達郎作品収録のアルバム、14年ぶりに復刻

　空前のシティポップブームを背景に、昨年6月にスタートしたビクターの「＜マスターピース・コレクション＞シティポップ名作選」シリーズ。第1期17タイトル（ こちらで紹介）、第2期17タイトル（ こちらで紹介）がリリースされましたが、今回出るのはその続編というワケではなく、“フィーメール”に特化された マスターピース・コレクション～フィーメル・シティポップ名作選10タイトル。
 
　すなわち桜田淳子の79年作品「 パーティー・イズ・オーヴァー +2＜生産限定盤＞」、白石まるみの82年の歌手デビューアルバム「 風のスクリーン +2＜生産限定盤＞」、キャンディーズの田中好子84年のソロアルバム「 好子＜生産限定盤＞」、伊藤つかさ84年のビクター移籍第1弾「 クレシェンド +1＜生産限定盤＞」、石野真子カムバック後の歌手復活第1弾「 サフラン +4＜生産限定盤＞」、荻野目洋子ブレイク後の名作「 ラズベリーの風 +5＜生産限定盤＞ 」、松本伊代89年のバブリーなOL路線アルバム「 Private File +4＜生産限定盤＞」、萬田久子の81年作品「 夏の別れ～映画「夏の別れ」より～＜生産限定盤＞ 」、鷲尾いさ子87年のフレンチポップ「 彼女の風/二十歳のデリカシー＜生産限定盤＞ 」、高橋ひとみ91年のカラフルポップ「 カラフル＜生産限定盤＞」。
 
　70年代から80年代にかけて、アイドルあり、アクトレスシンガーあり、シティポップという懐の深さを感じるラインアップとなっています。10タイトルはいずれも何らかの形でCD化済みとなっていますので、レア度は低い模様。それでも久方ぶりのCD化や、ビクター純正は初となる復刻もありますので、チェックをお忘れなく。
 
　ということで「、ここはやっぱり桜田淳子の「 パーティー・イズ・オーヴァー +2＜生産限定盤＞」をプッシュしておきましょう。
　“秋風のやさしさに誘われて…しっとり女心を歌う淳子のニュー・アルバム！”という触れ込みで、79年9月に発売された12枚目のオリアル。2008年に紙ジャケ復刻されて以来、14年ぶりのCD化となります。
 
　山下達郎作品が2曲収録されていることで昔から大きな注目を集めるアルバムですが、名曲名唱と呼べるナンバーが収録されていることは確かなものの、果たしてシティポップアルバムと呼んでいいかは見解が分かれるところ。
　むろん伊藤薫作品のタイトル曲は洗練、エレガントの極みといえる名曲ですし、ボーナストラックとして収録される尾崎亜美作品「LADY ／あなたは魔術師 」などはきらめくシティポップといえますが、淳子ならではのシャンソン魂が十二分に発揮された「おもいで達」や「愛ゆえに」などは…。
　やはり山下達郎作品収録ということが最大の理由としか思えませんが、その達郎作品にしても淳子への書き下ろしではなかったというエピソードもありますので、シティポップ好きな御仁が淳子のポップを誤解しやしないか心配。ぜひ、81年の「あなたかもしれない」「My Dear」あたりをお聴きいただければと思います。
 
　ほかに今回のラインアップでのオススメは、82年に白石まるみが出した唯一のアルバム「 風のスクリーン +2＜生産限定盤＞」。 
　レコードデビューまでかなりの時間があり、新鮮みが薄れてしまったせいで歌手としては注目されることが少なかった彼女ですが、松任谷正隆プロデュースによるポップな名作で、ユーミン＋マンタ書き下ろしのデビューシングル「オリオン座のむこう／恋人がいても」や「6月のまばたき」を収録。ユーミンバンドの新川博、BUZZの東郷昌和、須藤薫ら当時のユーミンファミリーも参加。2003年にヴィヴィドのクローン・ユア・メモリーズシリーズで初CD化されましたが、純正復刻は初。今回は、大貫妙子のポップなカバーとなった第2弾シングル「恋人たちの明日／翼をつけてラブ・ソング」がボートラ収録されます。
 
　また、89年1月リリース、伊代ちゃんがOL路線に転向した後期の「 Private File +4＜生産限定盤＞」もオススメ。大江千里書き下ろしの最新シングル「ソナチネ」のバージョン違いをフィーチャー。バブルの絶頂期だっただけに、クール＆スタイリッシュな世界観が涙を誘いますが、ピチカート・ファイヴの小西さんやシュガーベイブの村松さんに加え、ブレイク前のKANや崎谷健次郎、麗美やチェッカーズのモクなど多才な作家陣による佳曲ぞろい。
　オススメはTVでもよく歌っていた「泣かないでギャツビー」。アルバムは別バージョン「泣かないでギャツビーⅡ」なのですが、今回はボートラでオリジナルバージョンも収録されております。ボートラは「ソナチネ」のアナログEPバージョン＆シングルCDバージョンに加え、井上ヨシマサ作曲のシングル「淋しさならひとつ」のB面でこれまたTVでもよく歌っていた「男には向かない職業」も収録されています。
　ちなみにこのアルバム、2009年に紙ジャケボックス「スイート16」と単品で発売された後、19年にはタワレコ限定で再プレス（ こちらで紹介）。そちらの方がお安いです。
  
　それと、昨年の萩田光雄BOX（ こちらで紹介）でもクローズアップされていた鷲尾いさ子の「 彼女の風/二十歳のデリカシー＜生産限定盤＞ 」。
　デビュー作「彼女の風」と、発売中止になった「20才のデリカシー」というミニアルバムを2in1パッケージでCD化した、90年盤の復刻となっていますが、パリコレモデルにふさわしいフレンチポップスの世界。フランソワーズ・アルディやフランス・ギャルのカバーに加え、オリジナル作品もアンニュイなイメージでまとめられています。
 
　なお、税込1,980円という安さの「＜マスターピース・コレクション＞シティポップ名作選」に比べ、400円＋税ほど高くなっておりますが、今回はUHQCDの生産限定盤で、封入物も含め可能な限りオリジナルに忠実な仕様、一部を除きシングルジャケット縮小封入などもなされているとのこと。最新リマスタリングで最新ライナーノーツ封入、タイトルによってはボートラも入っていますので、やっぱりお買い得といえますね。