ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1032
高田みづえ 全シングル・アルバム183曲配信<音楽配信>
シングル26作・オリジナルアルバム10作・カバーアルバム1作、ライブアルバム2作
*2021.1.20配信開始、サブスク&ダウンロード(すべて単曲購入可能)

デビュー45年目にして、全音源デジタル化が実現!

 1977年3月、圧倒的な歌唱力を引っさげ「硝子坂」でデビューした高田みづえさん。
 
 アイドル界では前年の松本ちえこのブレイクによって、ごく普通の女の子がトップアイドルになるという美意識改革が巻き起こった頃。よって広いおでことニキビがトレードマークのみづえさんも、コロコロとした健康優良児の榊原郁恵、まんまる猫背で下がり目の清水由貴子というデビュー同期の2人とともにフレッシュな魅力が支持され、一躍人気アイドルの仲間入りを果たしたんですよね。
 
 トップ10ヒットを連発してその年の新人賞を総ナメにした後も、実力派歌手として活躍。紅白歌合戦に7回出場という実績を誇りましたが、85年に若島津(現二所ノ関親方)と結婚して芸能界をきっぱり引退。以来、87年に若島津も引退してからは相撲部屋のおかみさん業に専念し、今も二所ノ関部屋のおかみさんとして奮闘しているのはご存じの通りです。
 
 とはいえ、時折相撲関係のテレビで元気な姿を見せたり、後援者のパーティーではカラオケを披露していたり、露出がなかったワケではなく、歌のオファーも多かったようで、2015年にはついにNHKの「思い出のメロディー」に生出演。当日は引退以来30年ぶりのステージにもかかわらず往年と変わらぬ堂々とした歌声を聴かせたほか、スポーツ紙にベスト盤の広告も出るなど、古くからのファンを喜ばせました。
 その後も、女優になった愛娘のアイリさんと一緒にバラエティー番組に出るなど再デビューの話も浮かんでいたようですが、その矢先に親方が倒れ、その介護もあってか立ち消えになった様子でした。
 
 それでも現役当時の名曲を支持するファンは多く、昭和歌謡や昭和ポップスのブームで名前が出ることもしばしば。しかしこれほどの実績があり、名曲、名唱ぞろいにもかかわらず、CD化は中途半端な状態が続いていました。やはりテイチク・ユニオンレコードだったためか…。
 ちなみに、彼女の音源といえば、98年に6枚組の通販BOX「高田みづえ全集」(2011年にはパッケージがリニューアルされ「 高田みづえ全集」として再発売)が出ていますが、市販盤としてはシングル曲ですら、A面コンプは2003年の「シングル・ベスト30」、AB面コンプは2005年の「コンプリート・シングルズ」( こちらで紹介、2008年には「 コンプリート・シングルズ 」として廉価発売)まで待たねばならなかったほど。
 
 オリジナルアルバムに至っては、復刻は一切なし。空前の復刻盤ブームが来ても、CD化されたオリアルは現役当時にリリースされたもののみ、という状況だったんですよね。
 デビュー同期では、清水健太郎はさておき、狩人、榊原郁恵、荒木由美子、清水由貴子(ユッコは追悼盤でしたが…)ら新人賞レースを競い合ったアイドルは皆、オリアルまでのCD化が実現(オンデマンドCDを含む)。当時は格下の人気だった香坂みゆきでもBOXがリリースし、神田広美もコンプリートされた中でのことですから、テイチクに憤怒するファンも少なくなかったといいます。
 
 と、前置きながなくなりましたが、すっかり諦めていたところに、今回のニュース! 残念ながらCDというパッケージではありませんが、未CD化だった59曲を含む全183曲が配信という形でデジタル音源化。サブスク( Amazon Apple Musicなど)、ダウンロード( amazon レコチョクなど)ともに一挙解禁となり、ついに全音源のデジタル音源がコンプリートされることになりました!
 
 内訳はといいますと、シングルは「硝子坂/DOMO DOMO」から「チャイナ・ライツ/カーテン・コール」までの26作、オリジナルアルバムは「 オリジナル・ファースト 」から「 びいどろざいく 」「 ドリーム・オン・ドリーム 」「 ふりむけば秋 」「 イマジネーション 」「 恋人たち 」「 プリズム 」「 ガラスの花/愛の終りに 」「 愛をあたためて 」「 愛のモノローグ 」までの10作。
 これにカバー集の「 あの日に帰りたい 」、ライブ盤の「 高田みづえ「ファースト・コンサート」 ~萌える青春に翔ぶ~ 」「 高田みづえ ファイナルコンサート “微笑みとやさしさの中で” 」、さらにベストアルバムのみに収録されていた「 陽のあたる坂道 」を含む全183曲(同一楽曲別音源含む)となっています。
 
