ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1138
伊藤咲子 オリジナルアルバム復刻 6タイトル
ひまわり娘(UPCY-7824)・私のカレンダー(UPCY-7825)・乙女のワルツ(UPCY-7826)・青春(UPCY-7827)・おるごおる(UPCY-7828)・SLOW MOTION(UPCY-7829)
*2023.3.29発売、各¥1,650<税込>

サッコのオリアル6作が廉価で単品復刻!

 1974年4月、「ひまわり娘」でデビューしたひまわりのような明るい女の子、サッコこと伊藤咲子さん。
 花の中3トリオの人気が爆発した「スター誕生!」出身。歌唱力と推薦枠に恵まれ、マコ(森昌子)とヒロリン(岩崎宏美)の間に位置するスタ誕きっての実力派として鮮烈なデビューを飾った姿は今も鮮やかに覚えておりますが、明るくはつらつで、パンツが見えそで見えない黄色のミニで、一生懸命歌う様子は、歌が大好きで、歌うために生まれてきたような印象がありましたよね。
 
 あの当時、16才になり立てだったサッコも今年で65才、デビュー50周年に突入しますが、そんなタイミングで、なんと東芝時代のオリジナルアルバム6タイトル「 ひまわり娘」「 私のカレンダー」「 乙女のワルツ」「 青春 」「 おるごおる」「 SLOW MOTION」が単品復刻されることになりました!
 
 サッコのオリアルといえば、2011年のDVD付き10枚組BOX「伊藤咲子COMPLETE BOX」( こちらで紹介)ですべて紙ジャケ復刻済みですが、単品では2タイトルしかリリースされていなかったので、BOXを入手しなかった人には朗報でしょう。
 
 しかも往年のQ盤シリーズと同じ1,500円(税抜き)という廉価もウレシイ限りです。
 
 簡単にご紹介しておきますと、まずファーストアルバム「 ひまわり娘」はデビューから3カ月足らずの74年7月発売。
 ロンドン録音によるデビューシングル「ひまわり娘/オレンジの涙」以外は、すべて当時の最新ヒットを中心にしたカバー曲となっていて、70年代アイドル定番の構成なのですが、サッコの抜群の歌唱力と可能性を堪能できる選曲。
 浅田美代子の「しあわせの一番星」、フィンガー5の「恋のダイヤル6700」といったアイドルソングや、チューリップの「心の旅」をはじめ、井上陽水の「心もよう」、小坂明子「あなた」、チェリッシュ「恋の風車」もさることながら、秀逸なのはヒット曲でもないのにチョイスされた2曲。
 荒井由実の「きっと言える」は、デビューアルバム「ひこうき雲」のリードシングル。レコード会社が同じだった縁からでしょうが、サッコの解釈も素敵。もう1曲、シュキ&アビバの「愛情の花咲く樹」は、へドバ&ダビデの後釜を狙うように世界歌謡祭で入賞したデュオの日本語版で、作詞は阿久悠さん。シュキは「ひまわり娘」を作曲したシュキ・レヴィです。
 なお、このアルバムは単品としては、94年の東芝・音蔵シリーズ、2003年の紙ジャケ・必聴名盤シリーズ以来の復刻となっております。
 
 単品復刻は初となるセカンドアルバム「 私のカレンダー」は、74年12月リリース。
 
 同月に発売され、初のトップ10ヒットとなった第3弾「木枯しの二人/赤ちゃんみたいな女の子」を筆頭に、第2弾の「夢みる頃」や「ひまわり娘」というシングル曲を含んではいますが、組曲のインスト「プロローグ」を含め全曲がオリジナル。
 しかも、タイトル曲「私のカレンダー」を筆頭に1年12カ月の乙女チックなカレンダーというコンセプトで構成されていて、阿久悠+三木たかしというサッコの魅力を創ったゴールデンコンビの手腕がいかんなく発揮された傑作です。
 なお、今回復刻されるかどうか分かりませんが、封入されていたサッコのお天気カレンダーでは、固さが取れ、アイドルとして仕上がっていくチャーミングなビジュアルも楽しめますし、サッコの歌唱もまだ初々しくてアイドルのアルバムという観点では、コレがもっともオススメです。
 
