松本＋筒美三部作など計4枚のEPが復刻へ！

　1985年2月21日に松本隆＋筒美京平コンビの「卒業」で歌手デビューを飾ってからちょうど36年。この記念日に、なんと武部聡志さんとのタッグでセルフカバーアルバム「水響曲」（初回盤「 水響曲＜初回限定盤＞」／通常盤「 水響曲＜通常盤＞」）をリリースした斉藤さんちの由貴さん。
　初回盤は、ポニーキャニオン音源のオリジナルバージョンのリマスター音源盤との2枚組。18歳と54歳の歌声を聴き比べるという何とも勇気ある趣向となっておりますが、これが実に斉藤由貴らしさ全開の好盤なのです。歌には人生が出ると申しますが、歳月による器官の劣化や心に降り積もった塵芥さえも滋味深い年輪として刻んだといいますか、ともすると聴くに堪えなくなってしまう衰えを揺らぎの魅力に変えたといいますか、まさに水にたゆたう心の調べのごとく胸にしみ入る語り歌となっております。
 
　来月にはこの新作を引っさげ、大阪、横浜、東京でビルボードライブを開催と、35周年というアニバーサリーイヤーの昨年から引き続き、近年では最も精力的な歌手活動となっておりますが、その裏には昭和ポップスのブームに加え、筒美先生の追悼や松本さんの50周年から広がる再評価があることも事実でしょう。実際、斉藤さんのアレンジをデビュー曲から最新アルバムまで手がけてきた武部さんは、筒美先生のトリビュートアルバム「 筒美京平SONG BOOK」（Amazonはメガジャケ付きの 【Amazon.co.jp限定】筒美京平SONG BOOK (メガジャケ付)）も手がけていますし、やっぱり大きな縁を感じますよね。
 
　という新作はビクターからのリリースですが、古巣・ポニキャンも黙ってはいないようで、昨年の35周年時には「斉藤由貴 CD-BOX１」と「斉藤由貴 CD-BOX2」をポニーキャニオンショッピングクラブのみの通販限定で復刻（ こちらで紹介）していますが、今回はなんとアナログ復刻！
　そう、例の POP（パッケージ・オーダー・プロジェクト）から、松本＋筒美三部作を含む斉藤さんのシングル4枚のアナログ復刻のリクエストがスタートしました！
 
　 POPをご存じない人のためにおさらいしておきますと、その名の通り、ユーザーの希望に応えて過去のパッケージアイテムを復刻するプロジェクトで、達成率が100％になった場合にのみ商品化されるシステム。
　ソニーミュージックのオーダーメイドファクトリーやGREAT TRACKS Order Made Vinyl（グレイト・トラックス オーダーメイド・ヴァイナル）のポニキャン版、と言った方が分かりやすいでしょうか。
 先行した松原みきさんの復刻（ こちらで紹介）は無事復刻が決まりましたので、今回の斉藤さんにも大いに期待したいところです。
 
　今回、候補に挙がっているのは、デビューからのシングル4枚。 
　すなわち「 卒業／青春」「 初戀／海の絵葉書」「 情熱／ささやきの妖精」という松本＋筒美三部作に、「スケバン刑事」の主題歌となった第2弾シングル「 白い炎／石鹸（シャボン）色の夏」を加えた4タイトルで、デビュー1年目にリリースされたもの。いずれも名曲ぞろいですし（この中でのオススメは「海の絵葉書」です）、音源としてはみんな既に持っていることと思います。
 
　それでも今回、斉藤さんのアイテムのコレクションとして入手したい人は多いでしょうし、それこそ筒美先生への追悼の意を表してとか、いろんな思いで手にする人がいらっしゃるでしょう。
　けれど、個人的には長年斉藤さんの動向を追い続けてきたリアル世代のコアなファン、それも踏み絵のような出来事がいくたび起きようとも、彼女の性と業を受け入れたファンこそ手に取るべきアイテムではないかと思っています。
　得体の知れない才能を自ら持て余していることは薄々気づいてはいたものの、まだこうなるとは知らずにいられた無垢な頃。斉藤さんのごく初期は、そんな頃と同じく新品で手にして聴くという行為にこそ、大きな意味がありそうな気がしています。
 
　と、そんな妄想が幾重にも広がってくるのも、いかにも斉藤さん的。果たしてつかの間でも無垢な頃に戻れるかどうか、ぜひ復刻が実現して針を落とす日を待ちたいと思います。