アルバム一挙再発、必聴は松本隆渾身の一作!
先ごろ、自選のカバーアルバム「 時の扉
今回の本格的な歌手活動再開は、今年が女優デビュー35周年記念のアニバーサリーイヤーにあたることから始まりましたが、思えば第一報は、春先に発表された23年ぶりの単独コンサート開催の告知でした。
コンサートの開催は映画デビュー作「野生の証明」の封切り記念月の10月で、東京と大阪の2カ所4公演。先行予約は6月に開始されましたが往年のファンが殺到、7月の一般発売もあっという間に完売したといいますが、歌手としての薬師丸ひろ子人気に輪をかけたのが、ちょうどこのタイミングで出演したNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」だったのでした。
ドラマが国民的人気を博していく時期と重なった“大女優・鈴鹿ひろ美”の登場。しかも「潮騒のメモリー」をはじめ大ヒット曲を何曲も持っているのに、桁外れの音痴ですべて影武者が歌っていたという設定は、人々が知る“類い希な歌声を持つボーカリスト・薬師丸ひろ子”とかけ離れていたがゆえ、さらなる注目を集めたのでありました。
そして追い打ちをかけるように、鈴鹿ひろ美の影武者を演じた小泉今日子が「 潮騒のメモリー
そういうワケで「35th Anniversary Concert」のチケットはプラチナ化してしまったようですが、幸いにもワタシは先行予約で大阪公演のチケットを押さえていたので無事拝見でき、ホント大感激したことでした。
レスリー・キーが切り撮った美貌そのままの立ち姿はもとより、変わらない歌の雰囲気や熟成度合いも素晴らしかったのだけれども、ユーミン言うところの薬師丸さんの霊性の高さといいますか、後光が射すような存在感と神々しい温もりに包まれ、泣きっぱなしだったのです。今思うと、薬師丸ファンの皆さんからにじみ出る温もりや品位が作った会場の雰囲気も大いに関係していたような気がします。
セットリストは当然のごとくヒット曲中心でしたし、先行披露したカバー曲やこの日のために歌った出演作ゆかりのナンバー以外はすべてベスト盤「 歌物語
このコンサートの模様は一部がNHK-BSプレミアムでオンエアされていましたが、来年1月にはブルーレイ「 -時の扉- 35th Anniversary Concert [Blu-ray]
というように、歌手・薬師丸ひろ子に再び注目が集まっている今、EMIレーベルを擁する所属レコード会社・ユニバーサル ミュージックの方でもこのタイミングを逃してなるものかとばかり、旧譜の大プッシュも開始された模様です。
まずはiTunesなどの配信で、“薬師丸ひろ子 デジタルアルバム・プライスダウンキャンペーン”と題しベストアルバム「歌物語」を1500円、オリジナルファーストアルバム「古今集」を900円という期間限定お買い得価格で販売。
そしてパッケージでも、“薬師丸ひろ子 オリジナルアルバム・SHM-CD復刻再発”と銘打って、高品質なSHM-CDによってEMI時代の名盤7タイトルが廉価再発されることになりました!