 そしてデビュー2年目で頂点を極めるのが、75年10月発売のサードアルバム「 乙女のワルツ」。
 日本テレビ音楽祭では金の鳩賞、日本歌謡大賞では放送音楽賞に輝いた名曲「乙女のワルツ」(リプライズも収録)をはじめ、再収録となった「木枯らしの二人」や「青い麦」をフィーチャーしていますが、ここは阿久先生はもとより音楽職人・三木先生の独壇場。エルトン・ジョンの「ユア・ソング」を再構築したような「恋人」は換骨奪胎の極みですが、何よりサッコを手塩にかけ一流のシンガーに育てようという意気込みが痛いほど伝わってきます。
 それに応えようと懸命なサッコも気合い十分ですが、シングル曲はもう少しアレンジも歌唱も力が抜けていたらと思います。 確かに当時は昭和が50年という節目で昭和回帰のブームが起こっていましたし、阿久先生や渋谷ディレクターらオジさんたちはそこにサッコの活路を重ねようとしていたのかもしれませんが…。「青い麦」での青春歌謡への回帰にしても、ファン層にはノスタルジーとしては映らず、時代錯誤的な感じがしたのは事実ですからね。そのへん、久世光彦さんの「時間ですよ・昭和元年」の浅田美代子と同じで、結局大成功したのはオジさんたちと同世代のかまやつひろしということでも分かるでしょう。
 
 ちなみにこのアルバムは、2008年の名盤プレミアム・シリーズ以来の単品復刻となりますが、EMIミュージック・ジャパンがユニバーサル ミュージック合同会社と合併後の2013年には、アルバム2枚をセットで復刻した2 for 1シリーズの1作「ひまわり娘+乙女のワルツ」として再発されています。
 
 結局は翌76年、路線変更した「きみ可愛いね」が大ヒットし、紅白歌合戦にも初出場を果たすワケですが、人気絶頂の年にもかかわらず、出たアルバムはライブ盤「初恋~伊藤咲子 ライブ・オン・ステージ」と、ベスト盤「想い出のセンチメンタル・シティイ 伊藤咲子ベストコレクション」(96年に「伊藤咲子ベスト~ひまわり娘」と改題されCD化)で、オリアルが出なかったのが残念なところです。
 
 77年3月の「 青春 」は、シングル曲「青い鳥逃げても」以外はすべてカバー曲。A面は邦楽ですが、「四季の歌」「青春時代」「どうぞこのまま」「あなただけを」「赤い花、白い花」と、最新ヒットでも愛唱歌寄りのセレクションで歌唱力重視の選曲といえそう。
 B面は洋楽で、爆発的ヒットとなった「ビューティフル・サンデー」「フィーリング」を筆頭に、オリビア・ニュートン=ジョンの「カントリー・ロード」「ジョリーン」、実は和製ポップスだったというタニヤ・タッカーの「ハロー・ミスター・サンシャイン」、ジャニス・イアンの「ラブ・イズ・ブラインド」と、日本でヒットしていた洋楽のカバーがずらりと並び、レッツゴーヤング的な雰囲気。いずれにしても実力派歌手としてのアピールが感じられます。
 
 デビュー以来続いていた阿久悠+三木たかしコンビは、77年のシングル「何が私に起こったか」で解消。同じコンビが同時期にヒロリンに書いた「思秋期」のような世界観こそ、サッコが歌うべき路線ではなかったかと思ったことでしたが、78年からは制作陣を中里綴+和泉常寛コンビに変えて大人への脱皮を図ります。
 それが結実したのが、純然たるオリアルとしては3年ぶりとなった78年7月の「 おるごおる」。
 先行シングル「寒い夏/夢ごこち」を収録し、サッコ大ファンで知られる作家・高橋克彦さんも思い入れのあるというドラマチックな「つぶやきあつめ」がアレンジを変えてリカットされますが、トータル的な完成度が高いアルバム。女性像は、阿久さんが築き上げてきたサッコのイメージとは違っていますが、当時の歌謡曲がこぞって傾倒したニューミュージックより半歩先を行くシティ歌謡ポップス的なサウンドでまとめられています。
 さすが後にオメガトライブサウンドを支える和泉さん、そういう意味では今こそ再評価されるアルバムではないでしょうか。
  
 そして最後は、阿久さんもいた事務所を離れて間を置いた後、82年5月にリリースした「 SLOW MOTION」。
  カムバック的なプロモーションだった映画のイメージソング「リトル・プリンス/恋のスリップ・アウェイ」と、リードシングル「男嫌い/まちがい電話」という2枚のシングルを収録。同じ東芝でも心機一転、イーストワールドレーベルからの発売となりましたが、“アダルト・シティ・ミュージックでイメージチェンジ”という触れ込み通り、アーバンシティなアダルトポップスの女性ボーカリストという風情です。
  
 というサッコのオリアル復刻。オリアル未収録のシングル曲もたくさんありますが、サッコの場合、CDベストは最初の2枚組にいわくつきの流れがあっため、現行商品では、ベスト盤「 ゴールデン☆ベスト 伊藤咲子 」や「 エッセンシャル・ベスト 1200 伊藤咲子」ではすべてを補完できず、 LABEL ON DEMAND(旧MEG-CD)の復刻シングル(CD-R盤)でそろえる必要がありますのでご注意ください。
 
 

(2023.1.13)

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