 なお、ダウンロードに関しては、これまでにも51曲が配信されていたそうで、今回132曲が新たに追加になったという形とのことです。
 
 さて、約8年間というキャリアの中で、初期の島武実+宇崎竜童コンビによるロック演歌路線から、中後期のニューミュージック歌謡やポップス歌謡、フォーク演歌路線まで、カバー曲も含め何でも来いという感じで、クロスオーバーかつハイレベルな楽曲を展開したみづえさん。
 アルバムも含め、最初から最後までハズレなしなのですが、個人的にはやっぱり初期のアイドル時代が大好き。
 ノリにノっている時期の宇崎作品ということで、前年の内藤やす子や百恵ちゃんのロック演歌テイストの延長のように見えますが、新進気鋭の島さんの感覚的な詞世界(ソニーの酒井さんが目を付けてキャンディーズに起用するのも無理からぬ才能がほとばしっていますね)と相まってとにかく斬新。
 特に第2弾「だけど…」から第3弾「ビードロ恋細工」の流れは唯一無二のインパクトがありますが、そういう点では全編島+宇崎コンビが手がけたトータルアルバム「びいどろざいく」がオススメ。みづえさんも「スキンライフで洗顔してもニキビは治らないけど、この程度の歌なんか楽勝よ!」といわんばかりにクールでエラそうな歌唱ですが、それが鼻につくかどうかギリギリのラインで収まっていて、とにかくクセになるんですよね。
 
 とはいえ、なんとなく下世話な感じがしたのも事実で、そういう意味では、品格を重んじる松本隆さんの詩世界で展開された2年目の78年(臨発による平凡募集歌「なぜ…」を除く)のバランスこそ必聴。
 特に、ピンク・レディーのメガヒットで絶頂期を迎えていた都倉俊一さんとのコンビによる「花しぐれ/デイ・ドリーム」「パープルシャドウ/火の鳥」がティーンアイドルとしての高田みづえの真骨頂と思っておりますが、このコンビのアルバムが出ていないことが今もって残念な限りです。
 
 松本隆シングル三部作としては、ラストにして筒美京平先生作曲の「女ともだち/泣きながらカナリヤ」ももちろん名曲には違いありませんが、みづえソングならではのスリルを感じられないのが惜しいところ。
 ラストシングルの筒美作品「チャイナ・ライツ」も少し中途半端な印象が拭えきれなかったので、筒美先生とは相性の問題があったのかもしれませんが、その印象を払拭するのが79年のアルバム「ドリーム・オン・ドリーム」に収録された松本+筒美コンビ書き下ろしの2曲。
 特に「白亜館」というナンバーはこのサイトの開設当時から推しておりますが、太田裕美さんの名曲「ピッツァ・ハウス22時」のティーン版といったシチュエーションとなっていますが、その太田さん版に勝るとも劣らない出来なのです。
 であるからして、今回はこれともう1曲、70年代の田舎出身の女の子の上京物語にして同窓会モノローグ「影絵町」(太田さんというより、森山良子さんに書いた高度成長以前の松本ノスタルジー的世界観というか、貧しく強気な感じがマッチしていて出色)を真っ先に聴きたいと思っております。
 
 ちなみに、このアルバムは、初期路線に終わりを告げ、ニューミュージック路線へとシフトする端境の作品。タイトル曲にしてデビュー時の島+宇崎コンビに回帰したシングル「ドリーム・オン・ドリーム/告白びより」のほか、前述の松本+筒美作品、竜真知子+井上忠男コンビやNSPの天野滋作品と、多彩な作家陣が書いた名曲がずらり。一部のナンバーはBOXでCD化されていますが、今回7曲が初デジタル化となりますのでアルバム単位でのダウンロードもオススメします。
 
 また、彼女の音楽面の転機としては、シングルでいえばこの次作、松山千春のカバー「青春Ⅱ」を経て出した谷山浩子提供の「子守歌を聞かせて」あたり。
 結局「子守歌を聞かせて」がパッとせず、その年の紅白に落選してしまうみづえさん。ところが、フランク・ミルズのピアノ曲に日本語詩を付けたB面の「潮騒のメロディー」が 有線で火がついてA面に差し替わり、結果的には低迷期の突破口となるロングヒットを記録。その余波を受け、次のサザンオールスターズのカバー「私はピアノ」が久々の大ヒット(間の「どうして私を愛したのですか」は発売延期で短命となっています)となり、紅白にもカムバック。きっちりと路線が定まっていったのですからね。
 
 そういう意味では「青春Ⅱ/あなたへ」と「子守歌を聞かせて/潮騒のメロディー」という2枚のシングルを収録し、島+宇崎コンビや谷山浩子、松本+松任谷正隆コンビなどの作品でまとめたアルバム「ふりむけば秋」が初期の集大成であり、アイドル脱皮のターニングポイントだったといえるでしょう。そうして歌謡界における高田みづえという歌手の立ち位置が確立し、人気も安定していったような気がしますね。
 
 いずれにしても、ファン悲願となるオリジナルアルバムやライブ盤のデジタル音源化が実現して喜ばしい限り。感涙にむせぶファンはと思いますが、個人的にはやっぱりパッケージ派につき最終的にはCDでコレクションしたかったりして。ですので、これが反響を呼んでCD化につながることを祈っています。この際、全シングルと同じく、MEG-CDでも文句は言いません…。
 
 

(2021.1.20)

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