ユーミン提供作を含む、山本潤子ユニットの1st！

　世は空前のシティポップ礼賛時代。その一方で定義がよくわからない、何でもかんでも言ったもん勝ちというような声も聞かれますが、入手困難だった音源が発掘、復刻されることを思えば万々歳。
　素直に喜ぶのが本当ではないかと思っておりますが、今回ビクターから登場する「＜マスターピース・コレクション＞シティポップ名作選」シリーズもまさにありがたき復刻です。
 
　今回ラインアップされたのは、杉真理「 MARI & RED STRIPES +1＜生産限定盤＞ 」、ブレッド&バター「 SKY＜生産限定盤＞」「 SUMMER KNOWS＜生産限定盤＞ 」、21「 ブルー・コースト・イン＜生産限定盤＞」「 GREETING +2＜生産限定盤＞」、りりィ「 モダン・ロマンス +1＜生産限定盤＞」、石黒ケイ「 YOKOHAMA Ragtime +2＜生産限定盤＞」、nanan「 c'est du nanan !＜生産限定盤＞ 」、April「 10cc of Tears＜生産限定盤＞」、7人の女性アーティストによるカバーアルバム「 Voice Colors＜生産限定盤＞」、惣領泰則 & ジム・ロック・シンガーズ「 グッドバイ!グッドバイ!グッドバイ!＜生産限定盤＞」、高木麻早「 PICK ME UP＜生産限定盤＞」、丸山圭子「 MISS LONELY＜生産限定盤＞」、JIVE「 FIRST LETTER＜生産限定盤＞」、REICO「 OFF LIMITS＜生産限定盤＞」、南 佳孝「 ヌード・ヴォイス＜生産限定盤＞」「 ブルー・ヌード＜生産限定盤＞ 」という17タイトル。オリジナルリリースは70年代から2000年代にかけてと幅広いですが、現在入手不可能なものや、初CD化も含むというもの。最新リマスタリングで最新ライナーノーツ封入とのことなのに税込1,980円というお値段も魅力です。
 
　大貫妙子やEPOら女性アーティストによスゴイ選曲の絶妙カバー集「Voice Colors～あなたといたころ～」（ こちらで紹介）をはじめ、ユーミンがネーミングしユーミンファミリーのハイ・ファイ・セット、麗美、杉真理もコーラスで参加したREICO（田口俊＆堀口和男）や、今回初CD化となる高木麻早、丸山圭子、りりィといった、70年代の女性シンガー・ソングライターの80年代作品も見逃せませんが、今回オススメしたいのは山本潤子さんが参加したユニット。
　吉川忠英、高水健司、浜口茂外也、新川博といった旧知の各氏と結成したnananのファーストアルバム「 c'est du nanan !＜生産限定盤＞ 」と、潤子さんにとって最後のコーラスグループとなったAprilのファースト「 10cc of Tears＜生産限定盤＞」。中でも2003年発表の後者を大プッシュしたいと思います。
 
　伝説のグループ、赤い鳥からハイ・ファイ・セット、そしてソロへと、60年代から卓越したボーカル力を武器に活動を続けた山本潤子さん。
　かの小田和正さんが「稀代のボーカリスト」と称えていることでも分かるように、どうしてもメインボーカルとしてフィーチャーされ続けてきたワケですが、彼女自身がこだわって本当にやりたかったのがコーラスだったんですよね。
 
　Aprilは、ショーン星野、花木佐千子、松谷麗王というメンバー各氏を率いて、潤子さんが2003年に結成した男女混声のコーラスグループ。アルファ時代のハイ・ファイ・セットをディレクションした有賀恒夫さんをプロデューサーとして迎え、“おとなな青春”をキーワードに2枚のアルバムを残していますが、今回再CD化されるのはファーストの「10cc of Tears」です。
　グレン・ミラーの「Moonlight Serenade」や、SASというかレイ・チャールズのカバーの英語詞で歌う「いとしのエリー ～Ellie,My Love～」といったスタンダードナンバーも歌っていますが、注目すべきはオリジナル曲。赤い鳥の原点である山上路夫＋村井邦彦コンビが「春のランチ」を、ハイ・ファイ・セットの原点といえるユーミンが「Finally」を、それぞれ書き下ろしているのです。
　ユーミン作品ではヒット曲「輪舞曲（ロンド）」のカバーも収録されているので、往年の赤い鳥、ハイ・ファイ・セットのファンはもちろん、ユーミンのファンも必聴。当時はあまり話題にもならず、すぐ廃盤になりましたので、ユーミンファンにも知名度も低い模様。今回のチャンスを逃さず、ぜひお聴きいただければと思います。
 
　それにしても気になるのは山本潤子さんの近況。先月出たアルファミュージックのライブ映像集「ALFA MUSIC LIVE」（ こちらで紹介）でも、あらためて潤子さんの偉大な功績と不在の寂しさを実感したことですが、回復していつの日か復帰されることを心からお祈りしています。
　それまでは、ファンのリクエストをもとに全キャリアをまとめたBOX「Junko Yamamoto ALL TIME SONGS」（ こちらで紹介、解説などを担当させていただいております）を聴きながら待ち続けたいと思います。