薬師丸さんのSHM-CDといえば、絶対名盤シリーズの一環として、84年のオリジナルファーストアルバム「 古今集
角川を離れ本格的に歌手活動を開始した85年の「夢十話」(2位)は紙ジャケ盤「 夢十話 (紙ジャケット仕様)
オリジナル発売時によく聴いていたという出戻りファンや、あまちゃんで薬師丸ひろ子の歌に初めて触れた人にとってもウレシイ再発ではないでしょうか。
EMI時代をほぼ網羅したBOX「 PURE SWEET
むろんそれぞれに素晴らしい出来ですし、個人的に最も聴いたのは「夢十話」なんですけど、ここではやはり松本隆さん渾身のトータルアルバム「 花図鑑
「花図鑑」は86年6月発売。篠山紀信さん撮影のジャケットも得も言われぬ感じですが、松本さんがプロデュースしたアルバムで、とにかく詩集としての構成に脱帽。他のアイドルには書けなかったけど、松本さんがやりたかったのであろう純粋詩的なものも見られ、歌詞カードを抱きしめたくなるほどため息が出ます。アレンジは、今もサポートしている武部聡志さんと、松任谷正隆さんと、ユーミンファミリーで固められ、サウンド的にも統一されております。
作曲家陣には筒美京平、細野晴臣、井上陽水と、松本さんとの名コンビで当時のアイドルにも引っ張りだこだったビッグネームが勢ぞろいしていますし、なんと自作曲も入っていますが、注目なのはそれ以外。というのも、薬師丸さんの本質に迫ったというか、個性に寄り添った作品が入っているのです。
そう、それがモーツァルトのピアノ協奏曲に日本語詩をつけた「花のささやき」と、中田喜直先生が作曲した「寒椿、咲いた」「かぐやの里」。
合唱部だった薬師丸さんならでは、クラシックや歌曲の似合うこと。特に中田先生については「浜辺の歌」が今回のカバーアルバムでチョイスされているほどで、薬師丸さん自身小さい頃からお気に入りだったそうですが、星紀行ライブで披露されている「星は何処へ行くのでしょう」(作詞は伊集院静さん)と合わせて、その当時までの薬師丸ひろ子のイメージにぴったり。
当時のアイドル歌手とは一線を画した品格や教養といったらいいのでしょうか。美しい日本語を、美しい発声で歌うという行為を、ただ真摯に取り組む美しさよ。薬師丸さんの歌は時には一本調子のように言われたりますが、感情過多になることなく表現する日本人の美学そのもののような気がします。
昔の日本人ならできて当たり前のことだったのに、当時はダサイとか格好悪いとか言ってしなくなり、いつしか日本人なのにできなくなってしまったこと。今薬師丸さんのうたが再評価され、求められているのには、そのあたりとも関係あるように思えてなりません。
あと、忘れてはならないのが、この月には同じ松本さんのプロデュースで、松田聖子のアルバム「SUPREME」が出ているということ。聖子は1年ぶりのオリジナルアルバムですが。産休明けということで鳴り物入り、日本中から大注目を浴びた作品だったワケですが、ご存じの通りレコ大アルバム大賞を受賞した傑作。それと並んで、このアルバムが出たということに、松本さんの凄さを思い知らされます。
レコードには「不思議よセ・ラ・ヴィ」のライブバージョンのソノシートが特典で付いてたんですけど、アルバムコンセプトとは異なりますので収録はされませんよね。そういえば「天に星.地に花.」の12インチシングルも未CD化ですが、薬師丸さん自身、この間のコンサートでも「シングルじゃないんですけれども」と発言なさっていましたから、なかったことにされているのかも。
その他のアルバムも、87年発表で中島みゆき提供作「空港日誌」「未完成」が光る「星紀行」(3位)、女性シンガー・ソングライターでまとめ、みゆき「時代」、まりや「もう一度」、ター坊の「色彩都市」(今週発売の「 大貫妙子トリビュートアルバム
これらの再発でまた再評価が高まり、新たなファンが増えればと思います。
なお今年は偶然にも、1枚999円という廉価盤の「永遠のサントラBEST&MORE 999」シリーズで「 セーラー服と機関銃 オリジナル・サウンドトラック
また、残りのオリアルとしてはファンハウス時代、阿久悠さんの短編小説をCD化した98年の「-恋文-LOVE LETTER」ですが、ソニーからの再発を待ちたいところです。
個人的に、あのコンサート以来、インストのソングブックもよく聴いているのですが、楽曲の純然たるクオリティの高さを証明していてあらためて聴き惚れるほどですので、これらも再発されればなあと思います。
あ、懐かしさだけで言えばコロムビアから出た初めてのLPにしてアルバム初のオリコン1位「青春のメモワール」も聴いてみたかったりしますけど…。
(2013.12.16)