'87年間1位のユーロビート集大成＆筒美作品集！

　すっかりおなじみ、タワレコ限定のSACDハイブリッド復刻。今回は、荻野目洋子＆河合奈保子の10タイトル（河合奈保子8タイトルは こちらで紹介）ということですが、先鋒はオギノメちゃん。
　最も脂の乗っていた時期、86年の「 ノン・ストッパー (+10)＜タワーレコード限定＞」、87年の「 246コネクション (+7)＜タワーレコード限定＞」の2タイトルです。
 
　個人的にもこの２枚は何度聴いたか分からないほどですが、まず「 ノン・ストッパー (+10)＜タワーレコード限定＞」は、命運を賭けたユーロビートカバー「ダンシング・ヒーロー（Eat You Up）」でブレイクを果たしたオギノメちゃんにとって、グルーヴィーなダンス系路線の集大成といえるアルバム。
　翌87年の年間アルバムチャートでも1位をマークするほど売れに売れましたし、あの頃、どこに行ってもかかっているという感じでしたから、リアル世代ならほとんどの人が愛聴していたと思いますが、ほんとセールスに恥じない名盤ですよね。
 
　収録曲は、当時の最新オリジナル「六本木純情派」を核に「ダンシング・ヒーロー（Eat You Up）」の別バージョンた「フラミンゴ in パラダイス」「Dance Beatは夜明けまで」といったシングル曲をフィーチャー。「ヴィーナス」「CHA-CHA-CHA」「Melting Point」といったユーロビートカバーも楽しめますが、何と言っても「D2D」「NONSTOP DANCER」「瞳にI Love You」というアルバムオリジナル曲が秀逸です。当時のユーロビートでヒットしたアーティストは、ほとんどがオリジナル曲で撃沈したように思いますが、オギノメちゃんの場合は、すんなりシフトできていったのがスゴイと思います。
　中でもアルバムタイトルに引用された小室哲哉作品「NONSTOP DANCER」は、後に一世を風靡する小室サウンドの助走といった感じでオススメ。飛ぶ鳥を落とす勢いのオギノメちゃんがしっかり感じられます。
 
　近年も驚きのリバイバルヒットを記録し、世代を超えて支持されている「ダンシング・ヒーロー」ですが、アレでオギノメちゃんを知った若い世代に最も聴いていただきたいアルバムです。
　なお、2010年のSHM-CD＆紙ジャケット復刻盤をベースにしているようで、今回も同じくボーナストラックとして全曲のオリジナル・カラオケが追加収録されるということです。
 
　続く「 246コネクション (+7)＜タワーレコード限定＞」は、「六本木純情派」でオギノメちゃん像を確立した売野雅勇さんがプロデュース。かの大貫妙子も好きだと言っていた1個前のシングル「湾岸太陽族」以外は、全曲筒美京平作品となった名盤です。
　オギノメちゃんとしてはシングル初のオリコン１位獲得曲「さよならの果実たち」の別バージョンを収録。80年代の筒美ベストアルバムではないかと思うほど、名曲が詰まっているのですが、それに負けていないのが売野さんがオギノメちゃんを通して描いた青春観でしょう。
　売野さんの詞の中にいるのは、トンガってツッパってみせても、ナンパなチャラさをのぞかせても、実はみんなナイーブで傷つきやすい少年少女。それはオギノメちゃんがふと見せる淋しそうな横顔と重なっていました。
　例えるなら80年代チックな理由なき反抗というか、87年のジミーというような…あの頃のアイドルで、オギノメちゃんだけが持っていた青い少年性が結実した傑作ではないかと思っています。ご本人は実体験がない世界を歌うことにストレスを抱えていたようですが、資質は経験などあっさり凌駕してしまうのだということをこの作品が証明しているように思います。
 
　思えば、ユーロビートのブームが過ぎ去った時期、聴くのが恥ずかしさもあった頃。オギノメちゃんだけは、照れくさくも恥ずかしくもなく聴けてしまったものでしたが、それはやはりオギノメちゃんの生真面目な人柄というか、ひたむきでまっすぐな性格というか、彼女のコアにある人間の品格というものがきっちりと出ているからではないかと思っています。
　だから、イケイケの詞を歌ったって、ノリノリでステップをキメたって、ボディコンを着て真っ赤なルージュを塗ったって、バブルの泡に溶けてしまうことはなかったのですね。
　そういう意味では、やっぱりこのアルバムがオギノメちゃんの最高傑作といえるのではないでしょうか。
 
　こちらもボーナストラックは2010年のSHM-CD＆紙ジャケット復刻盤と同じ。すなわちアルバム未収録の「湾岸太陽族／粉雪のリゾート」「さよならの果実たち／ロフトサイド・グラフィティ」「北風のキャロル／月曜日のマリーナ」という3枚のシングルと、ベスト盤に収録されていた「北風のキャロル －on Christmas day－」の7曲が追加収録されるとのことです。
 
　なお、今回はステレオサウンドの協力のもと、オリジナルの録音にも携わったエンジニア・内沼映二さんをサウンド・スーパーバイザーに迎え、録音当時のサウンドをよりリアルに再現したそうですが、オギノメちゃんの場合、オリジナル盤が出たのはちょうどLPからCDへの移行期だったので、どんな音になっているか期待大。聴き慣れたアルバムだけに、また新たな発見ができるのも醍醐味だと思います。