シンシア、アグネス、ガロやサーカス版も収録！

　今夏、テイチクでは“今では入手困難となった、テレビ黄金期の懐かしの名盤を再プレス！”という謳い文句で、1990年代後半～2000年代初頭にかけて発売されていたコンピ盤のアンコールプレスが決定。
　ラインアップとしては小林亜星アンソロジーシリーズ「 小林亜星CMソング･アンソロジー」「 小林亜星 アニメ・トラック・アンソロジー 」「 小林亜星 TVサントラ・アンソロジー」や、TV時代劇グレイテスト・ヒッツシリーズ「 TV時代劇グレイテスト･ヒッツ」「 TV時代劇グレイテスト・ヒッツ2 」、「 西部警察 PART・I・II・III サウンドトラック盤 西部警察ハイライト編」などが並んでいますが、オススメしたいのはやっぱり「 明治チェルシーの唄」。
　そう、明治製菓・チェルシーのパッケージを使ったジャケットに、あのCMソングを16バージョンも収録した企画盤です。
 
　さて、チェルシーといえば、スコットランドの少女によるカタコトの日本語「あなたにも、チェルシーあげたい」のCMでおなじみ、1971年の発売以来ロングセラーを続けているキャンディー。
　「スコットランド伝統のおいしさ」というナレーション通り、舶来感いっぱいに、それまでにないちょっとリッチなキャンディーとしてお目見えしましたが、当時の子どもにとっては、ネーミングはもとより、バタースカッチやヨーグルトスカッチ（後にコーヒースカッチなども登場）という斬新な味わいもさることながら、凝ったパッケージデザインなど、魅力が満載で持っているだけでプチ優越感を感じられるお菓子でした。
 
　実際、ほかのお菓子と比べてお値段も高級で、遠足のおやつにチェルシーを買うとなると予算に多大な影響を及ぼすので、チョコかスナック菓子を諦めるか、ガムやクッキーのグレードをダウンさせるか大いに迷ったものです。
　かくしてチェルシーを入手した子にはCMの決めゼリフをもじった「アナタニハ、チェルシー、アゲナイ」という辛辣なギャグを言う特権が与えられ、周囲を大いに沸かせたことでしたが、チェルシーのプレステージなブランドイメージが広く浸透していったのには、♪ホラ、チェルシー、もひとつチェルシー～というハイクオリティなCMソングの力も大きかったのではないかと思います。
 
　それが、安井かずみ作詞、小林亜星作曲による「明治チェルシーの唄」。時代ごとにアーティストやアレンジは移ろっても、同じ歌詞とメロディーで歌い継がれてきた名曲です。
　亜星さんによると、商品特性に沿うようスコットランドやアイルランドの古い民謡をイメージしつつ、フォークソングのアコースティックな感じをプラスして新しさを出したそうですし、ズズの歌詞も何遍も書き直しさせられたようですが、その甲斐あって時代がどんなに変わろうが、チェルシーの味わいと同じくエバーグリーンなんですよね。
 
　と、チェルシーの説明が長くなりましたが、このたび再プレスされることになったコンピ盤「 明治チェルシーの唄」は、オリジナルの2005年以来、実に15年ぶりの登場。
　モノラルにステレオ、3番まであるフルバージョンにショートバージョン、15秒のCMバージョンと、いろいろ差違はあるものの、初代となる71年のシモンズから、コンピ盤リリース時に最新だった2003年のCHEMISTRYまで、16組のアーティストによる「明治チェルシーの唄」が収録されている上、ボーナストラックとして4バージョンのカラオケも追加するというお得盤。
 
　ちなみに、収録アーティストをご紹介しますと、72年のガロ、75年のペドロ＆カプリシャス、76年の南沙織、79年のサーカス、81年の八神純子、82年のあみん、84年の大貫妙子、85年のアグネス・チャン、ちょっと時代は飛びますが、2000年の上原多香子というように、爽やかさはもちろん、各時代を象徴する知的でインターナショナルなイメージを持つアーティストがそろい踏み。
　商品イメージやユーザー層を分析した結果なのか、88年の蒲原史子、91年の有澤圭子ではクラシックへとシフトしたり、94年のシーナ（シーナ＆ロケッツ）や97年のPUFFYではロック寄りとなった歴史もきっちり収録されております。
 
　残念ながらはつみ・ひとみやハイ・ファイ・セットなど一部漏れているものもありますし、再プレスにつき近年のEvery Little Thingや秦基博のバージョンは追加されておりませんが、このコンピでしか聴けない貴重な音源も多いので、それぞれのアーティストのファンの方は今回こそお買い逃しなさいませんように！
 
　最後に余談ですが、サブスク全盛時代、パッケージはアナログ回帰で終焉を迎えそうな気配ではありますが、テイチクでひと頃活発だったクロニクル・レーベルの再開を切に希望。高田みづえの未CD化音源もなんとか復刻していただけないものかと願っております。