アイドル時代のシングル4枚+ドラマ主題歌!
昨年11月にオープンするやいなや、我々旧譜を愛する者には聖地として崇められるようになった新宿のディスクユニオン昭和歌謡館。数々のレコジャケをあしらった内装もさることながら、レコードもCDも本も超充実の品揃えに加え居心地も良いので、つい長居してしまう人は多いようです。
そのお店の開店と同時にスタートしたのが、昭和歌謡専門レーベル・昭和歌謡ジュークボックス。
第1号のジュディ・オング「 ジャズ・スタンダードを歌う 」を皮切りに、布施明「 布施明がバカラックに会った時(紙ジャケット仕様) 」、梓みちよ「 退職願い-ナツコの結婚-(紙ジャケット仕様) 」、中村晃子「 アタックシューベルト(紙ジャケット仕様) 」などなど、マニア垂涎の初CD化タイトルやアナログ盤を続々とリリースしていますが、何とこのたび山口いづみ「 コンプリート・シングル・コレクション+1 」の発売が決定したとのこと!
60の声を聞いた今でも、美人女優として知られる山口いづみさん。彼女のアイドル時代の音源をコンプリートした1枚ですが、これまでデビュー曲「緑の季節」がコンピ盤に入る程度の状況だったので、ファン待望、初CD化音源満載の内容となっています。
いづみさんと言えば、時代劇を中心に妖艶な魅力をふりまくイメージが強いのですが、実は近年も歌手として活動。ジャズライブを開いたり、ボサノバCDをリリースしたり、数年前にはライブで歌った東欧・クロアチアの歌「Cetri sutaduna」がYoutubeを通じて本国で評判となり、“クロアチアで最も有名な日本人シンガー”として認められていることがニュースになったほど。
昨年には「水戸黄門」でも共演した元スリーファンキーズの高橋元太郎さん(うっかり八兵衛役)とのデュエットシングル「 ローマで乾杯 」もリリースするなど、歌手としての認知度も復活してきていますが、今回の初ベストはそのルーツをまとめたものです。
東京女学館で浅田美代子の1年先輩で、当時から目立っていたという彼女。芸能活動禁止の学校中学を出て渡辺プロに所属。ナベプロ定番のテレビで知名度を高めた後に歌手デビューというスタイルを踏襲し、72年4月に東芝音工からシングル「緑の季節」でレコードデビューを飾ったのです。
安井かずみが手がけた歌詞に♪ラララランランラララーというフレーズが入っていることでも分かるように、バリバリのアイドル路線。その背景にあったのは、当時、カラーテレビを舞台に始まろうとしていた空前のアイドルブームでした。
火付け役となったのは、前年の新人賞を総ナメにした小柳ルミ子と南沙織のコンビですが、メディアではその2人をベースに、あと1人をプラスして新人3人娘的な展開を繰り広げようとしていました。
例えばプロマイド売り上げがグンバツの五十嵐じゅん、レコード売り上げが目立っていた平山三紀と、当初3人目の座席は流動的だったのですが、そこにダークホースとして現れたのが天地真理。あっという間に異常人気と呼ばれるほどの現象を引き起こし、新3人娘はルミ子、シンシア、真理ちゃんの3人として定着していったのです。
人気やヒットチャートでも拮抗する3人に大衆は文句はなかったはずですが、ビジネス的に面白くなかったのが事務所やレコード会社。一世代前のスパーク3人娘を独占したナベプロ帝国は、今回もとばかりに事務所が違うシンシアを排除して山口いづみを猛プッシュ。「緑の太陽」はスマッシュヒットを記録しました。
一方、シンシアと真理ちゃんを抱え、ヤングポップス路線を開拓しつつあった新進のCBS・ソニーは、曲調がポップスではなかったルミ子に代えて、人気アイドル女優・奈良富士子を歌手デビューさせて追撃しましたが、思惑通りになることはなかったのです。
結局はアイドルブームに乗り切れず、モデル出身の麻丘めぐみやスタ誕第1号の森昌子の影にも隠れ、ややお色気へと路線変更したものの歌手としては1年ちょっとで終了。後は女優として安定した人気を保っていくワケですが、今回はアイドル歌手時代に出した4枚のシングル「緑の季節/風の吹く街」「緑の太陽/十月生まれ」「小さな秘密/あなたが残していったもの」「プライバシー/恋の祈り」をコンプリート。
さらに、石立鉄男主演で彼女も出演した日本テレビ系ドラマ「雑居時代」のテーマ曲「そよ風のように」(「 コメディードラマ・ソングブック 」でCD化済み)がボーナス収録されるとのこと。
近年のアルバムで「緑の季節」を再録音したり、現在のライブでも当時のレパートリーを披露しているといいますから、今回のベストが今後の歌手活動にも好影響を与えるような気がしますね。
(2014.10.16)