筒美作品7曲のコンセプトアルバムがアナログ復刻！

　ソニーミュージックのアナログレコード専門レーベルによる「GREAT TRACKS Order Made Vinyl（グレイト・トラックス オーダーメイド・ヴァイナル）」が１周年。
　記念企画としては既に渡辺真知子さんのスペシャルシングル「唇よ、熱く君を語れ」（ こちらで紹介）などがエントリーされておりますが、このたび、谷口雅洋さんのシングル「 ああ無情 」、ジュディ・オングさんのLP「 白の幻想 」、立花ハジメさんの12インチシングル「 REPLICANT J.B. REMIX VERSION 」、国分友里恵さんのシングル「 とばしてTaxi Man 」の４タイトルが追加エントリーされました！
 
　谷口さんに至っては、同時にソニーのオーダーメイドファクトリーにファーストアルバム「 コミュニケーション 」がエントリーされ、初CD化が期待されていますし、何かと食指は伸びるばかりですが、こちらとしましては、やはりジュディ・オングをプッシュさせていただきましょう。
　先日の「徹子の部屋」でも変わらぬ美貌と品格、そして可愛らしさで、まさに“皆さまのジュディ・オング”という感じでしたからね。
 
　さて、今回候補に挙がった「 ジュディ・オング 白の幻想＜アナログ盤(12inch)＞ 」は1979年5月リリース。ワコールのCMソングに起用され大ヒットしたシングル「エーゲ海のテーマ　魅せられて」をフィーチャー、文字通りギリシャ・エーゲ海をテーマにしたコンセプトアルバムです。
 
　思えば73年にCBS･ソニーに移籍して数年、通好みの名曲は多かったものの大きなヒットには恵まれていなかったジュディですが、本作を手がけた酒井政利プロデューサーの分析によると、当時の彼女は時代劇の町娘役の印象が強く、本来の持ち味である国際感覚を生かせていなかったからだとか。
　むろんその時代劇のイメージがアメリカ・NBCのドラマ「SHOGUN」へのオファーにつながったのかもしれませんが、さすがは酒井クリーニング店。過去のヒット歌手のリニューアルに定評のある手腕を存分に生かし、ワコールのCMソングとして、エーゲ海のテーマ「魅せられて」を制作。英語のサビを強調し、半ばゴリ押しともいえる形でジュディを起用したといいます。
 
　結果、エーゲ海ブームの母屋といえる池田満寿夫さんの「エーゲ海に捧ぐ」をしのぐほどの国民的支持を受け、オリコン9週連続１位のミリオンセラーを記録。年間ランキングでは２位にランクインし、創立11年のCBS・ソニーに初のレコード大賞をもたらすという記念碑的ヒットとなったのでありました。
 
　アルバムではそのシングル同様、阿木燿子＋筒美京平コンビの作品を中心に、ゴージャスで洒脱なアダルトポップスを展開しておりますが、ちょうどヒットチャートのトップを独走しているさなかの発売というタイミングもあって、構成はもちろん、詩、曲、ボーカル、アレンジ、演奏までが神がかったように、とにかくハイクオリティ。
　歌謡曲黄金期ならではの贅沢なサウンドや、見目麗しいジャケットも含め、まさにアナログで聴くにふさわしいアルバムといえるでしょう。リリース当時は「魅せられて」の大ヒットがLPのセールスには結びついておらず、オリジナル盤の流通もさほど多くないみたいですから、今回の復刻を心待ちにしていた人も多そうです。
　また、CDでは91年にCD選書として発売されたきりでとっくに廃盤となっていますので、ブルスペ２の高音質CDでの再発を望んでいる人も多いかもしれませんね。
 
　ちなみに、CBS･ソニーには10年在籍したジュディですが、オリジナルアルバムとしてはこの「白の幻想」のほか、74年の「花嫁の耳かざり／美しい伝説」、75年の「愛は生命（いのち）」、79年の「ヒロイン」、80年のライブ盤「ジュディ・オング コンサート」と「麗華の夢」の5枚と寡作。しかも「花嫁の耳かざり／美しい伝説」と「愛は生命」はオリジナル＋カバーという構成なのですが、オリジナル面（前者はＡ面、後者はB面）は全く同一だったします。
　それでもオーダーメイドファクトリーではシード権があるかのごとくで、初エントリーはなんと2004年という優遇ぶりだったんですよね。しかしながらその時は達成ならず、10年の歳月を経て2016年に「 ヒロイン 」が、2017年に「 麗華の夢 +1 」が再エントリーされ、ようやくCD化にこぎつけたという経緯があります。その勢いを借りて「 愛は生命（いのち） 」も追加エントリーされたのですが、残念ながら未達成になっていますので、今回の再評価を機に再エントリーに期待したいところです。
 
　なお、ソニー時代のシングルAB面に関しては、2004年の「　 GOLDEN☆BEST ジュディ・オング Sony Music Years 1973-1983」で杉良太郎とのデュエットシングルを含み完全網羅されておりますので、併せてコレクションに加えてみては。