未発表の新曲を含む、豪華なリクエストベスト！

　この7月5日でレコードデビュー50周年を迎えたユーミンこと松任谷由実さん。

　直後には、コロナ禍をユーミンならではの死生観で総括したようなツアー「松任谷由実コンサートツアー 2021-2022 深海の街 THE CITY IN THE DEEP SEA」（9月24日にWOWOWで独占放送・配信が決定！）のファイナル公演を神戸で開催。
　個人的には、序盤の悲壮感に満ちた「ノートルダム」で早くも落涙。長年続けてきたビジュアライブが、ついに観客の視覚を超えて脳髄にまで投射する域に達したような、荒井時代からの“もののあはれ”が、肉体の生死という一つの終着点にたどり着いたような錯覚に陥ったことでした。
 
　また、今週の18日にはNHK-FMで8時間半にわたる生放送「今日は一日“ユーミン”三昧」がオンエア。コアなリスナーが多かったのか、「晩夏」「消灯飛行」「5cmの向う岸」「たとえあなたが去って行っても」など意外なリクエストTOP50の内容にいちいち膝を打ったものでしたが、さすがラジオから最初に火がついて人気を得ていったというユーミン。

　そういえば5月に行われた「Takara Leben Group presents 民放ラジオ99局キャンペーン ～WE LOVE RADIO松任谷由実 50th ANNIVERSARY ユーミンリクエストWEEK～」の結果はいかに…と、気もそぞろになっていたところに、タイムリーなニュースが飛び込んできました！
　その企画で寄せられた約2万通のリクエストのエピソードをもとにした、50周年記念のオールタイム・ベストアルバムの詳細が決定したというのです。
　「ユーミン万歳！～松任谷由実50周年記念ベストアルバム～」というタイトルにまずビックリしましたが、これも王室の献上品が下々へと普及した様を端的に表したようで納得ですよね。
 
　初回限定盤はAタイプがブルーレイ付きの「 ユーミン万歳!～松任谷由実50周年記念ベストアルバム～ ［3CD+Blu-ray Disc］＜初回限定盤A＞」で、BタイプがDVD付きの「 ユーミン万歳!～松任谷由実50周年記念ベストアルバム～ ［3CD+DVD］＜初回限定盤B＞」、通常盤はCDのみの「 ユーミン万歳!～松任谷由実50周年記念ベストアルバム～＜通常盤＞」という3形態でのリリースになるとのこと。
　ちなみにショップ別の先着購入特典も用意されていて、 Amazonはスペシャル映像視聴シリアルコード（ ポストカード（絵柄B）もあり）、 タワレコはポストカード（絵柄A）、 セブンネットショッピングはCDサイズステッカー（絵柄A）、 TSUTAYAはCDサイズステッカー（絵柄B）、 HMV はA6カレンダー（絵柄A）、 山野楽器はA6カレンダー（絵柄B）、 新星堂WonderGOOはA5クリアファイル（絵柄A）、 楽天ブックスはアクリルコースター（絵柄A）（ファミマ受取予約分は絵柄B）、 Joshin webなどその他一般店はポストカード（絵柄B）。さらに、お膝元の UNIVERSAL MUSIC STOREではA5クリアファイル（絵柄B）がもらえる上、8月7日まで300円クーポンプレゼント付き！となっているそうですので、特典優先か、割引優先か吟味の上早めのご予約を。
　
　CDは3枚組で、50年にちなみラジオスタッフ、ユーミンがリクエストから選考、厳選した50曲に、なんと未発表曲「Call me back」（現在の松任谷由実と、最新のAIで再現された荒井由実のボーカルとの初デュエットとのこと！）をプラスした全51曲を収録。
　CDに関してはジャケット（相変わらずゴージャスでスゴイですよね）と、リスナーからのエピソードを掲載した約80ページのブックレットを含め、3形態共通になるそうですが、初回盤は三方背ケース、３面デジパックの豪華仕様で、折り込み大型両面ポスター(620mmx560mm）付き。特典映像の内容は共通で「荒井由実×松任谷由実 ダイアローグ」と、「Call me back 」のミュージックビデオが収録されるようです。
　音源はグラミー賞エンジニアのGO HOTODAさんによる最新リマスタリングということですが、なんと一部の曲はずっとベスト盤を否定していたマンタさんが自らエディット＆リミックスしたといいますから、音的にも期待大です。
 
　気になるのはやはり選曲ですが、ユーミンの場合、リリースを心底後悔したという77年の「ALBUM」以降、レコードでのベスト盤を拒否し続けたのはよく知られたところ。特に長年アルファが勝手なコンピ盤乱発したことには業を煮やしていたようで、原盤を自らの元へと移すことになるワケですが、98年には、オリジナルアルバムのセールスに翳りが出たことも影響してか松任谷時代に限った初ベスト「Neue Musik」でベストアルバムを解禁。
　以降は、荒井時代も含んだ2001年の「sweet,bitter sweet～YUMING BALLAD BEST」、07年の四季ベスト「SEASONS COLOURS -春夏撰曲集-」（ こちらで紹介）と「SEASONS COLOURS -秋冬撰曲集-」（ こちらで紹介）。12年には40周年記念で女性の関係者が中心になって選曲した「日本の恋と、ユーミンと。」（ こちらで紹介）、18年にはそれと対になる自選集「ユーミンからの、恋のうた。」（ こちらで紹介）というように、ひと頃では考えられなかったようなものも含め、多種多様な切り口で発売されております。
 
　今回は初めての公募という形ですし、思い入れたっぷりのコアなリクエストということで、先のユーミン三昧のように苗場のリクエストコーナーみたいな要素も入るかと思いましたが、そこはみんなのユーミン。50周年記念で後世に遺すという意味でも、「真夏の夜の夢」から「青いエアメイル」まで、代表曲中心で王道といえる選曲となっています。
　前述のベスト盤に入っていなかったのは、「情熱に届かない～Don't Let Me Go」「5cmの向う岸」「消灯飛行」「ホライズンを追いかけて～L'aventure au désert」「星空の誘惑」、そして今回の中では最新曲となっている「宇宙図書館」あたりでしょうか。

　個人的には、ユーミン三昧が過去の2000年代以降の作品が皆無だったので、人類の脳内記憶はすべて宇宙にクラウドする真理を説いた「宇宙図書館」や、老いというそれまで避けていたテーマに真っ向から挑んだ大名曲「ダンスのように抱き寄せたい」が入っているのがウレシイ。
 
　いずれにしても全てのファンを満足させることは不可能ですし、また賛否両論が巻き起こるのではないかと思いますが、客観的に見てバランスの取れた内容ですし、ベスト盤は名刺代わりですからね。若い人たちがこれをきっかけにユーミンの作品に触れ、各アルバムへと進むことをファンの1人として応援したいと思います。
 
　なお、ユーミンのデビュー50周年は、このほかにも企画が目白押し。6月には女流作家6人がユーミンの名曲タイトルから書き下ろした中短篇を集めた小説集「 Yuming Tribute Stories」が刊行。12月には東京シティビューで「松任谷由実展（仮）」の開催が予定されています。
　そして過去よりも未来、ニューアルバムの制作と新たなツアーへの意欲を公言したユーミン。これからもさらなる活躍に期待する次第です。