オススメ復刻盤「優雅/アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 筒美京平を歌う アンド・モア」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#740

優雅/アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 筒美京平を歌う アンド・モア

(2003.12.3発売、MHCL-336、¥2,381+税) *アイドル・ミラクルバイブルシリーズ <アンコールプレス>

台湾からやってきたソウルな筒美系アイドル、再プレス!

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 思い返せば2003年、当初はソニーミュージック、東芝EMI、コロムビアの3社合同企画としてスタートしたアイドル・ミラクルバイブルシリーズ。

 アイドルのCDらしくスーパーピクチャーレーベルでカラー写真満載のブックレット付きという仕様はもとより、それまでCD化されずにいたマイナーなアイドルや、メジャーでも大ヒットのなかったアイドルにスポットが当たった企画として、アイドルフリークに大好評を博し、歳末の風物詩として3期連続でリリースが続きました。

 3年目にキングが参入したり、その後にコロムビアの増刊号(こちらで紹介)が出たりしたこともありましたが、最終的には通販限定、ソニーのオーダーメイドファクトリーで継続。
 市販品のような特別仕様ではなくなりましたが、今ではOMFの名物シリーズとしてすっかり市民権を得て、アクトレスやアクター、男性アイドルまで対象が広がっています。

 ただ、カルトに掘り下げるに連れてB級からC級、そして幻級へと、歌はおろか名前すら聞いたことがないようなアイドルや、果たしてアイドルと呼べるかどうか分からない人にまで広がり、最近は?マーク付きの「 アイドル?ミラクルバイブルシリーズ 6869 Girls icon 」のようにアイドルポップス以前の時代まで、もはやアイドルなのか端から疑問を呈する面々もガンガン掘削されている状況です。

 何より驚くのは、それらを欲してやまない好事家の方たちが多いこと。もともと女性アイドルや歌謡曲系女性歌手はおしなべてマニア人気が高い傾向にありますが、OMFではソレ系とそうじゃない系の動きの落差がスゴいんですよね。

 個人的には、初CD化や初ベストという触れ込みでも知らない歌手には全然興味が湧かないタチなので、OMFでもスルーしてしまうタイトルも多いのですが、そういうモノに限ったように食いつく層が存在することに愕然したり、歌手や曲のことを一切知らなくても購買に踏み切る層があることに唖然としたり、正直、感心を超えて不思議に思うこともしばしばです。

 しかもOMFでケイゾク販売しているタイトルのみならず、2010年にOMF経由でアンコールプレスされた伊藤麻衣子(こちらで紹介)や、昨年の松本典子(こちらで紹介)みたいに、ほとんどのアイドルマニアが入手していると思っていた市販シリーズの人気タイトルでさえ、アンコールプレスの要望が恒常的に高く、再プレス後すぐ売り切れになるという状況を目の当たりにすると、キツネにつままれたような感覚を覚えてしまったり。
 ただ聞くところによると、この現象には、中古市場でプレミアが付くタイトルには転売用に大量買いを行う層が少なからずいるという側面があるらしいですし、OMFに限らず、オタク系の限定商品は昔から投機目的で買う人が多かったので、さもありなんという感じです。

 ともあれ、限定盤のマニアックなCDが再び定価で買えるようになるのは、ユーザーやアーティストにとってはとても喜ばしいことだと思いますし、それがこのジャンルのパッケージでの復刻が続くことにつながると思えば、大歓迎ではないでしょうか。
 メーカーにとっても、復刻市場自体が二巡三巡する中、新たにリイシューするよりも再プレスの方がハードルは低いですからね。むろん完全生産限定だからという理由で当時買った人からすれば、再プレスに腹立たしさを感じることも理解できますが…。

 と、前置きが長くなりましたが、そういう背景を経てまたまたアンコールプレスが決定しました!

