SACDハイブリッド盤アルバムBOXが再プレス！

　今週、7月13日に55歳のバースデイを迎えたばかりの中森明菜さん。とはいえ、ここ数年はまた無期限活動休止状態で、コロナ禍の体調も心配されますが、FC会員への自筆のメッセージ以外で近況が伝わってこないのが寂しいところ。
 
　ファンの皆さんはステイホーム期間中からワーナーがYouTubeで無料公開しているライブ映像を見たり、数々の旧譜を聴いたりしながら完全復活を待ちわびている人は多いと思いますが、旧譜を聴くならやっぱり高音質盤がイチバン。
　ということで、明菜の黄金時代、ワーナー時代のアルバム18タイトルのSACDハイブリッド盤紙ジャケBOX「 AKINA BOX SACD/CD Hybrid Edition 1982-1991＜完全生産限定盤＞」がアンコールプレスされることになりました！
 
　明菜の高音質盤というと、昨夏“CDの最終進化形！”という謳い文句で登場した最新のハイレゾCD（MQA-CD ×UHQCD）によるベスト盤2種（ こちらで紹介）が出ましたが、こちらは由緒正しいSACDハイブリッド盤。
　元々は2006年の紙ジャケ復刻アルバムBOX（赤箱）をベースに、青箱として一部内容を変え、デビュー30周年を迎えた2012年8月にリリースされたもの。その時は単品とBOXで、2014年1月には単品がアンコールプレスされていましたが、今回はBOXとしてのアンコールプレスとなっております。
 
　松田聖子と並び、アイドルでもアルバムが広く聴かれるようになった時代のトップアイドルといいますか、一世を風靡したアーティスト性の高いスターだけに、高価なアルバムBOXといえどもコアなファンだけに向けたアイテムというワケではないんですよね。
　事実、これまで同様、CD、ハイブリッド、アナログと復刻や再発を何度繰り返しても確実な需要が存在していますので、今回の再プレスを待っていた人も少なくはないでしょう。
　実際、ことさらの明菜ファンではないけれど聖子のSACDハイブリッド盤で音の良さを実感した人が明菜のそれにも手を出したという実例を聞いたことがありますし、赤箱を持っているから前回は見送っていた人が今回は買い替えや買い増しするケースもありそう。SACDハイブリッド盤の価値は、ここ最近も岩崎宏美効果で再認識されているようですしね。
 
　さて、BOXの内訳は今さら言うまでもないでしょうが、82年のデビューアルバム「プロローグ＜序幕＞」から89年までの「Cruise」まで、LPでリリースされていたベスト盤を含む全17タイトルに、92年に出た「BEST III」を加えた全18タイトル。いずれもオリジナルを可能な限り忠実に再現した紙ジャケット仕様となっております。
 
　18タイトル中、3作以外はすべてオリコン1位とセールス的には最初からアルバムアーティストだった明菜ですが、「スローモーション」と「少女Ａ」、「セカンド・ラブ」と「1/2の神話」に象徴されるメロウとツッパリを交互に押し出した山口百恵式方法論ゆえか、百恵ちゃんと同じシングル至上主義という印象は拭えません。実際、初期のアルバム三部作まではドメスティックな歌謡曲や70年代を引きずったニューミュージックの印象が強かったんですよね。
　それは当時のファン中心層にヤンキーが目立っていた影響なのかもしれませんが、作家陣の志向もバラバラで、例えば南沙織で知られる中里綴＋田山雅充コンビが名を連ねていたり、当時松本隆さんがイニシアチブを取っていた聖子のアルバムとは比べるまでもなく、トータル性というか、クオリティのバランスに欠ける感もあったのは事実です。
 
　それが、デビュー前から目標としていた百恵陣営の阿木燿子や谷村新司に、ライバル視されていた聖子陣営の財津和夫や細野晴臣を混交起用したヨーロッパ・レコーディング盤「NEW AKINA エトランゼ」あたりから、楽曲も歌唱法も明菜らしさの輪郭がはっきりし始め、一つの路線となったエキゾチック的なリゾートアルバム「ANNIVERSARY」で明確になり、初期の集大成的な「POSSIBILITY」で一つの頂点を極めていったように思います。
 
　そして、シングルでいえば井上陽水作品の「飾りじゃないのよ涙は」で確立したリズム感やグルーブ感をベースにした明菜的歌唱といいますか、誰にも真似できず誰も寄せつけないワンアンドオンリーな世界を構築。聖子が結婚休業で不在の中、85年の「BITTER AND SWEET」からはまさに明菜の独壇場といいますか、孤軍奮闘の活躍が始まります。
　そして、ついにレコード大賞を受賞する「ミ・アモーレ（Meu amor é･･･）」の特別バージョンを収録した「D404ME」で、名実ともに女性ボーカリストのトップに君臨したのでした。
 
　それからは、セルフプロデュースでボーカルのサウンド化を試みた実験作「不思議」以降、自身が目指すものに妥協なく取り組む姿勢が表れていったようで、英語盤「CROSS MY PALM」やハードなシングル落選曲集「Stock」という企画盤をはじめ、海外ミュージシャンを起用して孤高の歌姫のポジションを確立したLA録音盤「Femme Fatale」、NY録音によるメディアミックスなワーナー最後のオリアル「CRUISE」まで、バブリーな世の流れを映すように、女王となった明菜の唯一無二の世界観が繰り広げられております。
 
　というようにデコラティブにエスカレートしてゆく時期にあって、個人的にオススメしたいのが、明菜の素顔が垣間見えるような86年の「CRIMSON」。
　明菜が完成させたウイスパー唱法のせいなのか、かの御大の発言のせいで物議を醸す部分ばかりがクローズアップされましたが、竹内まりや＆小林明子を軸に女流作家でまとめられていて、一途な性格の明菜でしか成立し得ないフェミニンな名盤ですよね。ジャケットも含めて。
　個人的な嗜好ではありますが、昔からどちらかというとツッパリよりメロウでポップな明菜派なもので、竹内まりや「September」の焼き直し作品「涙の形のイヤリング」や、「十戒（1984）」とは180度異なる高中正義の「秋はパステルタッチ」とかに惹かれていますから、アルバムとしてはこの明菜のイメージがイチバン好きだったりします。
 
　というSACDハイブリッド盤BOXですが、なんたって高額商品ですので、還元ポイントの多いショップや、割引価格で買えるAmazon（ AKINA BOX(紙ジャケット&SACD/CDハイブリッド仕様) ）や楽天市場（ 中森明菜 / AKINA BOX - SACD／CD Hybrid Edition（完全生産限定盤／ハイブリッドCD） [CD] ）など、あれこれチェックしてご購入を。
 
　なお、各アルバムにはボートラがなく、このBOXだけではワーナー時代のコンプリートにはならないので要注意。ベストでも漏れたシングルB面、12インチシングルやミニアルバムの収録曲、別バージョンやナレーションなんかもコレクションしたい場合は、かのライノ・エディションによる充実のシングルAB面コレクション「 コンプリート・シングル・コレクションズ～ファースト・テン・イヤーズ（ライノ・プレミアム・エディション）」や、ミニアルバムBOX「 Mini Album Collection ［5CD+ミニマグネット］＜初回生産限定盤＞」も併せてどうぞ。
　黄金期の明菜で幸せホルモンなどを分泌して免疫力をつける、という意味ではコロナの特別給付金をつぎ込んでも決してムダではないと本気（マジ）で思ったりしています。