ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1143
中森明菜 ワーナーイヤーズ・全アルバム復刻シリーズ 5
BEST +2(WPCL-13472~3)・不思議(WPCL-13474~5)・CRIMSON +1(WPCL-13476~7)
*2023.5.1発売、各¥2,750<税込>
※5枚組完全生産限定「BEST COMPLETE BOX」(WPZL-32050~4、¥11,550<税込>)、アナログ盤「BEST」(WPJL-10182~3、¥5,940<税込>)も同時発売!

異色作を含む第5弾、ベストBOXも!

 昨夏、デビュー40周年を迎え再始動宣言をしてから半年。いまだ新しいファンクラブの立ち上げぐらいしか目立ったトピックのない中森明菜さん。
 そんな中にあって続行されているのが、古巣のワーナーによって進められている記念リリース企画「中森明菜デビュー40周年記念 ワーナーイヤーズ・全アルバム復刻シリーズ」(第1弾は こちら、第2弾は こちら、第3弾は こちら、第4弾は こちらで紹介)。

 このシリーズは、ワーナー時代のオリジナルアルバム14タイトル、ベストアルバム4タイトル、ミニアルバム5タイトルを、約2年にわたって再発するというビッグな企画ですが、第5弾「 BEST (+2) 【オリジナル・カラオケ付】<2023ラッカーマスターサウンド> 」「 不思議 【オリジナル・カラオケ付】<2023ラッカーマスターサウンド>」「 CRIMSON (+1) 【オリジナル・カラオケ付】<2023ラッカーマスターサウンド>」はデビュー41周年の記念日にリリースとなります!
 
 まずは86年4月リリース、「 BEST (+2) 【オリジナル・カラオケ付】<2023ラッカーマスターサウンド> 」は明菜のベストとしては2枚目、シリーズとしては第1作となるシングルA面コレクション。すなわちデビュー曲「スローモーション」から13枚目のシングル「SOLITUDE」まで、全13枚のA面曲が収録されていますが、発売順ではないのが新鮮です。
 前年の「ミ・アモーレ〔Meu amor e…〕」でレコード大賞に輝き、アイドルの枠を超え押しも押されもしないトップスターとなった明菜のモニュメント。今思うと、聖子不在で孤高の女王として君臨する明菜時代のプロローグという感じもしますし、この先の展開を思うだに、明菜は聖子というバランサーをなくしたことで孤高性を高めざるを得なかったのかもしれないという思いを強くします。
 
 いずれにしても再発を繰り返してきたCDですし、近年も紙ジャケ限定盤のほか、2018年にはプラケースの標準仕様CD、2019年にはハイレゾCDと、パッケージ的な希少感はありませんが、今回のシリーズはラッカーマスターサウンドでファン待望の全曲オリジナル・カラオケ付き。解説など読み物も充実しているにもかかわらず、2枚組で3,000円を切る廉価も魅力となっております。
 よって薄いファンでも必携の1枚。昭和ポップス人気で最近ファンになった若い人にも手に取りやすいタイトルではないかと思います。
 なお今回、CDにはアルバム未収録のシングルB面曲「椿姫ジュリアーナ」「AGAIN」を収録。さらに高音質アナログ盤の2枚組(カラーレコード仕様)「 BEST<完全生産限定盤/カラーレコード>」としても発売。おまけに、LPとカセットテープとCDの3形態だったオリジナルリリースに倣うように、2CD+2LP+CTの5枚組による「 BEST COMPLETE BOX [2CD+2LP+Cassette]<完全生産限定盤>」も同時発売になるとか! 特典だったポスターが折り畳み封入されているそうですし、「「スローモーション」&「はじめまして」BOX」( こちらで紹介)と同様、完全生産限定盤のコレクターズアイテムになるでしょうから、早めの予約をオススメしますぞ!
 
 続いては86年8月リリース、大きな物議を醸したセルフプロデュース作「 不思議 【オリジナル・カラオケ付】<2023ラッカーマスターサウンド>」。以前からあったサウンド志向といいますか、サウンドとボーカルの融合を試みていた明菜にとって、ついにボーカルのサウンド化を実現させることができた異色作です。
 トップアーティストの座に就いたとはいえ、まだ「明菜ちゃん」というアイドル歌手の一面を有する存在でありながら、こういう実験的なコンセプトアルバムを押し通すことができたのは、やはり歌謡界の頂点を極めたからこそでしょう。
 レーベルメイトだったEUROXが強力にサポートしたほか、吉田美奈子や、当時はサンディー&ザ・サンセッツだったSANDIIと久保田麻琴ら、この時期の明菜の世界観を構築していたアーティストが参加。幾重にも分かれた精神世界の階層をなぞってゆくようなサウンドの影に、ユッコシンドロームがあるといえば穿ちすぎでしょうが、この作品で見せた退廃的なオカルトの雰囲気は、その後の明菜に常につきまとっていったように思います。
 
 そして86年12月リリース、今回のラストを飾る「 CRIMSON (+1) 【オリジナル・カラオケ付】<2023ラッカーマスターサウンド>」。
 バブル経済の下、すべてがデコラティブにエスカレートしていった時代。「不思議」のように、自身が目指すものに妥協なくアグレッシブに取り組む姿勢は、今に続く明菜のパブリックイメージのような気がしますが、「CRIMSON」もサウンドとボーカルの融合を目指してはいてもそのベクトルは真逆で、明菜の素顔が垣間見えるような等身大のアルバムに仕上がっています。
 それは、竹内まりや&小林明子を軸に女流作家だけでまとめられているのも一因でしょうが、ジャケットも含め、古風で一途な性格の明菜でしか成立し得ない、まさにフェミニンな世界。
 かの御大の問題発言のせいで妄信的な取り巻きたちから攻撃された曲もありましたが、明菜が完成させたウイスパー唱法は心のひだをなぞるように魅力的。
 聖子との対立構図のせいか、メロウでポップな世界観は意図的に避けてきた感のある明菜ではありますが、このアルバムでの明菜こそ、リアル明菜といいますか、奥ゆかしくてチャーミングな本質がにじみ出ていると思っております。もちろん個人的感想ですがね。

 ちなみに、ボーナストラックとしては、竹内まりや作品「ミック・ジャガーに微笑みを」のオリジナルバージョンが収録されるとのこと。
 このアルバム、まりや効果か、なぜかシティポップ扱いされ始めたようですが、どんな形でも再び脚光を浴び、再評価を得るのは、アーティストのファンのみならず、旧譜フリークにとっても喜ばしいことだと思っておりますので、今後もいろんなアーティストのいろんなアルバムが再注目を集めることを願っております。
 
 

(2023.2.27)

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