(こちらとこちらとこちらとこちらで紹介)がきっかけですが、また新たな5タイトル「 ときにはラリー・カールトンのように GORO & HIROSHI II 」「 飛翔 移りゆく季節の中で GORO & HIROSHI III 」「 樹海 BALLADE 」「 PARADE 」「 琥珀 +3 」が初CD化されることになりました。
今回スポットが当たったのは、ゴローの実のお兄さんであり、名プロデューサーであり、名作曲家でもある佐藤寛さんとのコラボです。
思えば、70年代を席巻した新御三家は、ひと足先にデビューし人気が先行していたゴローを中心にその地位を確立しましたが、3人の中でオリコン1位を獲るのが一番遅かったのはゴローだったのですね。
ヒデキの「ちぎれた愛」に遅れること1年2カ月、ひろみの「よろしく哀愁」に遅れること1カ月。74年の暮れにNo.1を記録したのが筒美京平作品「甘い生活」で、絶頂を迎えたのが続くNo.1ヒット「私鉄沿線」でした。今でもゴローの代表作として真っ先に挙がるナンバーですが、これを手がけたのが他ならぬお兄さんの佐藤寛さんだったワケです(ちなみに「甘い生活」の前のシングル「愛ふたたび」もお兄さんですし、ゴローの初期から作曲家として関わっています)。
今回メインとなる兄弟アルバムシリーズは、この「私鉄沿線」のヒットを受けて始まったものと言えますが、第1弾は76年3月リリースのデビュー5周年記念アルバム「GORO &HIROSHI 通りすぎたものたち」に端を発します。
ただし、今回はどうも前述の「Light Mellow」に収録されたメロウな感じのアルバムがメインになっているような感じで、第2弾からの発売となっております。
型番ではなく時系列で紹介しますと、まずはその兄弟アルバム第2弾、76年12月発売の「 ときにはラリー・カールトンのように GORO & HIROSHI II 」。ギター小僧・ゴローらしく、かのラリー・カールトンを冠したタイトルからしてただ者ではない感じですが、ゴロー作曲の3曲以外は、アレンジも含めすべてお兄さんです。
タイトル曲をはじめインパクトのある詞は「針葉樹」を書いた麻生香太郎さんによるものが多くを占めますが、ゴローの歌唱力に見合うという意味では地味ではありますが、元六文銭の及川恒平さんの手腕が光っているように思います。
続く第3弾は、ジャケットもイカす78年3月の「 飛翔 移りゆく季節の中で GORO & HIROSHI III 」。ここではゴロー2曲、お兄さん8曲という構成。作詞はこの年のゴローの代表曲「愛よ甦れ」を書いた藤公之介さん。
ゴローの場合、この時期のアルバムはシングル曲を含まないまったくのコンセプトアルバムが多いのですが、シングルで起用した作詞家にアルバムも任せるというパターンが多く、シングル曲の世界観を継続するというか、ファンが違和感なく受け入れられるよう考慮されていたように思います。
80年2月発売の「 樹海 BALLADE 」は完全な兄弟アルバムではありませんが、お兄さんが6曲と大半を作曲しているので今回ピックアップされたのでしょう。残りはゴローの音楽に欠かせなかった東海林修先生が書かれていますので、ゴローらしさ満載。凝ったアートワークも含め、今回イチオシたいところです。
“ニュー・メジャーを指向したオリジナル・アルバム”という帯コピー通り、スケールの大きなバラードアルバムですので詞が大事ですが、それはこの年のお兄さん作曲シングル「愛の証明」を手がけたシビアななかにし礼さんと、続く「コーラス・ライン」の麻生さんが手分けして、どっぷり濃ゆい感じを演出しています。
そして82年6月発売の「 PARADE 」。ジャケットのケーキにもビックリしますが、作曲はゴローと山中涼平さんで、アレ?お兄さんは?と思ってしまいます、しかし、この山中涼平こそお兄さんのペンネーム。
ちなみに山中涼平名義は80年のシングル「愁雷」からだったようですが、このアルバムではゴロー2曲以外はすべてお兄さんの作曲で、アレンジもお兄さんという完全兄弟作になっています。
最後は84年7月発売の「 琥珀 +3 」。小椋佳さんが全曲の作詞&ほとんどの作曲と構成を手がけ話題を呼んだアルバムですが、お兄さんは編曲で参加しているんですよね。
このアルバムで忘れてはならないのが、筒美先生が作曲した先行シングル「一人が好きですか/恋の薫り時」の収録。「恋の薫り時」はアルバムバージョンですが、今回のCD化にあたってシングルバージョンも追加収録。さらにアレンジを変えてリカットされた「花遊戯」のシングルバージョンと、そのカップリング「ジャズ」もボーナストラックとして入っています。
という今回のタワレコ復刻。やっぱお兄さんの作るメロディーって合っていますよね。
個人的に、お兄さん作曲のナンバーでのマイベストは79年のシングル「青春の一冊」だったりしますが、紅白でも歌われているのに影が薄いようで残念。
今改めて聴くと、かなりオーバーに思われるかもしれませんが、初めて聴いた小6のとき、この歌の世界に感動して鳥肌が立ったものでした。私小説っぽいんだけど、何だか一曲の中に大きなドラマが展開しているようで、ゴローの表現をとても立体的に感じたのです。手軽なベスト盤にも入っていないので、ぜひシングルコンプ盤の「FACE-GORO A SIDE STORY-」(こちらで紹介)でお聴きいただければと思います。
なお。毎度申しておりますが、次は筒美系アルバムで未CD化となっている72年のセブンティーン歌詞募集オリジナル・アルバム「青春の旅路 新しい汽車」(お兄さん作曲のナンバーも入ってます)の復刻に期待しております。
(2014.12.12)