熱い青春を熱唱した大ちゃん! 29年ぶりのベスト!
先日もまとめ的な増刊号「 アイドル・ソング・ベスト100 1970-1989 」が発売されましたし、今年はレココレを中心にアイドルにスポットが当たった一年という感じですが、以前からアイドルというといつも女性のみで、男性アイドルはそっちのけという現実を不甲斐なく感じてる人も少なからずいるようです。
むろん男性アイドルの復刻CDは出ても全然売れなかったりするので、しょうがないことではありますが、女性というだけで現役時をほとんどの人が知らない幻級でさえガンガン復刻されておりますし、ルックスや曲の善し悪しを言及されることも無縁のような雰囲気もありますんで、ビッグネームの男性アイドルが冷遇されている現状を思うにつけ、余計に憤懣やる方ない感じになってしまうことには深く同意する次第です。
個人的に、男性アイドルは収集癖の少ない女性が支持してきたことと、70~80年代は新御三家とたのきんトリオが圧倒的すぎて、多くの男性アイドルが埋没してしまったことがその要因ではないかと考えておりますが、たのきんですら、ちゃんとしたアンソロジーが出ていませんからね。
これは「ユー、あきらめちゃいな」という啓示かもしれないと、結構真剣に思っていたりして…。
そんな折、朗報と言えるニュースが! なんと、あの堤大二郎のラジオシティレコード時代の完全シングル集、すなわち81年4月のデビューシングル「燃えてパッション/My ギャル」から83年の「君とDO IT!/哀・愁幕」まで、7枚のシングル両面14曲を収録した「 燃えてパッション ラジオ・シティ・イヤーズ・コンプリート・シングルス 」が発売されるというのです!
さすが高護さんのHotwax。その筋ではバイブル本として支持されている「Hotwax presents 歌謡曲 名曲名盤ガイド1980's」(こちらで紹介)関連のシリーズでの音盤化ですが、大ちゃんのCDはなんと86年にベスト「Memories」が出たきりでしたので、なんと29年ぶり。
しかも、そちらはシングルA面でも欠落している曲がありましたので、今回は初のコンプリート・シングルコレクションとなります。
ラジオシティレコードは、後にアポロンに吸収されていますが、どちらの会社もとうになくなっていますし、ビクター音産は当時のディストリビューターだっただけなので、背景的にも簡単ではないように思っていましたので、まさにファンにとっては大願成就のリリースではないかと思います。
さて、ルックスよし、声よし、キャラクターよし、新御三家で言うならダイナミックなヒデキのイメージで登場した大ちゃん。
80年にジュニア向けドラマ「ぼくら少年野球探偵団」で芸能界デビューし、翌年にはNHK「レッツゴーヤング」でサンデーズのニューフェイスとして登場。卒業したトシちゃんの後を受けたジャニーズのひかる一平、マッチとそっくりと言われた新田純一(レコードデビューは翌年)とともに大きく期待されたものでした。
思えばこの81年組は、いつも松田聖子や河合奈保子、岩崎良美ら前年の豊作ぶりと比較され、小物ぞろいの不作というレッテルを貼られていますが、それは女性アイドルに限ったことで、実は男性陣はかなりレベルが高かったように思います。
金八先生サイドのせいでレコードデビューが延期になった沖田ヒロくんを筆頭に、ミスターCBS・ソニーの竹本孝之も含め、大物を予感させたり、売れるオーラをまとったりした人たちが多かったのですよね。
結局は、戦略的にトシちゃんよりレコードデビューを1年遅らせたマッチの一人勝ちとなり、その他はレコードセールスが伸びなかった…。そのせいで、まったくパッとしなかったイメージが定着してしまったように思いますが、人気とか、タレント性という面では男性アイドル豊作の年といっても過言ではないように思っています。
