“ミッチョン、松本隆を歌う”ライブ盤、30年ぶり再発!
今月出た「 週プレ No.3&4 1/26 号 」でも「1985年組アイドル大名鑑」と題した14ページ特集が組まれていましたが(ナンノを手がけた吉田格プロデューサーや斉藤由貴のインタビューは必読です!)、今年は85年組がデビュー30周年を迎えます。
80年代アイドル史にとって85年は非常に大きな節目となった年だと思っておりますが、それは先ごろゴイスーな30周年記念BOX(こちらで紹介、予約締め切り日は延長された模様)が話題になったおニャン子クラブの登場もさることながら、松田聖子の結婚休業が大きく関わっていたように思います。
あくまで個人的見解ではありますが、オリコン1位記録も続行中という人気絶頂での聖子休業と復活こそが、その後のアイドルの定義を変えてしまった主要因ではないかと思うんですよね。
さて、そんな聖子の結婚休業が囁かれていた85年3月の21日、聖子フォロワー、正確には聖子ソングのフォロワー2人が同時デビューしたのでした。
1人は、聖子のデビュー以来CBS・ソニーで担当した若松宗雄プロデューサーが手がけ、直系として聖子風ニューミュージックを展開した松本典子。そしてもう1人が、聖子ワールドを確立させた松本隆さん渾身、“輝け!ミッチョン”というキャッチフレーズでデビューした芳本美代子でした。
ミッチョンは1983年、福岡音楽祭ビッグコンテストに河合奈保子の「ストロータッチの恋」を歌って出場。入賞は逃したもののテイチクレコードにスカウトされ、85年3月に松本さん作詩のシングル「白いバスケット・シューズ/海辺のテレフォン・ボックス」でデビュー。80年の河合奈保子、82年の石川秀美に続く、芸映プロ期待の女性アイドルとして鳴り物入りのデビューでした。
その後も松本さんはオリジナル曲を一手に手がけ、シングルは「プライベート・レッスン/Endless Love Song」「雨のハイスクール/ワンサイデッド・ラヴ」「アプリコット・キッス」「心の扉」「青い靴/天然色の夏」「Auroraの少女/Feel So Fine」まで、アルバムはファーストの「SURF WIND」全曲、セカンドの「PARADISE PARK」の半分、そしてサードの一部を松本さんが作詩しています。
同期の斉藤由貴や中山美穂もシングルは松本さんが担当していましたが、アルバムまでトータルで書いた新人はミッチョンだけ。それも、実年齢が上がり80年代の自立する女性像へとシフトした聖子では難しくなっていた、松本さんのお家芸と言える少女性たっぷりの詩が提供されているのですから、松本フリークに人気が高いのもうなずけます。
そういえば松本さんも作詞家生活45周年というアニバーサリーイヤーだそうで、いろんな企画が用意されているようですが、その前哨戦とでも言うようにミッチョン35周年の再発が決定しました!
それも、カバーを含み全曲松本隆作品で構成されたライブ盤「 ミ・ヨ・コ~Friendship Concert ’85~ 」、オリジナル発売から約30年ぶりの再発です。
これは85年10月13日、東京・芝郵便貯金ホールで開かれた記念すべきファーストコンサートの実況録音盤。ちょうど新人賞レースが本格的に始まろうとした時期ですが、日本レコード大賞新人賞のほか、あなたが選ぶ全日本歌謡音楽祭と日本歌謡大賞では最優秀に選ばれるなど総ナメにしたミッチョンの初々しいナマ歌がしっかり楽しめます。
フレッシュアイドルのファーストコンサートとあって、本人もファンも大興奮。オールデイズ&スペクターサウンド風のデビュー曲「白いバスケット・シューズ」で始まるオープニングから、その緊張が伝わってくるよう。
70年代アイドルと違い、オリジナル曲の多い時代ですから、セットリストは「プライベート・レッスン/Endless Love Song」「雨のハイスクール/ワンサイデッド・ラヴ」というシングル曲に加え、ファーストアルバムからは「クレープ・シュゼット」「透明なエレベーター」「リボンのない贈り物」「P・I・N・K」と自身のナンバーがチョイスされています。
とにかく精一杯歌い切ろうとする姿が健気ですが、やはり圧巻は中盤の松本隆メドレー(Takashi-Matsumoto Medley)でしょう。
松田聖子の「渚のバルコニー」で始まり「赤いスイートピー」で終わるメドレーは、竹内まりや「September」、三木聖子から石川ひとみへと歌い継がれた「三枚の写真」、神田広美の「人見知り」、薬師丸ひろ子「メイン・テーマ」という通泣かせの選曲で構成されているのです。
しかも「人見知り」を選ぶなんて、ワンコーラスではありますがよくぞ!という感じですよね。
この中では「三枚の写真」と「人見知り」がともに77年1月発売で古いのですが、「三枚の写真」は81年に石川ひとみがカバーしているので当時では知名度が高く何ら不思議はありません。ですから、この時代に「人見知り」を歌ったことはとても意義があることだったと思います。
なお、オリジナルの神田広美バージョンは、コンプリートとなったCD「 Myこれ!チョイス 36 待ち呆気+シングルコレクション 」(こちらで紹介)で聴けますので、ぜひこの機会に。
いずれにしても、「芳本美代子、松本隆を歌う」というにふさわしいライブ盤。当時はビデオのリリースもありましたし、この際DVD*とのセットで復刻されるのが理想ではありますが、不在となった聖子の代わりに松本さんが最も力を入れたミッチョンですから、松本さんが書いた黄金の聖子ソングが好きな人なら聴いてソンはしないと思います。
ただ、聖子の場合、ロリータ的ファンタジーも難なくこなすなど多面的で幅が広すぎたものですから、聖子の後継とは言えなさそう。個人的には翌年デビューの山瀬まみの方が、素材として聖子のシュールな部分を表現できた分だけ後継者に近いと思っていますが、松本作品の日常的な世界という意味ではミッチョンが秀でているような気がしますし、それがこのライブのカバーでしっかり確認できるのではないでしょうか。
今回は35周年記念企画第1弾ということですので、お次は松本作品を収録したファースト&セカンド*なども再発されることを祈っております。
なお、ミッチョンのスタジオ録音音源もちゃんと聞きたいという方は、2008年に廉価再発されたシングルコレクション「 コンプリート80’sシングルズ 」(こちらで紹介)をどうぞ。80年代のシングルAB面はもちろん12インチも含め網羅したお買い得2枚組ベストですので、松本フリークも必携ではないかと思います。
ただし、90年代の「愛しのバカヤロー」やサザンのカバー「海」が漏れていますので、オールタイムでコンプリートしたい方は1枚ものの「 芳本美代子 ゴールデン☆ベスト 」やMEG-CDでの補完が必要です。
(2015.1.20)
*芳本美代子の歌手デビュー30周年記念企画は、第1弾が2015年3月18日発売の「
ミ・ヨ・コ~Friendship Concert ’85~
」、第2弾が5月20日発売の「
SURF WIND
」「
パラダイス・パーク
」「
WING
」、第3弾が6月17日発売の「
I’m the one
」「
YESTERDAY’S
」「
Miss Lonely Hearts
」、第4弾は7月22日発売の「
Power of Love
」「
「MY」
」となっています。
*芳本美代子30周年復刻企画第5弾として、映像ソフトもDVD「
ミ・ヨ・コ~Friendship Concert’85~ [DVD]
」(TEBN-32065、¥2,963+税)、「
EXPLOSION [DVD]
」(TEBN-32066、¥2,963+税)として2015年8月19日に復刻されることになりました。