ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1020
河合奈保子 SACDハイブリッド盤 8タイトル<タワーレコード限定>
2022.11.23発売…スカイ・パーク(TWSA-1131)・サマー・デリカシー(TWSA-1132)・スターダスト・ガーデン-千・年・庭・園-  +1(TWSA-1133)・スカーレット +4(TWSA-1134)
2023.1.25発売…LIVE +5(TWSA-1135)・NAOKO IN CONCERT +2(TWSA-1136)・ブリリアント<レディ奈保子 イン・コンサート> +2(TWSA-1137)・NAOKO THANKSGIVING PARTY(TWSA-1138~9)※
*各¥4,180<税込> ※のみ2枚組¥5,940<税込>

 1年ぶりのSACD続編はオリアル&ライブ!

 すっかりおなじみ、タワレコ限定のSACDハイブリッド復刻。今回は、荻野目洋子&河合奈保子の10タイトル(荻野目洋子2タイトルは こちらで紹介)ということですが、カナリーガールこと河合奈保子さんは昨年出た8タイトル( こちらで紹介)の続編で、今回も8タイトル。
 
 2回に分けてのリリースで、まず9月にオリアル4タイトル「 スカイ・パーク<タワーレコード限定/完全限定盤>」「 サマー・デリカシー<タワーレコード限定/完全限定盤>」「 スターダスト・ガーデン-千・年・庭・園- (+1)<タワーレコード限定/完全限定盤>」「 スカーレット (+4)<タワーレコード限定/完全限定盤>」、来年1月にライブ盤4タイトル「 LIVE (+5)<タワーレコード限定/完全限定盤>」「 NAOKO IN CONCERT (+2)<タワーレコード限定/完全限定盤>」「 ブリリアント<レディ奈保子 イン・コンサート> (+2)<タワーレコード限定/完全限定盤>」「 NAOKO THANKSGIVING PARTY<タワーレコード限定/完全限定盤>」とが出るとのことです。
 
 簡単にご紹介しておきますと、まずオリアルの「 スカイ・パーク<タワーレコード限定/完全限定盤>」は83年発表。
 
 デビュー以来、70年代的な職業作家によるアイドルポップスを展開してきた奈保子さんですが、前年の竹内まりや&来生姉弟作品を起用したあたりから、より洗練されたアイドルポップスの追求と自然体アーティストっぽい流れの両輪操業へ。その象徴といえるのが、筒美京平作品と石川優子作品を半分ずつ収録したこのアルバムです。全曲大村雅朗アレンジによって、上品な統一感が保たれています。
 ちなみに同日発売のシングル「エスカレーション」では、ハードで大胆なイメチェンを図り大成功するのですが、ここではまだその片鱗を見せておりません。その後は、メイン作詞家が売野雅勇となり、ご本人のキャラとはちょっと乖離した主体的な女性像がメインになっていくのですが、キャラも含め資質的には石川優子路線が最も合っていたような気がします。
 
 実際、84年になると初期の天真爛漫さはすっかりなりを潜め、アダルトで高度なシティポップスが基本となる奈保子さん。
 「 サマー・デリカシー<タワーレコード限定/完全限定盤>」は八神純子作品が半分、来生姉弟が半分という構成となりますが、石川優子、八神純子といったヤマハのアーティストみたいな活動こそ、この当時のご本人が目指したかった方向性ではなかったかと思います。
 しかし、この時点ではそうはならなかった…。やはり売野さんがメイン作詞家となってしまったことが、シンガー・河合奈保子にとっての運命の分かれ目でしたね。
 
 85年の「 スターダスト・ガーデン-千・年・庭・園- (+1)<タワーレコード限定/完全限定盤>」は、売野+筒美コンビによる全曲オリジナル「さよなら物語」に続く第2弾。ヨーロッパを舞台にアダルトなテクノ系ヨーロピアンポップスという分かりやすい世界観を展開した前作に比べると、サウンドを含めて茫洋な印象ですが、それは売野マジックの難解さが際立ったせいかもしれません。
 壮大なスケールの詞世界なのですが、それが実際の宇宙なのか、胸の中に広がる心象風景なのか、奈保子さん自身もつかみ切れていなかったのかも。つかみどころがないのは、アレンジを萩田光雄、若草恵、鷺巣詩郎、新川博といった面々で分担したことも大きかったように思いますが、SACDで聴けば、当時とはまた違った印象が持てるような気もします。
 なお、最高にグルーヴィーな同時発売のシングル「ジェラス・トレイン」は未収録ですが、ボーナストラックとして、同時発売のビデオのみに収録されていた売野+筒美コンビによる英語曲「スターダスト・イン・ユア・アイズ」が収録されております。
 
 そしてジャケットにも驚く86年の「 スカーレット (+4)<タワーレコード限定/完全限定盤>」は、初の全作曲オリジナルアルバム。そう、シンガー・ソングライター河合奈保子としての第一歩です。ここからは「ハーフムーン・セレナーデ」をシングルカットし、紅白でもピアノ弾き語り歌うなど、アイドルからアーティストへと着実にキャリアアップ。松田聖子のセルフ時代にも大きな影響を与えたのではないかと思っていますが、、作詞は吉元由美さんだったものの売野さんが総合プロデュースという立場で関わっていったのが、個人的に残念でした。
 毎度申しておりますが、歌手・河合奈保子と作詞家・売野雅勇との相性は良くなかったと思っておりますから、やはり「エスカレーション」が運命の分かれ目だったと言わざるを得ません。自身の思いを表現することが身上のシンガー・ソングライターであるならば、なおさらだという気がしますのでね。
 シングル曲でいえば「ストロー・タッチの恋」や「微風のメロディー」のような、インパクトは弱いけれども、河合奈保子のナチュラルな本質を生かしたナンバーを基本に貫いていれば、彼女の実績や楽曲、存在感などが実際より過小評価されることはなかったような気がしています。 
 