であるからして、大ちゃんも歌の路線というか、衣装も含めたトータルイメージさえしっかりしてたら…なんて思うのです。
レッツヤンでは、新メンバー初のヤングヒットソングとしてプッシュされたデビュー曲「燃えてパッション/My ギャル」にしても、インパクトはありますが、衣装も含めなんだかチグハグ。
その雰囲気は新御三家ではなく新新御三家的といいますか、本気(マジ)なのか、ウケねらいなのか、とにもかくにも話題にはなりましたっけ。
その点、デビュー曲AB面の作家陣を入れ替え、新人賞レース参加曲となった第2弾シングル「恋人宣言/青い衝撃」の方が正統派アイドルっぽい気がしたものですが、曲調は青春歌謡チックで、衣装も振り付けも赤いバラの小道具も、新御三家よりも前の御三家的なムードで、ナウな80年代感覚ではどうにも古くさかったのは事実です。硬派な方が映えるルックスだったので、古さでいくならモリケン路線の方が似合っているように思ったのは確かです。何せ“熱い青春を熱唱するシンガー”で、ファーストアルバムのタイトルが「愛」でしたからね。
とはいえ、レコ大の5人には入れなかったものの、歌謡大賞をはじめ多くの新人賞でノミネートや入賞を果たしましたから、成果を挙げたとみるべきでしょう。
そして極めつけは2年目の82年、美樹克彦のカバーということで話題を呼んだ第3弾「花はおそかった/恋はストーミーウェザー」。
「まちぶせ」「すみれ色の涙」「ハロー・グッバイ」と発展したリバイバルブームや廃盤ブームの影響でしょうし、変なオリジナルよりカバーを出す方が成功度が高い風潮がありましたので、得策であったことには違いなのです。しかし、なぜ新御三家よりもさかのぼってしまったのでしょうか。当時、大二郎ファンだった同級生がいたく意気消沈したりして、少なくともファン層にすらウケていなかったくらいだったのでね。
よくクサイと言われた台詞に関して言えば、トップを独走していたマッチだって間奏に台詞があり「バカヤローッ」と叫んでカッコイイと言われていたんですから、台詞の問題ではなかったと思っています。
という感じで、こういう迷走感はずっと続くのですが、起死回生を図ったのが、沢田研二作曲ということで話題を呼んだ「ぎりぎり愛して/レーザー・アイズ」。
ジュリーはこの年、作曲家としても積極的に活動し、シブがき隊、多岐川裕美らにも提供。現役時代はライバルだった百恵ちゃんとのタッグでアン・ルイス「ラ・セゾン」を大ヒットさせていますから、期待大だったのですが…。
次の「彗星物語/Lady Killer」は、声優・井上和彦のカバーというか競作という感じだったようですが、続く「セクシーベイブ/トライ マイ ハート」も含め違うトーンの繰り返し。
ラジオシティ時代の最後は、日本でCMソングにもなったバリー・マニロウの「恋はドゥ・イット!!」のカバーとNOBODY作品をカップリングした「君とDO IT!/哀・愁幕」という、今回のCDで通して聴くとその変遷に驚くことだと思います。
その後は俳優、タレントとしての活動へとシフト。アクシデントがあったり何かと大変でしたが、現在も舞台を中心に活躍しているようで何よりです(個人的には深夜ラジオで大ちゃんが話したオカルト話が強烈で、それからあの事故があったりしてトラウマになるほどショックを受けていたので、現在の活躍は余計にウレシイです)。
ちなみに歌手としては90年にキングレコードから自身が出演したアデランスのCMでも流れたシングル「今日子」とアルバムをリリースしたのがラストのようですが、ラジオシティからは、ライブを含めアルバムを4枚出していますので、今回の数字いかんによっては続編が出るかもしれませんよ。
なお、このシリーズでは、時ならぬお湯をかける少女で鮮烈デビューを飾った工藤夕貴の「 野生時代 ハミング・バード・イヤーズ・コンプリート・シングルス 」も同時発売されるとのことです。
(2014.12.19)