偉大なる作詞家・山川啓介の作品集BOX！

　中村雅俊の「ふれあい」や矢沢永吉の「時間よ止まれ」、岩崎宏美の「聖母たちのララバイ」など、数々の名曲の歌詞を手がけたことで知られる作詞家・山川啓介さん。
　お亡くなりになってから早いもので4年が経とうとしていますが、ここに来て、かの濱田高志さんの企画・監修による5枚組の作品集BOX「リリシスト ～山川啓介ソングブック」が登場することになりました。
 
　いずみ・たくさんとのコンビによるミュージカルを原点に、歌謡曲のみならず、外国曲の訳詞や本名の井出隆夫名義で作詞された子ども向けの歌まで、本当に幅広い作風だった山川さん。
　オリコン1位獲得曲としては冒頭で紹介した「ふれあい」「時間よ止まれ」「聖母たちのララバイ」のほか、青い三角定規の「太陽がくれた季節」もそうですし、トップ10入りした作品でいえば野口五郎「グッド・ラック」、町田義人「戦士の休息」、ゴダイゴ「銀河鉄道999」、西城秀樹「愛の園（AI NO SONO）」、八神純子「Mr.ブルー ～私の地球～」、郷ひろみ「哀愁のカサブランカ」など、たくさんのヒット曲をお持ちです。
　よく知られた子ども向けの歌で言えば、NHKみんなのうたでも流れた「北風小僧の寒太郎」なども山川さんなんですよね。
 
　今回のBOXではディスクごとにジャンル別に厳選して収録するとのことで、構成としては、DISC1がヒット曲を集めた「HIT SONGS」。DISC2が、隠れた名曲などのレア曲による「RARE SONGS」。DISC3がアニメや特撮などのテーマ曲やCMソングの「TV THEME & CM SONGS」。DISC4は、本名で手がけたNHKなど教育番組での劇中歌「KIDS SONGS」。そしてDISC5が、クラシックやポピュラー音楽など外国曲の訳詞を集めた「FOREIGN SONGS」となるそうです。
 
　収録曲はまだ発表になっていませんが、ちょっと指折り数えるだけでも数多の名曲がたくさんありますし、初のアンソロジーに期待大。
　せっかくなので個人的な好みで列挙しますと、女性シンガーの場合、岩崎宏美なら「家路」「橋」「25時の愛の歌」といった火曜サスペンス劇場シリーズの母性、太田裕美なら「City Lights」「HAPPY BIRTHDAY TO ME」といった都会の孤独な女性像が光りますが、山川さんといえばやっぱり久保田早紀。彼女の補作をした詞も素晴らしいのですが、最高峰は情景描写が美しい「星空の少年」でしょう。
 
　男性シンガーであれば、中村雅俊の「海を抱きしめて」の包容力にもグッときますが、高倉健さんの主演映画主題歌にして究極のロマンを歌った町田義人の「戦士の休息」の右に出るものはないでしょう。これがデビュー映画だった薬師丸ひろ子も近年カバーしていますが、名曲中の名曲とはこの曲のことという気がします。
 
　また、洋楽の訳詞なら、由紀さおり「雨の訪問者」、郷ひろみ「哀愁のカサブランカ」、西城秀樹「愛の園（AI NO SONO）」といったシリアスものも素敵ですし、クラシックならショパンに抱腹絶倒の歌詞をつけた森山良子の「小犬のワルツ」は山川さん一流のユーモアセンスが感じられますよね。
　アニメソングなら「トム・ソーヤの冒険」の雄大なエンディングテーマ「ぼくのミシシッピー」（日下まろん）。歌手の人生を歌ったものでは、伊東ゆかりの「NOBUKO」や矢沢永吉の「LAST SONG」も感動的です。
 
 　早稲田の仏文をご卒業なさっているだけに、洒脱で品格があって、人生のペーソスにあふれた歌詞こそ山川さんの真骨頂ではないかと思っていますが、今回一堂に聴けるようになることがとてもウレシイ。
　そういえば後進の育成にも励んでおられた山川さん、SMAPや南野陽子の詞で知られる小倉めぐみさんも門下生だったように記憶していますが、なるほど、山川イズムが感じられますよね。
 
　BOXの醍醐味である豪華ブックレットには、山川さんのインタビュー完全版や、親交のあった歌手や作曲家、関係者からの追悼コメントも掲載されるようですので、こちらも楽しみ。濱田高志さんならではの緻密なBOXになるでしょうから、早速予約してリリースを待ちたいと思います。