45周年で45曲収録、テーマ別の自選ベスト！

　一昨年から昨年にかけて自己最長、最多本数の超ロングランツアー「松任谷由実コンサートツアー 宇宙図書館 2016-2017」を敢行したかと思えば、その興奮もまだ覚めやらぬ昨年暮れにはシリーズ第3弾となる帝劇公演「ユーミン×帝劇vol.3　朝陽の中で微笑んで」を成功させるなど、精力的に活動し続けるユーミンこと松任谷由実さん。
 
　さらに今年でデビュー45周年ということもあり、来月にはユーミンファミリーの武部聡志さんプロデュースのアルバムコンセプトライブにして「ひこうき雲」を再現するという一夜限りのプレミアムコンサート「 SONGS ＆ FRIENDS 」が開催されることも決定しておりますが、魔女か！スーパー・レディ！かと謳われたあのユーミンも幾星霜の時を経て、この1月の誕生日で64歳になられたんですよね。
　ここ数年、なんだかまた自信を取り戻したようにお見受けしておりますが、そこからのパワフルでポジティブなお姿は、若い時とはまた違って、我々ファンにも加齢の良さを教えてくれているような感じがいたします。
 
　そんな永遠のユーミンですが、恒例の苗場コンサート「SURF&SNOW in Naeba vol.38」がスタートしたタイミングで、またまたうれしいサプライズが発表されました！
 
　そう、2012年の40周年記念ベストアルバム「日本の恋と、ユーミンと。」（ こちらで紹介）の続編であり、二部作完結編という3枚組自選ベストアルバム「ユーミンからの、恋のうた。」が今春リリースされるというのです。
 
　しかも驚くなかれ、このベスト盤の内容に合わせ、ユーミン史上初のベスト選曲によるアリーナツアーも開催が決定し、CDにはチケット最速先行予約シリアルコードが封入されるのだとか！
 
　ちなみに発売形態は、CD3枚と映像集「観るベスト YUMING SUPER PERFORMANCE 2」のBlu-ray、ユーミン直筆スペシャルライナーノーツが入った108ページものブックレットがセットになった初回限定盤A「 ユーミンからの、恋のうた。(初回限定盤A)(3CD+Blu-ray) 」。
　次にAの映像集がDVDバージョンの初回限定盤B「 ユーミンからの、恋のうた。(初回限定盤B)(3CD+DVD) 」。そして映像集が付かない通常盤「 ユーミンからの、恋のうた。(通常盤)(3CD) 」の３タイプとなっております。
 
　CDの方はユーミン自身が今の時代にこそ聴いてほしい45曲を伝えたい３つのテーマでくくったという、初の自選ベスト。情報解禁に当たり公開された自筆メッセージの通り、DISC1が“Pure Eyes　純粋さを、捨てない。”、DISC2が“Urban Cowgirl “私”で、生きてゆく。”、そしてDISC3が“Mystic Journey　旅を、やめない。”という、ユーミンらしいテーマで構成されていますが、気になる選曲はファーストアルバム「 ひこうき雲 」から最新作「 宇宙図書館 」まで、45年の楽曲の中から「日本の恋と、ユーミンと。」との重複を避けてセレクトされています。
　代表曲で編まれた前作とは打って変わって、ベスト盤初収録となるナンバーもテンコ盛りですから、コアなファンであればあるほど喜ぶシブイ選曲といえそうですね。 
 
　収録曲45曲のリストをざっと見たところ、選曲元となった38枚のオリジナルアルバムでは「紅雀」「流線型’80」「OLIVE」「VOYAGER」「DAWN PURPLE」「FROZEN ROSES」が漏れているように思いますが、45年のキャリアを網羅した裏ベストと言って差し支えない内容ではないでしょうか。
　前のベストで代表曲を総ざらえされた後とはいえ、そこは70年代から第一線を走り続けてきたマルスの象徴・ユーミン。シングルＡ面はドラマ主題歌となった「輪舞曲」だけのようですが、アルバム曲であっても、長崎・五島列島の奈留高校校歌として書いた「瞳を閉じて」をはじめ、多くの人に知られ、愛された名曲が多いユーミンのこと。一般の人にも耳馴染みがあるであろうナンバーもたくさん入っております。
 
　第3次ユーミンブームからは、アルバムの1曲なのに大型タイアップが付くのが当たり前になっていますが、今回の選曲の中では「オレたちひょうきん族」のエンディングテーマ「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」やドラマ主題歌の「思い出に間にあいたくて」「砂の惑星」、映画主題歌の「Midnight Scarecrow」、CMソングに起用された「TUXEDO RAIN」「満月のフォーチュン」「無限の中の一度」「Cowgirl Blues」「ただわけもなく」「AVALON」がそれに当たります。
　また、ユーミンの場合、レジェンド化したゆえに過去の名曲にスポットが当たることも日常茶飯事ですが、今回では30年後にCMソングに起用された「きっと言える」や、岩手県の花巻空港のイメージソングとなった「緑の町に舞い降りて」などがそうですね。
 
　コアなファンにとっては、単曲処理されたアウトロで聴ける「オールマイティー」の収録を喜ぶ人が多そうですし、シングルで出たものは「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」がシングルミックスなのか、「Midnight Scarecrow」がコーラスなしのシングルバージョンで入るのか、そういうところも気になるポイントです。
 
　かつてはベスト盤のリリースを頑なに拒否し、アルファから数多出た非公認ベストはもとより、自分がOKを出してしまったベストさえ否定していたユーミンですから、ファンからすれば98年に封印が解かれて以来、新たなベストが3年から5年のインターバルでコンスタントに出ることに、不満を持っている人も多いとか。
　まして、EMIがユニバーサルに吸収されてからは、同じベストでも複数仕様でのリリースだったり、後で一部変更の記念盤が出たりしておりますからね。
 
　しかし、常々、自分の曲がいつの日か“詠み人知らず”になるのが目標というユーミンでありますから、個人的にはベスト盤のリリースは大きな意味を持つと思っております。
　だって、こういうベストこそリアルタイムを知らない若い世代に聴き継がれていくアイテムになるワケで、自選による隠れた名曲集といえる今回のベストは特に詠み人知らずプロジェクトのスタートと解釈することも可能ですから。これを機に、ヒット曲では測ることができなかったユーミンの真髄に触れてオリジナルアルバム（ こちらで紹介）へと進む人が増え、また新たな層へと浸透していくことを願っています。
 
　とはいえ、ユーミンの旧譜でいつも言及されるのはシングルの音源。アルファのおかげで荒井時代は「YUMING SINGLES 1972-1976」としてまとめられていますが、EMIからユニバーサルの松任谷時代はシングル曲を網羅したベストは一切リリースなし。
　いまだに89年のシングルCD化企画「Yuming Sweets」シリーズをはじめ、オリジナルのシングルCDでしか聴けないナンバーやシングルバージョン、別ミックスが多々ありますから。今後もコンプリートなシングルAB面コレクションをリクエストし続けてまいりたいと思います…。
 
　なお、今回のベストともにこの前にライブ映像集「 松任谷由実CONCERT TOUR 2016-2017 宇宙図書館 (仮)[Blu-ray] 」「 松任谷由実CONCERT TOUR 2016-2017 宇宙図書館 (仮)[DVD] 」も同時発売されるとのこと。
　このツアーは都合3回拝見しましたが、バブリーな頃とは違う意味での贅沢さがふんだんに施された演出でしたので、ライブを見ていない人にこそオススメしたいと思います。