タワレコ80年代キャンペーンでコンピ盤！

　今や単なるレトロではなく、世代を超えて一つの定番ジャンルとなった80年代カルチャー。個人的にもローティーンからハイティーンまでという多感な頃を過ごした身としては、ファッションやアート、音楽、ゲームのみならず、産業技術や経済も含め、社会といいますか世界中の人間が生きる上での理想的なバランスへと到達し、その先の夢がまだ見られた最後の期間だったような感覚が残っていますから、閉塞感にあえぐ2020年代の若者たちが惹かれてやまないのもしごく当然のような気がしております。
 
　そんな中、タワレコが80’sポップカルチャーをテーマに、今月末から展開するのが「♡80’sキャンペーン」。80年代アイコンの1つといえる江口寿史さんのイラストをメインビジュアルに、リアル＆オンラインショップで大々的に繰り広げられるそうです。
 
　内容はといいますと、80年代の名盤や名作をタワレコ独自の目線でセレクトするということで、バイヤーさんの選曲による洋邦のオリジナルコンピ盤をはじめ、入手困難だったアイドルやシティポップの復刻盤を大量にリリース。ほかにも「江口寿史 × TOWER RECORDS コラボグッズ」の限定販売など、盛りだくさんの様相です。
 
　マニアが気になる復刻盤に関しては、アイドル系は自社復刻が消極的なワーナー勢で、志賀真理子「 mariko (+9)＜タワーレコード限定＞」、畠田理恵「 PREMIER -RIE HATADA 1er- (+9) 2020 Edition＜タワーレコード限定＞」、仙道敦子「 15歳-不確かな季節- (+8)＜タワーレコード限定＞ 」「 La Fillette (+8)＜タワーレコード限定＞」、浅香唯「 Candid Girl (+6)＜タワーレコード限定＞」「 MELODY FAIR (+7)＜タワーレコード限定＞」がラインアップ。いずれもQ盤やOMFで再発・復刻を繰り返したアルバムばかりですが、今回はボートラが増えているようなので、コアなファンでなくとも要チェックです。
 
　ちなみにシティポップは、飯島真理のアルファ・ムーン時代「 Miss Lemon (+2)＜タワーレコード限定＞」「 MY HEART IN RED (+4)＜タワーレコード限定＞」、岩﨑元是&WINDY「 HEART WASH＜タワーレコード限定＞」「 from South Avenue＜タワーレコード限定＞」、CANDEE（高尾のぞみ）「 Candee＜タワーレコード限定＞」と、待望の復刻を含んだタイトルとなっています。
 
　一方、今回のキャンペーンの象徴となるのがオリジナルコンピ盤。ロック「 ROCK ON -80's Edition＜タワーレコード限定＞」、バラード「 Love Ballads -80's Edition＜タワーレコード限定＞」、ブラコン「 Midnight Love - SMOOTH R&B ESSENTIALS＜タワーレコード限定＞ 」というジャンル別にセレクトされた洋楽3タイトルもイイですが、ここではやっぱり邦楽の「 Love 80's -Ultimate J-POP Best＜タワーレコード限定＞」をば。
 
　2枚組で全33曲。ソニー系音源を中心にした80年代ナンバーの中から、サウンドとグルーヴを基準にチョイスされたということですが、オープニングがシーナ& ロケッツ「レモンティー」でクロージングがEPO「DOWN TOWN」と聞いて、てっきりシャレオツな和モノ界隈かと思いきや、80年代らしい玉石混淆の選曲。
　しかもヒット曲が中心ではあるものの、80年代ポップス界の特長や動向を押さえたかなり奥の深いセレクトになっているように思います。
 
　例えば80年代は、CMやドラマ主題歌などタイアップによるヒットの方程式が確立した時代ですが、語りぐさとなっているのは化粧品戦争。
　ここでは83年の夏キャンがピックアップされ、資生堂はシャネルズから改名したラッツ&スターのNo.1ヒット「め組のひと」、カネボウはYMO「君に、胸キュン。-浮気なヴァカンス-」。ちょっと時代は下がりますが、89年春の資生堂、中山美穂「ROSÉCOLOR」も入っています。
 
