41年前のライブ盤が、21年ぶりに紙ジャケ復刻！

　日本を代表するシンガー・ソングライターの1人、さだまさしさん。
　グレープ時代を含め旧譜は繰り返し復刻され、メディアの方も、通常のCDからSHM-CD（ こちらで紹介）、UHQCD（ こちらで紹介）とグレードアップされ、1978年の名作「 私花集＜アンソロジィ＞」に至ってはいわゆる“ハイレゾCD”のMQA-CD化（ こちらで紹介）されるなど、マスターピースと呼ぶにふさわしいリイシューが続いていますが、今年は大きな飛躍を遂げた79年にスポットが当てられました！
 
　そう、79年にリリースされた2タイトル、オリジナルアルバム「 夢供養-Special Edition-＜初回生産限定盤＞」とソロとしては初のライブアルバム「 随想録＜初回生産限定盤＞」が、オリジナルに忠実な紙ジャケ仕様でSHM-CD復刻されるというのです！
 
　そのうちライブ盤「随想録」の再発は、99年以来21年ぶり。入手困難な状況が長く続いていたようですし、まさしんぐわーるどの骨頂はライブにあるといっても過言ではないと思いますので、やっぱりオススメしたいと思います。
 
　79年のさだまさしといえば、グレープの解散後ソロデビューしてから3年を数え、プライベートレーベル・フリーフライトを発足させるなど最も脂がのっていた時期。アルバムでは軒並みオリコン1位を獲得していましたが、この年はシングルでも大ヒットを連発し、まさに人気絶頂を迎えていたんですよね。
　中でも「関白宣言」は社会現象化して物議を醸しながらも、国民的ヒットとなってミリオンセラーを記録。弟さん主演で映画化（同時上映は百恵友和の「天使を誘惑」）されたほか、77年のナンバー1ヒット「雨やどり」に続くライブレコーディングとなった「親父の一番長い日」も、12分半もの長尺と日本人初の12インチシングルという形態が大きな話題を呼び大ヒット。2作連続オリコン1位をマークするなど、まさにニューミュージック全盛期のアイコンとうべきトップアーティストとなったのでした。
 
　であるからして、この2枚組ライブ盤には当時の日本一のシンガー・ソングライターに対する観客の愛情や、飛ぶ鳥を落とす勢いとでもいうべき余裕の雰囲気までが収録されている感じ。オリコンでは当然のごとく1位を獲得しています。
 
　内容はといいますと、“全力投球で燃焼し尽くすステージを鮮やかに再現！”“ベストテイクをセレクションして熱い感動を呼ぶ……”という帯コピーの通り、78年から79年にかけて行われたライブの中からセレクトされたものですが、単なる寄せ集めではないのがまさしんぐわーるど。
　オーバーチュアに選んだグレープ時代の「交響楽（シンフォニー）」から、アンコールに選ばれた当時の最新アルバムのラスト曲「ひき潮」まで、休憩を挟む二部構成のコンサートを模して構成されているのです。
 
　コンサート幕開けの定番だった「きみのふるさと」をはじめ、おなじみの「案山子」「秋桜」、このアルバムでしかレコード化されていなかった  「敗戦投手」、「雨やどり」をよりコミカルにパロディした「雨どりや」など、お得意のトークを絡めながら軽快に進んでいきます。のりちゃんと先生にほのぼのする「木根川橋」と「療養所（サナトリウム）」は最新アルバムからの選曲で、大ヒットの「関白宣言」、後の自伝的小説やドラマにリンクして涙する「転宅」、グレープ時代の「掌」や「つゆのあとさき」などの人気曲も当然収録。
　ラストは、オリジナルLPではおまけのアンコールシングルとして別添されていた「ひき潮／epilogue～天までとどけ」で締めくくられています。
 
　今思うと、マイナーとメジャー、シリアスさとコミカルさの絶妙のバランスといいますか、歓喜と哀愁、文学と漫画、陰陽や正負、和洋など、相反する物事が織りなす自然の摂理と言いますか、禍福はあざなえる縄のごとしとでもいうような、日本人らしい人生の真理のとらえ方を地で行く楽曲にハッとすることしきり。それが20代の作品群ですからね。まさに天才、岩崎ヒロリンが“生き神さま”と讃えるのも心から納得という感じがします。
 
　個人的にこれまでその価値が分かっていたとは決していえませんが、今ほど幼少の頃からまさしんぐわーるどに触れてこられたことをつくづくありがたく感じたことはありませんし、さだまさしはコロナ禍の今だからこそ聴くべき音楽ではないかと確信したり、さまざまな重いが胸中を去来しています。
 
　というゴタクはおいといても、このソロ初のライブ盤から41年、現在もコンサート活動を精力的に続けるまっさん。先月には昨年のツアーを収めたブルーレイ「 さだまさしコンサートツアー2019 ～新自分風土記～ 」＆DVD「 さだまさしコンサートツアー2019 ～新自分風土記～ 」をリリース。来月からはコロナで延期されていたコンサートの振替公演も始まるそうですし、さらなるまさしんぐわーるどに、これからも期待させてちょうだいませませ、と思っております。