3カ月連続で70年代のアルバム復刻！

　ユーミンがデビュー50周年ならマユミティも50周年。ということで、デビュー記念日の10月21日には、50年の軌跡をまとめた4枚組のベストアルバム「Mayumi Itsuwa Premium best -HISTORY-」（ こちらで紹介）が発売されたばかりの五輪真弓さん。
 
　1972年のデビュー以来、女性シンガー・ソングライターの先駆けであり、アルバムアーティストとして知られていますが、初期70年代のオリアルで現在カタログで生きているCDは、悲しいかな、2013年に名盤復刻シリーズにラインアップされたデビューアルバム「 少女」のみ。
　よって、CD選書が廃盤となってから長いことアルバム復刻が待たれていましたが、10年の時を経てようやく「少女」に続く復刻企画「MAYUMI ITSUWA 70‘s Album All Titles Release」がスタートします！
 
　なんと、ライブ盤を含む70年代のアルバム10タイトルをデジタルリマスタリングし、３カ月にわたりBlu-spec CD2で発売するとともにハイレゾ配信（通常音源は2013年より順次配信中）。
　今回はCD選書化されていなかったものも含んでいますし、特に人気の高い2作はアナログ盤でも発売するという、50周年にふさわしい大型企画となっております。
　ちなみに五輪さんの場合、紙ジャケBOXブームが続く2009年にはオーダーメイドファクトリーで70年代のアルバムBOX「MAYUMI PREMIUM 1972-1979」が企画されたものの、リクエストが集まらず頓挫してしまっていましたので、まさにファン待望のパッケージリリースといえるでしょう。
 
　さて、今回対象となる五輪さんの70年代アルバムといえば、洋楽ファンも唸らせたフォーキー＆ソフトロック路線から、大衆的なニューミュージック歌謡シャンソンへとシフトしていった、「恋人よ」以前の作品群。
　第1弾は「 風のない世界」「 時をみつめて」「 Mayumity -うつろな愛-」の3タイトルですが、せっかくの機会ですので、既にBlu-spec CD2復刻＆ハイレゾ配信済みのファーストから簡単にご紹介しておきましょう。
 
　高校生の頃から天才少女と呼ばれるも、数多のデビューの誘いを断っていたという五輪さん。ようやくデビューを飾ったのは72年10月。事務所は、森山良子さんを手がけた金子洋明さんのミュージカル・ステーション。レコード会社はCBS・ソニーで、酒井政利さんと並ぶ鬼才・中曽根皓二さんが担当。しかもプライベートレーベル・UMIを立ち上げてもらってのデビューと、貴公子・たくろうも真っ青の破格の扱いでした。
　そんな鳴り物入りのデビューアルバム「 少女」は、なんといきなりアメリカ・ロサンジェルス録音。1ドル＝360円の時代に、かのキャロル・キングがバッキングということも話題を呼び、大ヒットしたのはご存じの通りです。　　　　　　
 
　和製キャロル・キングとして支持を集める中、翌73年7月にリリースされたのがセカンドの「 風のない世界」。
　ドアップのジャケットに恐れをなしてしまいそうですが、これまたキャロル・キングがゲスト参加したアメリカ録音盤。スマッシュヒットしたCMソング「煙草のけむり」を収録し、90年代後半からのソフトロックのブーム時には一気に再評価が進んだアルバムとしてもおなじみです。
　みずみずしい感性がほとばしる詞や、既に完成されているボーカル、丁寧に作られたサウンドは、和製キャロル・キングの称号そのものという感じですが、シンガー･ソングライターとしての個性というか感性は、本家を超えているのかもと思わされます。
 
　74年7月の「 時をみつめて」もロサンジェルス録音で、今度はザ・セクションのメンバーが勢ぞろいし、ラリー・カールトンも参加。豪華ではありますが、海外レコーディングは話題性やハクを付けるために行ったのではないことがわかります。
　なお、このメンツをゲストに呼んで行ったジァンジァンのライブが実況録音盤「本当のことを言えば」（第3期リリース）として残されていますが、ひとつの世界をスタジオレコーディングで完成させた後、それをライブレコーディングで披露する、というのも初期の五輪さんのパターンだったように思います。
　いずれにしても世界で一流とされるミュージシャンと臆することなく渡り合うなんて、20代前半のヤングレディーにできることじゃないですよね。ましてあの時代にあって。
 
　続いて、75年10月に発表されたのは、オリジナルアルバムとしては4作目にして初の国内制作盤となる「 Mayumity -うつろな愛-」。“八王子の山ごもり生活”という触れ込みで、一軒家の自宅スタジオでレコーディングされた作品ということで、ナチュラルなムードが漂う会心作です。
　細野晴臣さんや鈴木茂さんらも参加。いかにもティンパンな感じのサウンドに仕上がっていますが、そのせいもあって再評価が高くなっており、今回はかのバーニー・グランドマンのカッティングによるアナログ盤「 Mayumity -うつろな愛-<LPレコード>」でもリリースされます。
　ちなみに、この後、フランスCBSの目に留まりフランスデビューも果たす五輪さんですが、そのきっかけとなったのがこのアルバムなのだとか。フランスでの展開がなければ、「さよならだけは言わないで」での路線変更も、「恋人よ」の大ヒットも生まれなかったでしょうから、そういう意味でも重要作といえると思います。
 
　という1期3タイトルですが、この期間、時系列でのリリースでは「冬ざれた街」（1974年3月）、「本当のことを言えば」（1975年3月）、87年以来のCD化となる「The SHOW -Best Concert Album'75」（1975年12月）という3枚のライブ盤が出ておりますが、これらは第3期、3月22日発売の発売だそうです。