OMFでついに商品化! 35周年で悲願のBOX登場!
ことし35周年のアニバーサリーイヤーを迎えるのは昭和53年、すなわち1978年デビューの皆さま。年度同期でいえば真っ先に周年を迎えた渡辺真知子さんをはじめ、石野真子ちゃん、さとう宗幸さん、石川ひとみさんらビッグネームがずらり。
さらに、新人賞レースには参加しませんでしたが、原田真二クン、世良公則&ツイスト、サザンオールスターズら錚々たるロック系アーティストも顔をそろえます。
と、指折り数えて思い出してると、愕然。あまりにも今も現役で活躍する人たちが多いもので、大切な人をうっかり忘れてしまうところでした。それは渋谷哲平クン? 金井夕子さん? いえいえ、中原理恵さんです。
と、つい後回しになってしまうのは、理恵ちゃんの場合、復刻が思うように進んでいなかったことが大きいのかも…。なんたって前述した同期の面々は、さとう宗幸さん以外、なんと哲平クンも夕子さんも既に全アルバムが復刻済みなのですから!
悲しいかな、理恵ちゃんはベスト盤の数字が伸びないせいか、長年、市販の復刻盤は見込めずオーダーメイドファクトリー扱い。しかもそこでも思うほどの成果は得られず、ファンの嘆願、陳情もむなしく復刻はストップ。今春のブルスペ2の名盤復刻のラインアップにも入らず…という現状だったのです。
この状況にファンとしてはとっても残念な気持ちでいましたが、このたびオーダーメイドファクトリーのスペシャル企画商品、しかもなんと悲願のBOX「中原理恵 PREMIUM BOX 」という形で候補に挙がりました!
と、ぬか喜びする前に振り返っておきたいのが、理恵ちゃんのCD復刻のあゆみ。
現行品の「 GOLDEN☆BEST 中原理恵 Singles 」をはじめとするベスト盤以外では、まず91年にセカンドの「KILLING ME」がCD選書で復刻。そして2007年にデビューアルバムの「TOUCH ME」とサードの「夢つれづれ」、2010年に2枚組の企画盤「GOLDEN☆BEST limited 中原理恵 筒美京平を歌う 」がそれぞれオーダーメイドでリリースされてきました。
しかしですね、頼もしいフリークの大量票が期待できる筒美作品は既にすべてCD化済みですし、達郎&美奈子といったファンにコレクターの多い作家陣によるファーストですら何年もかかりましたから、今回果たしてちゃんと実現するかがとても心配。ここはひとつ、一人でも多くの皆さんのご協力をお願できればと思います。
さて肝心のBOXですが、構成は、理恵ちゃんがCBS・ソニーに残したオリジナルアルバム(うち1枚はハーフベスト)9枚と、アルバム未収録のシングル曲を集めたスペシャルディスク1枚という計10枚組。
77年のプレデビューから85年まで、シンガー・中原理恵のすべてが詰まったものとなりますが、せっかくですので実現への祈りにかえて、簡単にご紹介させていただきましょう。
まずは、アルバムデビューを飾った78年2月の「TOUCH ME」。
デビュー前から北海道はススキノのディスコなんかで、翔んでるギャルとしてブイブイいわせてたという理恵ちゃん。入念な準備のもと、楽曲制作を手がけたのは太田裕美さんで大成功を収めたCBS・ソニーの白川隆三プロデューサーでした。
コンセプトアルバムを得意とする白川さんですから、その手腕は理恵ちゃんでも炸裂。本人を含む女流作詩家でまとめた都会のいい女的世界観を、筒美先生、達郎さん、鈴木茂さんら豪華絢爛な布陣が作曲。坂本龍一さんや高橋幸宏さんも参加した豪華なバッキングで、和製AORというかクロスオーバーというか、ため息が出るほどお洒落な世界を繰り広げています。
続く78年12月リリースのセカンドはディスコティークでゴージャスな「KILLING ME」。
A面は前作の流れを引き継いだイメージで、本人と吉田美奈子、山下達郎、清水靖晃という各氏が手がけ、B面はシングル曲を展開させた松本隆+筒美京平コンビが担当。それぞれの世界観とサウンドのコンセプトを分けた丁寧な作りに感服しますが、やはりB面に収録されたデビューシングルにして最大のヒットとなった「東京ららばい」、自身も出演したサントリー・デリカワインCMソングの第2弾「ディスコ・レディー」、そして壮大なスケールの「マギーへの手紙」という3曲が圧巻。
