45周年で最大スケールの提供曲BOX！

　1977年に、あの竹内まりやさんや安部恭弘さんも参加したアルバム「MARI & REDSTRIPES」でデビューしたシンガー・ソングライター、杉真理さん。
　以来、いくら年を重ねようが“永遠のポップス少年”というイメージのもと、ソングライターやプロデューサーとしても手腕を発揮。職人気質でいろんなアーティストに極上のポップスを提供してきましたが、今年でデビュー45周年。
 
　ということで、ソニーミュージックのotonanoでは今夏、“ソングライター・杉真理”に着目したアンソロジーの企画が発表され、あなたの好きな「杉真理提供曲」の投票が行われていましたが、このたび、 その結果をもとにご自身が選曲されたしたCD-BOX「 Mr. Melody～杉真理提供曲集～ 」のリリースがアナウンスされました！
 
　これまで、杉さんの提供曲をまとめたCDとしては、2005年に出た自身のコンプリート・シングル・コレクション＆自選提供曲集「GOLDEN☆BEST／杉真理＆フレンズ 」（ こちらで紹介）や、2016年の「杉真理WORKS」（ こちらで紹介）がありましたが、今回は6枚組という最大のスケール。300曲以上にのぼる提供曲からセレクトされた116曲が収録されております。
 
　既に公開されている収録曲を見ると、なるほど納得の内容。ディスクの構成も含め、バランスを取りつつも、杉さんが重きを置いた活動がしっかりと重視されまとめられているように思います。
　一般的に最も有名な杉さんの提供曲は、石川さゆりがCMソングで覆面歌手として歌って以来、竹内まりや、ゴスペラーズ、ハナレグミ、田島貴男、浜崎貴司ら多くのアーティストにカバーされ続けている「ウイスキーが、お好きでしょ」だと思いますが、特筆すべきなのは、今は亡き歌姫2人の収録でしょう。
 
　まず、最大の目玉と言えるのが、SAYAKA（神田沙也加）さんの幻のデビュー曲「パラソルと約束」の初CD化。
　2001年、グリコ・アイスの実で衝撃のCMデビューを飾ったSAYAKAさん。その際にオンエアされたCMソングは、聖子の全盛期を彷彿とさせるサウンドと歌声で、聖子ファンからも大注目を集めましたが、杉さんの手によるものだと分かったときには思わず膝を打ったことでした。杉さんといえば、お母さんの聖子とは同じCBS・ソニーのレーベルメイトで、楽曲提供のみならずデュエットもした間柄ですし、キラキラの王道ポップスは聖子譲りの歌声を持つSAYAKAさんにもぴったりでしたからね。
　しかし、レコーディングされたものの結局リリースされることはなく、翌年の歌手デビューの際には路線変更がなされており、長年お蔵入りになったままだったのですね。オンエア時にリカットされていれば、実際のデビューシングル「ever since」をはるかに超える大ヒットになっていたと思いますが、今このタイミングで日の目を見ることはいろんな意味で複雑な思いがします。
 
　もう１人は、ポップンロールコンビとして、杉さんにとってこの上ない音楽上のパートナーだった須藤薫さん。かつて同じCBS・ソニーに所属し、昔から仲良しだったこのコンビは、ワンダフルムーン・マイナス松任谷由実としてもおなじみですが、今回はDisc6が薫さん特集として編まれております。
　ワンダフルムーン・トリオが勢ぞろいした「The Blackhole」を筆頭に、「涙のステップ」「Rainy Day Hello 」や「心の中のプラネタリウム」（ こちらで紹介）といった80年代の名曲群、コンビとして活動を再開した98年以降のナンバーまで。明るくって楽しいのに、どこか切なくってほろ苦い。青春のきらめきにも似た薫さんと杉さんのポップンロールはいつまで経っても色あせることがないのを実感します。
 
　青春ついでに個人的な思い出をたどりますと、杉さんの名前を初めて意識したのはやはりアイドルからで、いっとう最初が80年に井上望が歌った「シャドー・ボーイ」でした。
　あの歌のとてもキャッチーだけど、凝ってて洒脱なメロディーラインが大好きになり、“まさみち”と読むとは知らず「丸山圭子とコンビを組んでる“すぎ・まり”ってどんな女の人だろーね？」「日産のCMソングを歌っていて、竹内まりやとは親友らしーよ」などとクラスメイトと話し合ったものです。
　その直後に耳にした百恵ちゃんの引退記念シングル「一恵」のカップリング「想い出のストロベリーフィールズ」（川島なお美さんもカバーしています）も好みでしたね。
 
　やがて、“すぎ・まさみち”というホリプロ所属の男性アーティストであることが解明し、本格的に意識するようになったのは、やはりナイアガラ・トライアングルvol.2から。上質なメロディーライン、ポップなサウンド、美しくも楽しいコーラスワークなど、３人の中で最もキャッチーでポピュラー性があったのは杉さんでしたからね。
 
　後は聖子とのデュエットや、ユーミン、須藤薫ちゃんとのワンダフルムーンという流れで、提供曲を細かくチェックし始めるのですが、ファンになる決定打となったのは、聖子の「ピーチ・シャーベット」、同じホリプロの郁恵ちゃんがカバーし紅白でも歌った「悲しきクラクション」、そしてハイ・ファイ・セットのCBS・ソニー移籍第１弾「素直になりたい」でした。
 
　「素直になりたい」は今回のあなたの好きな「杉真理提供曲」の投票でも堂々１位を獲得したナンバーとなりましたが、このヒットで杉さんはハイ・ファイ・セットのメイン作家となりましたし、とっても提供しがいのあるアーティストだったと思います。一連の提供曲はユーミン作品とセットになったアンソロジー「 GOLDEN☆BEST/ハイ・ファイ・セット 荒井由実・松任谷由実・杉真理作品集」としてリリースされロングセラーを記録しているほどですので、今回のBOXでイイと思った方は完成度の高い他のハイ・ファイ作品も追求していただければと思います。
　個人的にも、杉さんの曲で最も好きな１曲はと聴かれれば、迷わずハイ・ファイ・セットの「Boy friend」と答えるほどなのです。
 
　その他、ナイアガラファミリーとして太田裕美さんとコントをやったり、ホリプロのロック＆ニューミュージック部門、カレイドスコープに河合夕子ちゃんとともに在籍していたことなど、懐かしい思い出は尽きませんし、近年では、ラジオで聴いた由紀さおりさんの「人生という旅」が気に入って、作者のクレジットを全く知らずにシングルを買い、杉さん作曲であることにひとりごちたこともありました。
 
　と、自分語りを延々としてしまうほど、杉さんのポップスに彩られた素晴らしい青春時代を送ってきたことを実感。
　この45周年のお祝いBOXが、そんな風に自分の軌跡を振り返る機会であるとともに、これから先の人生を生きていく糧にもなるという人はきっと多いような気がしますが、ワタシもその1人として、このBOXを携えてまた明日から続く人生を歩いて行きたいと思います。
　♪人生という旅の話し ア また面白い（作詞・きたやまおさむ）などと、大好きな杉真理メロディーを口ずさみながら…。