 そしてライブアルバム4タイトルは、2009年のライブBOX「NAOKO LIVE PREMIUM」で初CD化され、2019年にタワーレコード限定で紙ジャケ復刻( こちらで紹介)されたものと同一。今回も3タイトルはカセットテープのみに収録された貴重音源もボーナストラックとして追加収録されております。
 
 まず、「 LIVE (+5)<タワーレコード限定/完全限定盤>」は初のライブ盤で、デビューからわずか4カ月後の80年10月14日、東京・芝郵便貯金ホールで行われたファーストコンサート「カナリーコンサートPart1」の模様を収録。
 初のベストテン入りを果たした第2弾シングル「ヤング・ボーイ」を筆頭に、竹内まりやの「不思議なピーチパイ」や赤い鳥の「翼をください」といった大好きだったという曲を、心を込めて歌うカナリーガール。カンツォーネメドレーや、「Can't Stop The Music」「二人だけのデート」などの洋楽にも挑戦していて、レッツゴーヤングみたいな雰囲気も漂っています。
 とにかく真面目で一生懸命な性格が伝わってきますが、数多のアイドルのリサイタルを手がけてきた芸映プロならでは、久米明ナレーションでモノミュージカル的な感動の朗読劇「パパとふたりだけにして~喘息で逝った娘の記録より~」の模様も堪能できます。これは楽曲にも言えることなのですが、80年代のニューエイジ感覚ではなく全般的にザ・コロムビアという感じの70年代アイドルを引きずった印象で、それはそれでたまらない魅力ですよね。
 
 続く「 NAOKO IN CONCERT (+2)<タワーレコード限定/完全限定盤>」は、82年1月6日、日本青年館ホールにて行われた「カナリーコンサートPart2」の実況録音盤。前年レッツヤンの舞台の奈落に転落し、コンサートをキャンセルしてしまったカナリーガールの振り替え公演とあって、カムバックを喜ぶファンの熱気の凄まじいこと。こういう記録がライブ盤の醍醐味ですよね。
 「愛してます」「ラブレター」「スマイル・フォー・ミー」といった自身のヒット曲もさることながら、オリビア・ビュートン=ジョンの「そよ風の誘惑」やカーペンターズの「涙色の微笑」をはじめ、山口百恵の「秋桜」、杉田かおるの「鳥の詩」といったフェイバリットソングのカバーこそ、彼女のキャラクターを感じる歌唱でしょう。コンサートの定番曲となる「愛は二人の腕の中で」は、天地真理や梓みちよもレコーディングしたシルヴィ・バルタンの「初恋のニコラ」が原曲です。
 
 お次の「 ブリリアント<レディ奈保子 イン・コンサート> (+2)<タワーレコード限定/完全限定盤>」は82年10月17日、東京・芝郵便貯金ホールにて行われた「カナリーコンサート’82」より。
 オープニングの「Ain't no mountain high enough」「Xanadu」という流れには、やはり芸映、岩崎宏美の妹という感じがしてしまいますが、竹内まりや提供作「けんかをやめて」でぐっと大人っぽく、ブリリアントなレディになったカナリーガール。ここでは得意のピアノ弾き語りで披露しています。
 トロピカルフィーリングで迫った「夏のヒロイン」をはじめとするオリジナルヒットに、大好きな山口百恵の「いい日旅立ち」や、「待つわ」「シルエット・ロマンス」といった当時の最新ヒットのカバーをバランスよく配してしますが、圧巻はやっぱり「Lady NAOKO Medley」と題したカオスなメドレー。マッチの「スニーカーぶる~す」にシブがき隊の「100%…Soかもね!」というジャニーズナンバーを挿入してるのも注目ですが、レコードではカットされていたアバの「Dancing queen」や桜田淳子の「しあわせ芝居」も収録。選曲の幅に圧倒されてしまいますネ。
 
 最後の「 NAOKO THANKSGIVING PARTY<タワーレコード限定/完全限定盤>」は2枚組。83年から続いたバースデイ・コンサートの総集編として88年7月24日によみうりランドのEAST野外ステージでにて行われた最後の「バースデイ・コンサート」より。
 筒美京平作品でイメチェンに成功した「エスカレーション」から「UNバランス」「ジェラス・トレイン」といった一連のダンス系を筆頭に、記念すべきデビュー曲「大きな森の小さなお家」、ターニングポイントとなった「けんかをやめて」など、ヒット曲はもちろん、「悲しい人」「黒髪にアマリリス」「夢みるコーラス・ガール」「ハーフムーン・セレナーデ」といった自作品まで、アイドルからアーティストへと脱皮したカナリーガールの成長が感じられます。
 思えば、ナハハ笑いで夢見る夢子さん的にひときわ幼かった少女が、駆け引きも手管とする大人の女性へと大きく変身したうたの世界に驚きます。もしかしたら80年組で最も激変度合いが高かったのかもしれませんね。
 
 という8タイトルは、ステレオサウンドの協力のもと、レジェンドエンジニア内沼映二さんをサウンド・スーパーバイザーに迎え、録音当時のサウンドをよりリアルに再現しているそうなので、既発のCDを持っている人も買い換えを検討したいところ。
 
 なお、この秋には「スマイル・フォー・ミー」「エスカレーション」という2大代表曲をアレンジした大村雅朗さんのトリビュートコンサートや関連アルバム( こちらで紹介)の流れで、奈保子さんの大村作品集「 Masaaki Omura Works~大村雅朗作品集~」もリリースされていますので、再評価の気運が高まっているといえそうです。
 

(2022.8.19)

#1150〜 
 
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