　同業種のライバル対決ということでいえば、カップ麺のCMソングも忘れてはいけません。ハウンド・ドッグ「ff(フォルティシモ)」と大澤誉志幸「そして僕は途方に暮れる」の日清カップヌードルに対し、キヨシローのTHE TIMERS「デイ・ドリーム・ビリーバー」のエースコックのスーパーカップ。
　他にも、カルピスのスターダスト・レビュー「夢伝説」といった大ヒットはしなかったものの知名度の高いCMソングや、競作カバーがシャンプーのCMソングとなった村下孝蔵「初恋」なども入っています。
 
　ドラマ主題歌の方も渡辺美里「MY REVOLUTION」を筆頭に多彩ですが、80年代といえばやっぱりトレンディードラマ。その最高峰はカルロス・トシキ&オメガトライブ「アクアマリンのままでいて」でしょう。
　また、ダンスチューンも進化した80年代、大映ドラマなどではダンス系の洋楽カバーも目立ちましたが、その代表格が麻倉未稀「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」。後半ともなると第2次ディスコブームが巻き起こり、ドラマ主題歌もユーロビートを中心としたディスコ系カバーが占めるケースが多発。ここには石井明美「CHA-CHA-CHA」、WINK「Sugar Baby Love」、BaBe「Give Me Up」という初々しいデビューヒットがそろい踏みです。
 
　また、アイドル全盛期でもあった80年代。山口百恵と松田聖子の世代交代でスタートした80年代にふさわしく、「さよならの向う側」と「Rock'n Rouge」「時間の国のアリス」という大物2人で固めていますが、なんと吹田明日香のマドンナのカバー「ライク・ア・ヴァージン」や原田知世「彼と彼女のソネット（T'en Va Pas）」も収録。知世ちゃんはともかく、吹田明日香の選曲はマニアックと言わざるを得ませんよね。
　こういったアイドルポップスというジャンルでは、シンガー･ソングライターの提供作が目立ったのも特長ですが、ユーミンの聖子ソングや、竹内まりやが書いた薬師丸ひろ子「元気を出して」がその筆頭でしょう。
  
　というように職業作家の先生たちは居場所がなくなってしまう感じだったのですが、筒美京平先生や松本隆さんは別格。筒美先生の作品では稲垣潤一「ドラマティック･レイン」や今井美樹「野性の風」、松本さんは聖子ソングに安田成美「風の谷のナウシカ」などがチョイスされています。
　ちなみに編曲家という視点では、80年代に躍進した大村雅朗さんがどうしても中心になりますが、萩田光雄さん、船山基紀さんと、再評価の進むアレンジャー御三家が顔を並べているのも納得です。
 
　ロックがチャートの主流となるのも80年代の側面ですが、日本語のロックというジャンルをポピュラー化させた佐野元春の「SOMEDAY」「ガラスのジェネレーション」、のちのバンドブームに影響を与えたであろうレベッカ「RASPBERRY DREAM」、TM NETWORK「Get Wild」、いかにも80年代的アーティストといえる岡村靖幸「だいすき」など、エポックメーキングなアーティストも押さえられています。EPIC系が目立つ印象ですよね。
　それと、メディアとしては12インチシングルがもてはやされましたが、ここにはEPICの大江千里作による郷ひろみの初12インチ「Cool」もセレクトされています。
　なお、山下達郎の「BOMBER」のオリジナルは70年代ではないかと思うのですが、ここでは80年代の西城秀樹のライブバージョン、2000年代のDANCE☆MANのリメイクバージョンが収録されています。
 
　と、深読みすればするほど80年代を多面的にとらえたように思えて、うなってしまう選曲ですが、2020年リマスタリング音源にして1曲100円程度というお買い得プライスも二重マル。気軽に聴き流せるサブスクもいいですが、音が良くてこのプライスならパッケージで所有して損はないというもの。
　あの頃、漫画なのにイラスト感覚で群を抜いてお洒落だった江口さん描き下ろしのジャケットも胸キュン間違いなし。
 
　今回のキャンペーンで対象商品を購入すると先着でオリジナルポストカードもらえるほか、豪華賞品が抽選で当たるプレゼント企画も実施されるとか。以前からショップという概念を超え、復刻盤を企画し市場を牽引するタワレコですが、この年末年始はさらに頼もしい存在になりそうです！