ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤528

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#528

松田聖子 LPサイズ紙ジャケット復刻 コレクション<第1弾>

SQUALL(MHCL-20146)/North Wind(MHCL-20147)/SILHOUETTE~シルエット~(MHCL-20148)/
風立ちぬ(MHCL-20149)/Pineapple(MHCL-20150)

2012.2.15発売、各¥2,800  *Blu-spec CD(LPサイズ帯付き紙ジャケットは初回仕様限定盤のみ、通常盤はジュエルケース)

マニアもやっと納得! 黄金期のアルバムがブルスペ再復刻!

 今週、竹内まりやとのコラボによる新曲「 特別な恋人 」が発売になったばかりの松田聖子。
 強力新譜が目白押しの中、セールス的にも好調な滑り出しを見せているようですが、なんたって話題性抜群。各メディアでも久々に大きく取り上げられ、ファンにも久々のセルフ脱却シングルということで喜ばれ、ファンでなくても久々に聖子のCDを買ったという人が多いみたいです。

 そりゃそう、聖子といえば、CBS・ソニー時代の80年代以来、やっぱり多才なアーティストの個性的なナンバーを歌いこなす本物のボーカリスト。
 運も時代も味方につけたていたということもありますが、素材に徹していた黄金期の作品が傑出しているのは、日頃は今の聖子の音楽が一番と断言するコアファンでさえ内心では認めざるを得ないといわれています。

 かつてLPと呼ばれていたあの時代の聖子のアルバムは、神々しいまでの声質と相まって今もなお高い人気を得ていますが、紐解けば、CD時代になってすぐCD化されひとしきり売れた後、90年代にはお得なCD選書になって定番化。以来ずっとロングセラーを続けてきたせいで、復刻時代のリマスタリングの波に乗り遅れてしまうなど、名盤と呼ばれるワリには全然ふさわしくない扱いを受けていたのです。

 売れ続けるからカタログで生き残り、他のアーティストなら2、3回は再発を繰り返しているのになかなかリマスタリングが出なかった、というのもなんとも皮肉なことでしたよね。

 実際、リマスタリング復刻が当たり前の時代になって以降、オリジナルアルバムが復刻されたのは、2006年に10億円超のセールスを叩き出したLPサイズのでかジャケ10万円BOX、2009年の80年代オリジナルアルバム単品Blu-spec CD化(こちらで紹介)の2回。
 しかし、いずれも完全生産限定のため現在は市中在庫のみという状況で、タイトルによってはプレミアがつくほど入手困難なものもあるみたいです。

 そういう背景も関係あるのでしょうか。今回、過去2回の復刻をミックスした、いいとこ取りのような内容でのオリジナルアルバム復刻が決定しました!

 まずは初期の5作品「 SQUALL 」「 North Wind 」「 SILHOUETTE~シルエット~ 」「 風立ちぬ 」「 Pineapple 」。

 いずれも初回限定盤はLPサイズ紙ジャケ・帯付き仕様というBlu-spec復刻。ピクチャーディスク仕様で、さらにボーナストラックとして各アルバムに対応したシングル曲のオリジナル・カラオケ(「SQUALL」には「裸足の季節/青い珊瑚礁」、「North Wind」には「風は秋色/Eighteen」、「SILHOUETTE~シルエット~」には「チェリーブラッサム/夏の扉」、「風立ちぬ」には「白いパラソル/風立ちぬ」、「Pineapple」には「赤いスイートピー/渚のバルコニー」)が追加収録される上、限定ではなく(ココが今回の一番のポイント!)ジュエルケースの通常盤も発売になるそうです。

 あの頃の記憶が鮮やかによみがえるLPサイズのでかジャケというのは10万円BOXと同じですが、今回はコレクターも納得の帯付き(注・初回盤のみ)。帯付きというだけで即買いしてしまう人もいるような気がします。
 あと、プライスが2,800円とLPと同じ(「SQUALL」のLPは2,700円でした)というのもノスタルジックな感じ。コレに、今では使用できなくなったCBS・ソニーのロゴを再現したら言うことなしなんですけどね。

 そしてBlu-spec CD化の時と同じく、高品質のブルスペ&単品売りですから、好きなアルバムだけ買えるという良心的なシステム。
 しかも通常盤があるので、コンパクトな方がいいという人はジュエルケースを入手できますし、焦って買わなくてもやっとよくなったんです。

 聖子の場合、移籍してもメーカーサイドが自由にリリースができる、というようにはいかない雰囲気もあるみたいなのですが、今回はさすがソニーミュージックの中でもカタログ部門であるSMDRの企画という感じです。
 とにかく、誰もが納得できる80年代の復刻盤がようやく登場することになったのは事実ですので、ここは素直に感謝しつつ、駆け足で5枚を紹介しちゃいましょう。

 まずは大器の予感もバッチリ、もぎたてのフルーツみたく、とにかくみずみずしい聖子を感じられるファーストアルバム「 SQUALL 」はシングル並みの売り上げを見せ(オリコン2位)、デビューアルバムながらアルバムアーティストとしての存在感を示したもの。近年はタイトル曲がライブでも歌われるなど再評価の高い1枚です。
 当時流行のトロピカル&60年代ポップスをベースにしながらも、ハスキーな低音と良く伸びる高音という聖子の声の魅力のすべてを、早くも生かし切っていると思います。聖子ナンバーがエバーグリーンなのは、大村雅朗さんの存在があったからだということに気づかされますね。髪を濡らしたジャケットは聖子のアイデアだったとか。

