あの名盤のCD-4盤が、ついに4ch・SACD化！

　タワーレコード日本上陸40周年を記念企画として、ステレオサウンドとのコラボで昨秋から展開されている岩崎宏美さんのSACDハイブリッド盤復刻。
　第1弾5タイトル（ こちらで紹介）、第2弾3タイトル（ こちらで紹介）、第3弾3タイトル（ こちらで紹介）、第4弾2タイトル（ こちらで紹介）と2カ月ごとのインターバルでコンスタントにリリースされてきたのはご存じの通りです。
 
　次のタイトルは、これまで漏れていた77年の「ウィズ・ベスト・フレンズ」や、81年の「緋衣草（サルビア）」、82年の「Love Letter」あたりかと思いきや、なんとファン悲願の初復刻！
　なんと、78年リリース、ヒロミ・イン筒美ディスコの集大成として誉れ高い名盤「パンドラの小箱」の4チャンネルレコード（CD-4）が、マルチ4.0ch& 2chのハイブリッドSACD「 パンドラの小箱 -SACD マルチ4.0ch& 2ch ハイブリッド・エディション-＜タワーレコード限定＞」として、ついにリリースされるというのです！
 
　4chステレオといいますと、70年代初めから半ばにかけて大流行した４つのスピーカーを備えたステレオシステム。当時は各社ハードを普及させるべく、ソフトのレコードもジャンルを問わず各種発売されていたのですが、このアルバムもそんな1枚。
 
　CD-4というネーミングはコンパクトディスク登場後は非常にややこしく、時代が下がり当時を知らない人にはCD盤なのかアナログ盤なのか分からないというようなこともあったようですが、4chは方式やメーカーによって呼び名が違い、例えばヒロリンのビクターはディスクリート4チャンネルステレオ（CD-4）ですが、ソニーの場合はSQ方式４chステレオ・クウォドラフォニックシステム、という感じで、余計にややこしいのかもしれません。
 
　ちなみに、復刻市場ではソニーが先行していて、アイドル系では74年のSQ盤「ヒット全曲集」シリーズから山口百恵版が2005年に単品で、キャンディーズが2008年にBOXの1枚として、それぞれSACD（ハイブリッド盤）化済みとなっていますが、他社は一向に進まなかったので、今回は熱心なヒロリンファンの大願成就といいますか、まさに快挙といえるでしょう。
 
　さて、今回のアルバムは何度もCD復刻され、SACDハイブリッド盤も出ている2ch盤と音源が異なるというわけではありませんが、通常の2chステレオ・ミックスとは全く別の4.0chミックス。このシリーズでは現存するオリジナル・アナログ・マスターから忠実にDSD変換されたマスターを使用しているので、音の分離といい、臨場感といい、まったくの別バージョンとして聴こえるはずです。
　発売時期は4chブームの去った78年ですが、ツインドラムなど、CD-4レコード前提で制作された節もあるとかで、2chの通常盤では気づかなかったサウンドやボーカルが存分に堪能できるように思います。個人的には「コントラスト」の♪いくつもいくつも…や、淳さんが比企理恵で焼き直す「ピラミッド」の問いかけで昇天してしまいそうな気がしております。
 
　内容の方は今さら言うまでもないでしょうが、当時の最新シングルとしては「シンデレラ・ハネムーン／南南西の風の中で」をフィーチャー。世界中がサタデー・ナイト・フィーバーする空前のディスコブームの中、ヒロリンの初期のディスコ路線を担当した筒美京平先生が久々に全曲を担当。Dr.ドラゴンがまさに大暴れしております。
　作詞家陣にはデビューからの阿久悠さんに加え、橋本淳さん、阿木燿子さん、島武実さんを起用。ベテランから旬の新しい顔ぶれまで、初期の学園ディスコとは一線を画し、ぐんと艶っぽくなった世界観が繰り広げられていますが、いずれも筒美メロディーとの相性バッチリ。ハズレ、捨て曲一切なし、名曲のオンパレードです。 当時ヒットしていた筒美作品「東京ららばい」「飛んでイスタンブール」「モンテカルロに乾杯」などにも通じるエキゾチックな雰囲気も漂っていて、翌年のメガヒット「魅せられて」に連なる流れとして聴けば、また新たな発見ができそう。阿木＋筒美コンビによるヒロリンの次のシングル「さよならの挽歌」への予告編のようなナンバーもありますしね。
　大人の女声となった艶やかなヒロリンボイスも絶好調で、いろんな意味で最高傑作と呼んでしまいたい名盤で、今回は2ch盤とは異なるジャケットの復刻にも注目です。
 
　思えば初CD化となった91年の“定盤コレクション 2in1 YOUNG POPS FOR YOUNG ADULTS”以来、Q盤の“定番COLLECTION”シリーズ、全アルバムを復刻した“オリジナルアルバム・紙ジャケットコレクション”やMEG-CD、タワレコ限定の紙ジャケ再発やSACDハイブリッド盤と、音源的には再発を重ねてきたタイトルですので、2ch盤は持っている人がほとんどだと思いますが、今回こそは絶対買い替え、買い増しをオススメします。
 
　なお、このシリーズは音楽評論家の湯浅学さんが監修。サウンド・スーパーバイザーとして、オリジナル盤のレコーディングエンジニアだった梅津達男さんも参加し、今回の新マスタリングはビクタースタジオFLAIRの山﨑和重さんが担当。仕様はステレオサウンド発のタイトルとは異なり通常パッケージですが、特別解説書付きとのことです。
　ステレオサウンド直販ものに比べ価格帯は上がっておりますが、タワレコの店舗でも通販でも気軽に買える上、ポイントも貯まりますし、通販でもセブンイレブン受け取りにすれば送料ゼロですので、やっぱりお得。今回も各タイトルたった700枚の生産限定ということなので、お早めにどうぞ。