オススメ復刻盤「ケン田村 吉田保リマスタリングシリーズ」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#728

ケン田村 吉田保リマスタリングシリーズ

Light Ace +3(MHC7-30021)、FLY BY SUNSET(MHC7-30022)
*2015.2.11発売、各¥2,400+税、Blu-spec CD2 <Sony Music Shop、タワーレコード限定>

吉田美奈子…愛は思うまま LET'S DO IT(MHC7-30016)、MONOCHROME(MHC7-30017)、MONSTERS IN TOWN(MHC7-30018)、LIGHT'N UP(MHC7-30019)、IN MOTION(MHC7-30020)も同時発売!

筒美門下のウエストコースト、1stもついに初CD化!

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 昨年の8月、Sony Music Shop限定販売の杉真理の「 MISTONE-30th Anniversary Deluxe Edition-【初回生産限定盤】 icon 」からスタートし、10月にはSony Music Shopとタワーレコード限定で第2弾の13タイトル(こちらで紹介)が一挙発売。シティポップス&オーディオファンの間で大きな話題を呼んだ「吉田保リマスタリングシリーズ」。

 保さんがかつて手掛けた作品を中心に、ご自身の手でリマスタリングし、高品質CDのBlu-Spec CD2仕様で復刻するというこだわりの企画で、ハイレゾ配信がスタートしたり、伊藤銀次のネットラジオ「POP FILE RETURNS」をはじめご本人の解説が聞ける機会が増えたり、リリース記念の試聴会イベントが開催されたり、巷では熱く盛り上がっている様子です。

 そういえば、ラジの復刻(こちらで紹介、今月からはタワレコでの発売も開始!)も保さんのリマスタリングであり、シリーズの流れに沿っているように思いますが、いずれも「音圧を稼ぐだけのマスタリングではなく、ピーク・レベルのコンプレッションを抑えることで、楽器の持つ本来の強弱やシンガーやプレイヤーの表現、そしてアナログ・レコードの臨場感を再現すべくマスタリングした」というもの。

 中には、90年代終盤から一気に音圧が上がった近年のリマスタリングCDに比べると音が小さいという声も聞かれますが、このシリーズはボリュームを上げて聴いて初めて、その違いが分かるようになってるそうです。

 今の感覚で当時の原音を忠実に再現する、というコンセプトは、大きな話題をふりまいた聖子のSACDハイブリッド盤(こちらで紹介)にも共通しているように思いますから、これからの復刻CDのリマスタリングの主流になっていくかもしれませんね。

 さて、このシリーズ、第2弾の発表時から続編を求める声は高かったですが、その要望に応えるように第3弾7タイトルのリリースが発表されました!(メーカーサイドでは第2弾とアナウンスされていますが、こちらでは前述の通り当初からカウントし第3弾としていますのでご了承ください)

 ラインアップは、妹君でもある吉田美奈子の続編・アルファ期「 愛は思うまま LET'S DO IT [Blu-spec CD2] 」「 MONOCHROME [Blu-spec CD2] 」「 MONSTERS IN TOWN [Blu-spec CD2] 」「 LIGHT'N UP [Blu-spec CD2] 」「 IN MOTION [Blu-spec CD2] 」(SonyMusicShopでは「 愛は思うまま LET'S DO IT icon 」「 MONOCHROME icon 」「 MONSTERS IN TOWN icon 」「 LIGHT'N UP icon 」「 IN MOTION icon 」)がメインですが、なんと知る人ぞ知るケン田村の2枚のアルバムも発売となります!

 それが「 Light Ace +3 [Blu-spec CD2] 」と「 FLY BY SUNSET [Blu-spec CD2] 」(SonyMusicShopでは「 Light Ace +3 icon 」「 FLY BY SUNSET icon 」)!

 81年2月、シングル「機嫌を直して/Nothing」とアルバム「Light Ace」を引っさげ、CBS・ソニーからシンガー・ソングライターとしてデビューしたケン田村。
 “ウエストコーストからすごい男がやって来た。”というセールスコピーに違わず、デビュー盤は本場LA録音という鳴り物入りの登場でした。

 カリフォルニアシャワーという感じのジャケットも素敵だったし、日系三世ならでは、得意の英語を駆使しつつ、ウエストコーストのカラリとした空気の中に日本人っぽい湿度を残した素直なボーカルは、個性的ではないけれどもスルメ的に魅力的。
 若き名匠・大村雅朗アレンジで現地のミュージシャンをバッキングしたナンバーは、グルーブ感あふれるシティポップスやAORから哀愁漂うフォーク系まで、いろんなタイプの楽曲を創るメロディーメーカーとしての資質も大いに期待されたものです。

 と書いてしまうと彗星のごとく現れた新人っぽいのですが、実はそのキャリアは古く、先にソングライターとして活動。太田裕美ファンには隠れた名曲として人気の高い76年の小品「カーテン」(こちらで紹介のアルバム「12ページの詩集」に収録、ケンは自作詩による「思い出を春に」としてセルフカバー)の作者として既におなじみでした。