 セカンドの「 North Wind 」はアルバム初のオリコン1位を獲得。定番曲として復活を果たしている「Only My Love」が代表的ナンバーですが、注目すべきはポップロック、ボッサ、AOR、フォルクローレなどを歌謡曲と巧みにクロスオーバーさせたり、流行の洋楽のフレーズを取り入れたり、サウンド的にも実験作が満載な点。メロも小田裕一郎さんの真骨頂といえるほどバラエティーに富んでますよね。
 ぶりっ子イメージ全盛期なのに、自立という意味のふてぶてしささえ漂う名作です。粒ぞろいなのにあんまり話題に上ることがありませんが、上り調子のムードと合わせて、初期3枚の中では突出した出来ではないでしょうか。
 そういえば百恵フィーバー期のリリースでしたが、百恵ちゃんのシングル「冬の色」みたいなジャケットも良いですネ。

 松本隆さんとの邂逅「白い貝のブローチ」を収めたサード「 SILHOUETTE~シルエット~ 」(オリコン2位)。財津和夫さんによってニューミュージックの色づけをされた聖子ですが、デビューの頃の新鮮さが薄くなってきて品行方正なレッツヤンみたいな雰囲気が野暮ったく見えてしまっています。
 詞の世界でもサウンド的な意味でも、どっちつかずの境界線を行ったり来たりする過渡期的なアルバムといえるでしょう。 
 初めて聞いた時、ファースト&セカンドの総決算というような印象がありましたけど、聖子の器というものが大きくなって三浦徳子+小田裕一郎コンビを飲み込んだ瞬間、みたいなものが記録されているからでしょうか。

 そして、お肌と同じく声のコンディションが最悪だった頃の「 風立ちぬ 」。CBS・ソニーのお家芸である文芸路線のシングルの世界を広げていますが、声の荒れに伴って精神状態も沈んでいく様がしっかりレコーディングされているようです。
 「冬の妖精」から「ガラスの入江」への流れは神がかり的。松本隆+大瀧詠一コンビのA面は大瀧さんがサウンドプロデュースを担当しロンバケの姉妹編といわれ、ナイアガラーの皆さんも復刻のたびに入手してくれるおかげで、再発でも突出したセールスを記録している模様。ここからアルバムもオリジナルはオリコン1位という記録が続いていきます。
 個人的には、太田裕美の「こけてぃっしゅ」の延長線上を行く形で、聖子の方向が明確に決まったアルバムのように思ってます。

 今回最後となるのは、ユーミンの力を借りて、詞も曲もぐんとブラッシュアップ。ナウな女子大生みたいなイメージを定着させ、アイドルのアルバムをバカにしてた洋楽少年でさえ認めさせた「 Pineapple 」です。
 松本人脈による原田真二、知的で優しい部分を拡大させた来生たかお、従来のイメージを保つ役割をしっかり果たした財津和夫…聖子という素材だからこそ、たわわに実らせることができた黄金の果実です。
 ここからは、荒れてしまっていた声さえもザラメからグラニュー糖、そしてパウダーシュガーへと精製されるように変わり、奇跡のキャンディボイスが完成していきます。
 女の子も心の底から聖子を好きになった時期とリンクしていて、ファッション&オピニオンリーダー的存在になっていく聖子手法が見えてきそうです。

 余談ですが、ぶりっ子だと毛嫌いしてる女性に限ってしっかり聖子ちゃんカットを真似してたり、そんな屈折感を抱かせていた聖子が、手のひらを返したように女性に支持されるようになったのもこの頃。
 きっかけは「赤いスイートピー」の世界だといわれていますが、持論では、髪を切ってブスに見えるようになった聖子に世の女性たちが気を許したからだと思っております。

 という今回の復刻。既に過去の再発を買っている人にとっては、10万円BOXの5枚を下取りに出し、初回盤を買って差し替えるべきか、全然観ないDVDとの2枚組ブルスペなんか売っ払っちゃって今回の通常盤仕様をあらためてコレクションするべきか、悩む人も多そうですね。ホントは真っ先にコレが出てくれたら、何も問題はなかったんですが…。

 でも、今回はコアな聖子ファン向けというより(コアなファンも納得できる内容ですが)、まりやとのコラボでファン復活した人たちに手にとってもらいたいところ。
 タイミング的にもバッチリですので、ボーカリストという聖子が最も才能を発揮でき、いちばん評価されるべき分野での復権を期待したいです。それこそが、80年代の楽曲のクオリティの高さをこれからに反映させていくという点でも大きな意味を持つはずですから。

(2011.11.26)


*Sony Music Shopで予約すると、先着予約特典(オリジナル特典)として「オリジナルB2ポスター」がプレゼントされます。
単品ではなく「まとめ買い」での予約に限るもので、特典がなくなり次第終了となるそうですので、お早めに!

*紙ジャケLPサイズ復刻盤・第1弾全5タイトル購入者を対象に、500名に「松田聖子特製トランプ」が当たる応募抽選キャンペーンを実施。(通常盤は対象外ですのでご注意ください)


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