タイミング的にも新人賞レースで好成績を収め、紅白への出場も決定という乗りに乗った時期であり、アルバムチャートでは25位のスマッシュヒットを記録しました。
それにしてもポマードこってり(ホントはDEPのはず)のヘアスタイルがバッチリ決まったジャケットも素敵ですよね。そういえば、理恵ちゃんのマネージャーって髪型から服装までソックリだったことを今思い出しました…。
なお、このアルバムからはビートルズへのオマージュといえる「抱きしめたい」が一部歌詞を変えて2年後にシングルカットされています。
そして79年8月、日本テレビ音楽祭金の鳩賞ノミネート曲にもなった同時発売のシングル「Show Boat/聖三角形」をベースに、松本隆さんがプロデュースしたサードアルバム「夢つれづれ」。筒美先生はもとより、全曲アレンジの矢野誠さんの手腕もビシバシ感じられる傑作です。
松本さんが筒美先生と行った南米旅行のインパクトが色濃く反映されているそうですが、全曲を松本さんが作詩。太田さんから離れたこともあってか、渾身といいますか、心身ともに理恵ちゃんにのめり込んだ感のある詩が、シチュエーションやレトリックなフレーズも含めとにかくスゴイ。太田さんに書いたプラトニックな詩に対して、理恵ちゃんではエロティックを追求したとのことですが、そのへんは前年に発表された太田さんへの渾身作「エレガンス」の詩と比べてみると分かるかも。
もちろん、ゾクゾクする理恵ちゃんの歌唱表現もたまりません。デビュー当時は、同時期に筒美作品でブレイクした庄野真代さんと、いい女の要素も含めよく比較された理恵ちゃんですが、表現力という部分では全然比べものにならないのではと思っています。
次は79年12月、ジャケットの美しさにドッキリする「VIVID」。
髪がどんど伸びていくのに伴って、それまでのハードなクールビューティーから変身。“ファッショナブルからハートフルに”をキャッチフレーズに、先行シングル「寒い国から来た女/やさしさの証明」のような、内面的な優しさを出す方向へシフトを決めた理恵ちゃん。このアルバムでは、流行のシティポップスを展開します。
見逃せないのがA面を任せた林哲司さん。彼にとってこの時期は「September」「真夜中のドア~Stay With Me」という2大名曲を放った頃ですから、聴き応えバツグンです。
ただ筒美先生の書き下ろしは途絶え、曲数も「SHOW BOAT」を含み全9曲というボリュームが今となっては物足りないかも。でも、当時はコレが洋楽っぽくてお洒落だったんですよね。
と、ここまでが70年代のアルバム。80年代はどんなメディアでも女性の時代と叫ばれていましたが、それは70年代的なイイ女とは違った新しい女性像でした。そういうのもあったのでしょう。女優としての活動も目立つようになると、万人受けするエレガントな雰囲気を醸すようになった理恵ちゃん。
歌の方でもヒットという意味では苦戦が続き、デビュー以来続いた松本+筒美作品も終焉を迎えます。シングルとしては、イメージソングだったはずなのに、ブイブイ言わせてた女性が天中殺に入り青春を回顧する内容が哀しい「懐かしのジョージ・タウン」に続き、セカンドアルバムから「抱きしめたい」を新録してシングルカットしますが、それと同時発売になったアルバムが80年7月の「HEART OF GOLD」です。
かろうじて松本さんの新曲もありますが、鈴木茂さんとのコンビとなり、他は作詞家に転向した神田広美さんらに委ねられます。
作曲の方も一新し、作家としては岩崎良美でヒットを飛ばしていたショーグンの芳野藤丸さんや、スクエアから安藤まさひろさん、後に久保田早紀さんの夫君となる久米大作さんらが参加。カッコよくお洒落ではあるものの、当時の売れ線とは違っていましたっけ。
そして、歌手というよりはタレントとして、コミカルな一面ものぞかせるようになり始めた頃、81年1月に出た「夢合わせ」。