 太田さんは近年のライブでもよく歌っているほどこの曲がお気に入りで、ケン田村について語ることもあったのですが、それが広まって、筒美京平フリークには先生のお弟子さんというか、門下生みたいな存在として知られるようになったんじゃないかと思います。
 ちなみにシンガー・ソングライターとしてのケンは太田さんのレーベルメイトとなり、プロデュースには太田さんのレコードを制作した白川隆三さんが関わることになりますからその縁は深いのでした。

 もっとも、ケンは77年に出た筒美先生渾身の野口五郎NY録音盤「GORO IN NEWYORK -異邦人-」(こちらで紹介)でコーラスの英語詞を手がけたらしいですし、76年のあいざき進也「青春物語」(こちらで紹介のBOXでCD化済み)や83年の早見優「 LANAI 」といった筒美先生の力が入ったアルバムに作品提供しているほどですので、確かに秘蔵っ子という感じがします。

 そして何よりの証しと言えるのが、3枚目のシングル「わすれておしまい」でしょう。
 もちろんケン自作のナンバーで「Light Ace」からのリカットなのですが、シングルカットにあたり筒美先生が編曲を担当しているのです。
 シングル用に派手にするのは「木綿のハンカチーフ」のケースを彷彿とさせますが、作曲していない曲のアレンジを担当するというパターンは先生にとって激レアも激レア。「私鉄沿線」などゴローのお兄さんと並ぶ扱いですから、やっぱりベリースペシャルな存在に間違いありません。

 ちなみにこの曲を名曲と推す人は当時から多く(最大の名曲とされるのは、寺尾聰に提供し葵テルヨシやみやじあつしがカバーした「ほんとに久しぶりだね」のようですが)、レゲエのドラゴン・ターボや、そのカバーという感じのRYO the SKYWALKERに加え、ケンとデビュー同期の遠藤京子(響子)もリメイクしています。

 さて、ケン田村がレコードをリリースした81年から82年は白川さん制作の大滝詠一「 A LONG VACATION 」がロングヒットを記録し、ナイアガラを中心に洗練されたシティポップス、それも男性アーティストに注目が集まった時代でした。
 初代トライアングルの山下達郎が安定した人気を保ち、2代目に加入したポップスの王道・杉真理やロックの佐野元春もクローズアップされる中、稲垣潤一や村田和人らフォロワーも続々と登場。
 そんなミュージックシーンの中で、桑名正博のいたモス・ファミリィ所属のケンは、山本達彦あたりと団子状態という感じでしたが、早く一歩抜け出そうとレコードをコンスタントに発売していたんですよね。

 81年には、デビュー作に続いて、第2弾シングル「ムーンライト マジック/Down in the Eastcoast」と前述の第3弾「わすれておしまい/L.A Lights」もリリース。
 82年7月には、ブルックリンハイツから見た摩天楼という感じのジャケットの通り、イメージはLAからNYへ、鈴木茂&後藤次利のアレンジでアーバンリゾートなシティポップスにシフトしたセカンドアルバム「FLY BY SUNSET」とリードシングル「LONG-DISTANCE CALL/Foot Steps」を発表。
 その後「愛に時間を/ふたりなら」というリカットシングルも出すなど、わずか2年でシングル5枚、アルバム2枚というアイドル並みの展開を見せたのです。

 結局いずれも大ヒットには至りませんでしたが、プロモーションのメインターゲットであったサーファーを中心に結構人気がありましたし、岩崎良美の81年の名盤「 Weather Report 」のオープニングを飾るゴキゲンな提供曲「Good-day Sunshine」のトリコになって、本人のアルバムを聴くようになったという人もいたように思います。レコードは売れなかったかもしれませんが、黎紅堂ではかなりレンタルされていた印象がありますから。

 ソフトロックやシティポップスの再評価の流れでも一定の人気はあって、金澤寿和さんのLight Mellowシリーズでは2001年のに展開した時のソニー編で選曲されたり、セカンドアルバムに至っては2005年に「CITY POP名盤復刻」シリーズでCD化済み。
 ファーストは今回初CD化となりますが、今月発売されたLight Mellowシリーズの新ソニー編「 Light Mellow Twilight 」にはまるで予告編のように1曲先行収録されています。まさにライトメロウ様様ということで、今回の2タイトルは金澤さんの解説付きというのも大きなポイントですね。

 またこの2枚は83年夏にCBS・ソニーの洋邦合同で展開されたウエストコースト系廉価盤シリーズ「Sailin' Summer '83」にラインアップされ、ジャケット変更の上限定再発されたことがありましたし、セカンドアルバムにおいては型番は同じでもジャケと帯の仕様を変更したLPを見たことがありますが、なんと今回はその別ジャケもすべて日の目を見る模様で、コレクターにとっても価値がありそう。

 しかもこのシリーズにしては珍しく、ボーナストラックの追加収録もうれしいニュース。
 ファーストには2枚目のシングル「ムーンライト マジック」と前述した3枚目「わすれておしまい/L.A Lights」という3曲のアルバム未収録曲がプラスされるとのことです。

 惜しむらくは、ナベサダ親子共演で話題を呼んだ82年のコカ・コーラのCMソング「イエス,アイム・イン・ラブ」(渡辺貞夫名義のシングルにボーカルとして参加)が漏れてしまったことですが、復刻盤が出ること自体夢のようなコトですので、またの機会を待ちたいと思います。

(2015.1.15)

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