 再プレスされてはいたもののメーカー在庫切れになっていた前述の松本典子やOMF経由の「 アイドル ミラクルバイブルシリーズ 伊藤美紀 」をはじめ、「 アイドル ミラクルバイブルシリーズ 小沢なつき 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 我妻佳代 」「 アイドル ミラクルバイブルシリーズ 優雅 筒美京平を歌う アンド モア 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 本田理沙 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 沢田富美子・佐東由梨・沢田玉恵 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 兵藤まこ・小森まなみ・速水昌未・江崎まり 」「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 相楽晴子ベスト・チューン 」と、いずれも2003年から05年に出た市販時代のタイトルが並びますが、オススメは唯一の70年代アイドルにして、台湾の100万ドルのエクボ、優雅(ゆうや)の「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 優雅 筒美京平を歌う アンド・モア icon 」でしょう。

 このCDには優雅が74年の1年間に日本で残したナンバー、すなわち有馬三恵子+筒美京平コンビによる3枚のシングル「処女航海/叶えてください」「胸さわぎ/新しい恋」「異国の風/わたしは舟」と、2枚のLP「処女航海 はじめまして優雅です」「異国の風」の全楽曲を網羅。
 その上で「処女航海」「胸さわぎ」2曲のオリジナル・カラオケをボーナス収録したコンプリート・コレクションとなっていますが、筒美フリークにとってはタイトル通りほぼ筒美作品集というのが最大の魅力でしょう。

 振り返ると70年代前半の歌謡界はカオスな世相そのまま、前時代的な大人の歌手からジャリタレと揶揄されていたティーンアイドルまで、何でもありの感じで、ホステス系やアバズレ系、倒錯ものも含めアクの強い人がいっぱいでした。
 その1つという感じで自然に存在していたのが外国人歌手だったと思いますが、中華系の歌手が台頭したのは、やはり71年デビューの欧陽菲菲と72年デビューのアグネス・チャンが大成功を収めたせいでしょう。

 ホント雨後のタケノコのごとく数多のアジアン・アイドルがデビューしては消えていったようですが、そのピークが74年春だったような気がします。何せリンリン・ランラン、テレサ・テン、そして優雅の3組がアイドルとして登場したのですからね。しかも全員、筒美京平作曲のナンバーを引っさげて。

 人気という面では、サンミュージック所属で桜田淳子の妹分として「スター誕生!」でアシスタントも務めたリンリン・ランランに、大人にアピールする歌唱力という点ではテレサに軍配が上がったように思いますが、やっぱり楽曲という点ではホリプロ所属の優雅がダントツでした。

 台湾では「尤雅」としてすでにトップスターだった彼女は、CBS・ソニーの酒井政利プロデューサーのもと74年3月21日、南沙織をずっと手がけていた有馬+筒美コンビの楽曲によって日本デビュー。
 オリコン最高24位をマークしたデビュー曲「処女航海」を聴けば分かりますが、シンシアも驚くようなグルーブ感とソウルのフィーリングが満載です。

 アルバムではもっと顕著で、全曲筒美作品でまとめたファーストアルバム「処女航海 はじめまして優雅です」では当時のアイドルお約束のカバーが半分を占めますが、オリジナルに忠実だった他のアイドルとは大違い。
 全編を筒美先生自らアレンジも担当し、バリー・ホワイトばりの岡崎友紀「私は忘れない」を筆頭に、南沙織の「ともだち」「純潔」をはじめ、小川みきの「燃える渚」、平山三紀の「真夏の出来事」、つなき&みどりの「夜汽車よ故郷へ」と全編ソウルアレンジが施されているのです。

 ちなみにA面は有馬+筒美コンビの書き下ろしで、シンシアファンが聴けばヤングのテーマ・台湾編と思ってしまうよう風情。しかも「新しい街」は「私の港」と改詞・改題され、78年にチェルシア・チャンを経てシンシアがカバーという行く末を辿りますから、何とも因縁深い気がします。

 また疾走感が素晴らしい「わたしは舟」と、「故郷の春」はホリプロの後輩・池田ひろ子がカバー(「故郷の春」は「緑のカーニバル」と改題)していて、「アイドル・ミラクルバイブルシリーズ73〜76 Girls 鮎川由美・石井まゆみ・池田ひろ子・景山美紀」(こちらで紹介)に収録されています。

 そして第2弾シングル「胸さわぎ」。昔からこの曲の評価は異常に高いものがありましたが、ソウル&ディスコ路線はこれにてストップ。
 第3弾シングル「異国の風」では74年秋の歌謡界になじむ哀愁歌謡へとイメチェン。終焉を迎えるのですが、日本を異国ととらえた異国情緒という路線は、また別の魅力を醸し出しておりますし、優雅の幅の広さを証明していると思います。