実はこれ、収録曲を数合わせしたようなハーフベスト盤で、同時発売のシングル「シェイク シェイク…」と、当初はそのA面に予定されていた筒美作品「くれない小唄」、「ワイルドハニー」「Spark More 」というA面4曲以外は、過去3枚のアルバムからの再収録なのでした。
普通ならここでフェイドアウトするところですが、さすが田辺エージェンシーの所属アーティスト。飛ぶ鳥を落とす「欽ドン!」で、良い妻・悪い妻・普通の妻の三役を演じ分け、コメディエンヌとして再注目を浴びるのです。
その勢いは歌の方にも飛び火。ビッグバンド(ダン池田とニューブリード!)を起用した「横浜ブギウギ娘」を経て、松本さんがカムバックした「死ぬほど逢いたい」をスマッシュヒットさせたほか、続く「愛してクレイジー」では新しい活路となる軽快なコミカル路線を開拓していくのです。
翌82年には、この3枚のシングルを含むニューアルバム「インスピレーション」 を発表。もうアルバムの発表はないかと思っていたところに、1年3カ月ぶりのリリースでおみごとに返り咲いたのでした。
シングルに予定されていたというカンツォーネ歌謡「想い出ランデブー」や、「涙のカクテル」といった筒美作品もありますが、注目すべきは「プリティー・ボーイ……大・丈・夫」「ナンバー・ワン」でのユキヒロさんとの再会でしょう。
お洒落の達人というか、ハンパないセンスの持ち主である2人の相性は抜群で、ユキヒロさんは84年の「LADY麗(REI)[RIE]」のA面をプロデュース。糸井重里、秋山道男、売野雅勇というコピーライター系作詞家によって、中原理恵という旬の素材が料理される様子、そして理恵ちゃん自身が演じる様子がマニアックに追求されています。このへんの玄人ウケも時代が早すぎたというべきでしょうかねえ。
一方B面も、田口俊、杉真理、玉置浩二ら新進組を中心に、理恵ちゃんの個性に触発されたであろう個性的な作品群が並んでいます。
後期の理恵ちゃんは、CBS・ソニーサイドではシブがき隊をやっていた加藤哲夫プロデューサーや藤岡孝章ディレクターが担当なさっていたようですが、やっぱりマニアックな印象は否めなくて、一般にも受け入れられるタレント性とは別の方向になってしまったのが、先輩の研ナオコ的展開に至らなかった理由のような気がします。
とはいえ理恵ちゃんってセンスがあってカッコよすぎるのと、器用だからコメディーもできたというだけで、決してナオコ的展開で進むべきではなかったような気がしますから、こういうラインがイチバンだったのでしょうね。
結局ラストアルバムとなった85年9月の「UN ART DE VIVRE」は、ムーンライダーズのかしぶち哲郎さんがプロデュース。
ケーイチさんを除くムーンライダーズファミリーが全面バックアップ、もちろんユキヒロさんも参加した傑作だと思いますが、タレントとしての人気がセールスにつながらなかったのが、歌から離れることになった要因ではないかと思っています。しかし、このへんの歌が今日最も再評価されそうな気がします。
なお、10枚目のスペシャル・ディスクには、RIE名義によるプレデビュー盤「ロックンロール・ランデブーのテーマ/愛の通り雨」(原宿のクリーム・ソーダ発、架空の映画のサントラ)をはじめ、大瀧詠一作品「風が吹いたら恋もうけ」、村下孝蔵作品「さみしさ裏がえし」、キャンディーズというより梓みちよのカバーの吉田拓郎作品「銀河系まで飛んで行け!」、'84さっぽろカーニバル・イメージソング「千年接吻」など、アルバム未収録のシングル曲が入るそうです。
ソニー時代のみということで、face featuring vocal/Rie Nakaharaとして出した「吐息のオペラ/嵐」は無理そうですが、オール・ソングスコレクションになることを期待したいものです。
というオーダーメイドBOX。理恵ファンみんなで、お・み・ご・と~と拍手し、だぅもありがと!と言える日が来ますように! 願わくば、再評価が高まり、また第一線に復帰してほしいものです。
(2013.2.28)
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