EPIC時代のオリアルBOX、第3弾でついに完結！

　日本でのポップスのキャリアをあっさり捨てて、１からジャズを学び直し、今はアメリカ・ニューヨークを拠点に立派なジャズピアニストとして活躍する大江千里さん。
 
　昨年、世界中がコロナのパンデミックに翻弄される中、凱旋ツアーの途中で緊急帰国するもニューヨークは特に深刻な状況となり、余計に大変だったようですが、困難な時ほど奮い立つ千里さんのこと。
　困難の中にいる全ての人へ贈るつもりで書いたという新曲「Togetherness」が、AP通信がピックアップした「40 songs about the coronavirus pandemic.（コロナ禍の中作られた40曲）」に選出。錚々たる世界的アーティストと並んで高い評価を受けたのは記憶に新しいところです。
 
　withコロナのリモート時代、日々の様子を機会あるごとに発信され、何だか昔より身近に感じるほど。先月にはコロナワクチンの接種後に体調が急変したというニュースに肝を冷やしたことでしたが、今は回復された様子で一安心。今月にはエッセイの新刊「 マンハッタンに陽はまた昇る～60歳から始まる青春グラフィティ」も上梓されるとのことで、コロナ禍に苦しむ千里キッズの皆さんの大きな癒やしと励みになっているように思います。
　ホント首尾一貫した姿勢は、ジャズに転向し還暦を迎えた今も何ら変わることはありませんが、このタイミングでポップス時代、EPICレーベル在籍時のBOXシリーズ続編「 Senri PremiumⅢ～MY GLORY DAYS 1993-1999 」がオーダーメイドファクトリーの候補に挙がりました！
 
　思えば2008年、デビュー25周年を迎えたタイミングで始まった大江千里さんのCD-BOX企画「Senri Premium」シリーズ。
　最初の「 Senri Premium～MY GLORY DAYS 1983-1988 」（ こちらで紹介）は、オリジナルリリースがアナログ発売のオリジナルアルバムを紙ジャケ復刻するという企画でしたが、好評につき、並行して映像ソフトのDVD化シリーズ「Senri VISUAL Premium」もスタート。先に「 Senri VISUAL Premium My GLORY DAYS 1983-1988 」（ こちらで紹介）、「 Senri VISUAL Premium My GLORY DAYS 1989-1999 」（ こちらで紹介）というDVD-BOX2セットで完結し、CDリリースオンリーだったアルバムのBOX「 Senri Premium Ⅱ ～MY GLORY DAYS 1989-1992 」（ こちらで紹介）へと続いていったのはご存じの通りです。
　いずれも限定盤でしたが、アンコールプレスを繰り返しており、現在でもすべてが入手可能ということからも、ポップス時代の千里さんへの評価が高いことがわかるでしょう。
 
　今回は、CDとしては３つ目となるBOXにして、シリーズ完結版。
　「Giant Steps」「SENRI HAPPY」「ROOM802」というオリアル3枚に、アルバム未収録のシングル曲などを集めた「SINGLE TRACKS & RARE」2枚をセットにした5枚組です。
　もちろんブックレットには千里さん自らが書き下ろしたライナーが掲載されていますし、オリジナルのCDを持っているという人も、最新デジタルリマスター音源でBlu-spec CD2仕様。
　しかも今回は完結編ということで、過去の２つのCD-BOXとともに収納できる豪華外箱が付くそうですので、コレクションという意味においてもまさに完成形となっております。
 
　オリアルの内訳はというと、ブルーノートなジャズジャケのもとサウンドも歌詞もＮＹのニュー千里にイメチェンした「Giant Steps」、阪神・淡路大震災をきっかけに大江千里の存在意義を問い直して、原点回帰した「SENRI HAPPY」、打ち込みを基本に全てをセルフプロデュースした大ボリューム作にしてEPIC時代15年間の集大成「ROOM802」という3枚。
　リリースのインターバルが空き、1作ごとに全く違うイメージを打ち出したせいで、ファン離れが加速した時期ではありますが、当時は1曲目から仰天した「ROOM802」でさえ、いま聴くと全くもって違和感がないので、オリジナルリリース時に引いちゃったという人にこそ聴いていただきたいと思っています。
 
　なお、アルバムに対応するシングル曲は各アルバムのボーナストラックとして、それ以外の「軍配はどっちにあがる／同級生」「夏の決心／ジブンノバショ」「白い雪まいおりた／たとえば もっと(another Arigato)」「何度も叫んだ／ぼくらの階段」「HYPERACTIVE DINOSAUR／This is my life (single mix)」「New Republic!／秋唄」「野球の夏／六甲GIRL ('98.12.23 "PAGODAPIA" live ver.)」といったシングルは、インストも含め「SINGLE TRACKS & RARE」に収録されています。後期になるにつれて入手困難となっていた音源だけに、貴重度は高いと思います。
　また、今回は、ユーミンのトリビュート盤に入っていた「スラバヤ通りの妹へ」や、「What A Silent Night !」をはじめJOEシリーズの新曲や新録曲も網羅されているので、Ⅰ、Ⅱを持っているなら必携。持っていない人も、今回一気にそろえてみるのもオススメです。
 
　このシリーズを通して見えてくるのは、いつだってシリアスかつユーモラスに、試行錯誤を繰り返しながら、飛躍していった千里さんの軌跡。ファンにとっては、思い出が詰まった懐かしい青春の日々であることは間違いないですが、大江千里というアーティストが日本の音楽シーンにきっちりと足跡を残し、後進たちに大きな影響を与えてきたことがハッキリと確認できることでしょう。
 
　最後に、千里さんがニュースクール大学に在学中の2008年から、13年という長きにわたり解説という形でお手伝いさせていただいてきたこのシリーズが完結するにあたって、私自身大きな肩の荷が下りたとともに、心にポッカリ大きな穴が空いたような気持ちでおりますが、この間にメールやツイッターなどを通じ、千里キッズの皆さんから温かい言葉やエールをいただいたことに、あらためて感謝申し上げます。ありがとうございました！