 なお、セカンドにしてラストアルバムとなった「異国の風」は、優雅が歌うヒット歌謡!がテーマ。
 レコードではA面が「異国の風」「胸さわぎ/新しい恋」と再収録の「処女航海」のシングル曲に、いしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」「あなたならどうする」のカバーという筒美作品だけで構成。
 B面はいしだあゆみ「砂漠のような東京で」やヒデとロザンナ「愛は傷つきやすく」といった中村泰士作品のほか、ペギー・マーチの「忘れないわ」、小林旭「北帰行」、渚ゆう子「京都の恋」、ジェリー藤尾「遠くへ行きたい」といった旅のうたをセレクト。全編高田弘アレンジとなっています。
 なお、ファーストとセカンドの重複曲はCDでは当然カットされています。

 今見ると松野明美に似ていますし、独特の歌唱法なので聴く人を選ぶかもしれませんが、筒美ファンを自認する人なら即買いのアイテム。12年前に入手できなかった人は、このチャンスをお見逃しなく。

 なお同時再プレスのタイトルでは、サ行のアイドルをまとめた「 アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 沢田富美子・佐東由梨・沢田玉恵 」も超オススメ。松本隆+筒美京平のゴールデンコンビによるナンバーも結構入ってまして、コンビのファンも必携ですぞ。

 まずは、70年代後半に苦戦した渡辺プロが80年代の巻き返しを図って大プッシュした沢田富美子。
 プレデビュー時のタイアップアニメがモスクワオリンピックのボイコットでコケた不運もあり、正式デビューは81年となりましたが、ここには79年のプレデビューシングル「ノルマーリナ・ミーシャ(好きだわミーシャ)/ナターシャの子守唄」から、改名後にワム!をカバーした「哀愁のメキシコ/恋をしているの」までを網羅。
 ルックス、歌唱力とも言うことなしで、いずれもクオリティは高いのですが、やっぱり聖子のイメージを踏襲した本格デビューシングル「ちょっと春風/五月の色」と第2弾「風のシルエット/銀色の雨」、トワ・エ・モワのカバーでB面はカラオケだった第3弾「愛の泉」の3枚のシングルに尽きるでしょう。
 これで気に入った方は、南沙織や天地真理のカバーを含むライブ盤(こちらで紹介)がケイゾク販売されていますので、ぜひステップアップを。

 次はミス・セブンティーンコンテスト優勝を経て、キョンキョンの部活少女系イメージを煮詰めたようなルックスに変身。太田裕美を手がけた白川隆三プロデューサーのもと、83年にデビューした佐藤由梨。
 最初の2枚が松本+筒美コンビで、とんがったデビューシングル「どうして?!/やさしくしてね」もイイですが、やっぱりECDや加藤ミリヤにもリスペクトされてるマーヴィン・ゲイ風のセカンド「ロンリー・ガール/いかないで」がサイコーです。
 下田逸郎作詞の次作「ハート・ウォッシャー/天の川」は、同時期の太田作品で展開した自立した女性像が感じられますね。
 田辺エージェンシーだったので、中原理恵や高見知佳のようなバラドルもアリだと思ったのですが、本来の性格が出たというか、だんだん地味になってラストの「春めき少女/哀愁BOY」を迎えたのは残念な限りです。

 最後はSD系オーディションで河合その子を抑えて優勝するも、デビューが86年とかなり遅くなったのが敗因のような気がする未完の大器・沢田玉恵。
 資生堂の大型タイアップがついた彼女の2枚のシングル「花の精~わたしのON-AIR~/水蜜桃」「紫外線/醒めた夢」は松本+筒美コンビをはじめ、かの酒井政利プロデューサーらスタッフ陣の鼻息が伝わってくるような、超強力盤です。
 しかも、このタイトルのブックレットは、シングルジャケットの両面を復刻したモノなので、コレクターも大満足の1枚ではないかと思います。

(2015.3.30)


*いずれも2015年4月中旬出荷予定。市販品のアンコールプレスのため、 HMV icon TOWER RECORDS 楽天市場 など SonyMusicShop icon 以外のショップでも購入できます。

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