MEG-CDでは満足できなかった人へ、狩人初のコンプ!
このところ貴重なシングルコレクションのリリースが相次ぎ、コアなアイドルフリークや歌謡曲マニアを狂喜乱舞させている高護さんの「Hotwax presents 歌謡曲 名曲名盤ガイド1980's」(こちらで紹介)関連のシリーズ。
今月の堤大二郎(こちらで紹介)や工藤夕貴、来月の杉浦幸(こちらで紹介)に続き、4月にも発売が決定しました!
それが「 あずさ2号 ワーナー・イヤーズ・コンプリート・シングルス 」と「 花火 コンプリート・シングルス 」の2タイトルですが、特筆すべきは何と言っても狩人でしょう。
解散や再結成などがあったものの今も現役の狩人は、加藤邦彦(現在は久仁彦)、加藤高道の兄弟デュオ。
緩急の効いた歌唱力と兄弟ならではのハーモニーを武器に、フォーク歌謡的な抒情的派のナンバーを得意としましたが、都倉俊一センセイが司会を務めたNHK「レッツゴーヤング」には川崎麻世や太川陽介らとともに初代のサンデーズとしてアイドル的に登場。
デビュー曲「あずさ2号」の大ヒットで幅広い層から支持を集め、一躍トップスターに。その年の新人賞を総ナメにしたのはご存じの通りです。
個人的にもファンでしたが、当時はピンク・レディーの大ファンで都倉先生が男性PLとして位置づけていた狩人を応援するのは当然な流れだと思っていましたし、「明星」や「平凡」で読んだ赤貧生活のエピソードに胸を打たれたのも大きかったと思います。同期の清水由貴子の家庭環境にも涙を禁じ得ませんでしたが、狩人はもっと鮮烈で、醤油ご飯の話とかはハッキリ覚えていたりして…。
むろんお涙頂戴の脚色もあったでしょうが、今でもたまにテレビで見かけると「お兄さん、ちゃんとご飯食べているかな?」なんて、ふと思った自分に愕然とするほどです…。
さて気を取り直して、今回のベスト「 あずさ2号 ワーナー・イヤーズ・コンプリート・シングルス 」は、1977年のデビューからそして83年まで、ワーナー時代の全シングルAB面を収録した初のコンプリート。
すなわち「あずさ2号/季節が変わる前に」から「コスモス街道/秋風にからまわり」「若き旅人/回想」「青春物語/卒業メッセージ」「みちのく夏愁/八月のアニバーサル」「国道ささめ雪/日本海フェリー」「アメリカ橋/ロンググッバイ」「悲しみ・クライマックス/別れの前兆」「女にかえる秋/愛ひとつ道しるべ」「白馬山麓/春を告げる手紙」「ブラックサンシャイン/君ひとりで旅するならば」「クイーン・オブ・シックスティーン/ミッドナイト・ドライバー」「風が吹けば/君がために」「そして20才/戻らぬ夜」「いつも夕暮れ/まつり挽歌」「日本海/メローな夜」「南十字星が見える町から/セピア色の風」までが一挙に収録されるというワケなのです。
ベスト盤などは折に触れて出ていたものの、B面曲など長らくCD化が進まなかった狩人ですが、2012年にはワーナー時代の全シングルがMEG-CD化されておりましたので、かつてほどの飢餓感はありませんが、あれをコンプするのは不経済だし、今回インディーズとは言え、れっきとしたCDで編まれることになったのは喜ばしい限りです。
個人的には、友人がレコードなどから集めて作ってくれた自家製CDを愛聴していますが、今聴いても大人の鑑賞に堪えうる名曲ぞろいですので、自信を持ってオススメしたいと思います。
クロスオーバーの時代を象徴するように、フォーク歌謡から演歌、ポップス、軍歌風まで、さまざまな曲調を歌いこなしてきた2人ですが、真っ先に聴いていただきたいのが都倉先生らしい展開がメロウな「卒業メッセージ」。
実は当初、78年3月発売の4枚目のシングルA面曲として発表され、雑誌や明星の歌本なんかではもちろんラジオでも新曲としてガンガン紹介されていたんですよね。その前の軍歌みたいだった「若き旅人」とは180度異なるイメチェンナンバーで、1度聴いて大ヒットを確信したものです。結局は路線継承となる「青春物語」に差し替わったワケですが、コレをA面にしていたら狩人は失速しなかったのではないかと今でも思っています。
そして、狩人のナンバーで最も好きな曲なのが、坂田晃一さんの作品集(こちらで紹介)の時にも書きましたが、先生の作曲で狩人らしい繊細さが美しい「愛ひとつ道しるべ」。
リリースは79年秋のB面曲ですが、もともとは前年にオンエアされた銀河テレビ小説「わかれ道」の主題歌。「国道ささめ雪」の代わりにA面で出てたら絶対巻き返してたような気がする佳曲です。
あとは彼らの得意とした旅情歌謡とは打って変わってメロウなポップス「クィーン・オブ・シックスティーン」。
まだディスコ未体験の小学生としては、六本木のディスコ・キサナドゥをはじめ、当時の最先端・ローラーディスコに憧れたものです。お洒落に興味があった人なら「Crew'sのシャツ」というフレーズに泣けてくる名曲ですね。
もう1曲、忘れるところでしたが、TBSドラマ「一人来い二人来いみんな来い」の主題歌「風が吹けば」も大好き。
このドラマ、池内淳子主演で養護施設を舞台にした人情ドラマだったんですが大好きで。 細かい筋は忘れちゃったんですが、井上夏葉という女優さんの役柄がとにかく憤怒もので、毎週悶々としながらも狩人の爽やかな主題歌に癒やされていたことを思い出します。
その狩人より1年前、ピンク・レディー、内藤やす子、新沼謙治、角川博とともに昭和51年度日本レコード大賞新人賞を受賞したのが芦川よしみさん。
80年代後半には、競作となった「男と女のラブゲーム」を矢崎滋とのデュエットでスマッシュヒットさせ、続編といえる「男と女のはしご酒」は武田鉄矢とのデュエットでベスト10入りさせたため、歌手としての実績はどうしてもこのカラオケ演歌系2大ヒットがクローズアップされてしまいますが、元々はW・パイオニアの先輩である小柳ルミ子路線といいますか、ちょっと和風なイメージでスタートした歌謡アイドル。
デビュー曲「花火」や意味深な第3弾「燃える春です」は2012年の「きらめきアイドル~ワーナー70’sコレクション」(こちらで紹介)で日の目を見ていましたが、今回の「 花火 コンプリート・シングルス 」には「花火/音無川」から、「雪ごもり/隅田川」「燃える春です/さよならの言訳」「すっぱい夏/夏はプカプカ」「本牧ベイストリート/密会(しのびあい)」「悲しみ集め/メランコリー東京」、そして80年の「木遣りに送られて/北国の花吹雪」まで、7枚のシングルを網羅。
「悲しみ集め」「木遣りに送られて」は、アシスタントを務めた鶴光の「オールナイトニッポン」(川崎麻世ファンだったお茶の水のマンモスおばばの話が印象的でした)でさんざんいじられていたので、当時のリスナーにはかなり知られていると思いますし、作家陣には当時「北の国から」が爆発的ヒットを飛ばしていた小林亜星をはじめ、杉本真人、浜圭介、平尾昌晃、山上路夫、さいとう大三といった大御所の先生方ですので、クオリティもお墨付きです。
また、歌に興味がなかったという人でも、レギュラーの「カックラキン大放送!」のマチャアキコーナーで見せたナース姿など、動く姿を見たことがないという幻級のアイドルよりはかなりおなじみだと思いますので、この機会に聴いてみては。
(2015.2.13)