山口百恵提供作を含む名盤が“ハイレゾCD”化！

　今月、20年ぶりとなるセルフカバーアルバム2タイトル「 新自分風土記I~望郷篇~ 」「 新自分風土記II~まほろば篇~ 」をリリース。ますます精力的な活動を続けるさだまさしさん。
　セルフカバーを聴くとオリジナルも聴きたくなってしまうものですが、さださんは日本を代表するシンガー・ソングライターの1人だけに、旧譜はグレープ時代を含め繰り返し復刻されております。
 
　メディアの方も、通常のCDからSHM-CD（ こちらで紹介）、UHQCD（ こちらで紹介）と再発されるたびにグレードアップしてきましたが、さらにこのたび、ソロ３作目となった名作「 私花集<アンソロジィ>(2016リマスター)(完全生産限定盤) 」が、いわゆる“ハイレゾCD”「MQA-CD／UHQCD」化されることになりました。
　 こちらでも紹介しましたが、完全生産限定盤のワーナー「ハイレゾCD（MQA-CD ×UHQCD）名盤コレクション」シリーズ」にラインアップされたのです。
 
　さて、さださんといえば、既にグレープ時代から文学性の高い作品と、ユーモアを兼ね備えた異色のシンガー・ソングライターとして根強い人気を誇っていましたが、当時はまさに上り調子の絶頂期。
　77年には、そのコミカルな一面をクローズアップしたライブシングル「雨やどり」で初のオリコン1位を獲得。アルバム「風見鶏」も1位をマークする大ヒットとなり、お互いにファンだったという百恵ちゃんにシングル「秋桜／最後の頁」をプレゼント。フォーク界のトップスターとなったのでありました。
 
　特筆すべきは、70年代の乙女たちにとってアイドル的存在だったこと。今も岩崎宏美が「生き神様」と崇めておりますが、まさしんぐわーるどの類い希な文学性やユーモアは、ヒロリンのみならず、天地真理、南沙織、山口百恵、高田みづえ、清水由貴子ら、錚々たる女性アイドルを心酔させたものですし、少女漫画では叙情的な詩世界からのインスパイアだけでなく、まっさんをモデルにしたメガネ男子を憧れの彼に設定した作品が目立ったほど。
　まさしんぐマーケティングも乙女チックなユーザー開拓は心得ていたようで、そのへんは味戸ケイコさんを起用したジャケットを見てもわかるでしょう。
 
　ということで今回「MQA-CD／UHQCD」化される「 私花集<アンソロジィ>(2016リマスター)(完全生産限定盤) 」は、前作「風見鶏」（こちらもけだし名盤！）からわずか8カ月後の1978年3月リリース。
　オリコン1位を獲得した大ヒット作で、まさしんぐサウンドに欠かせない渡辺俊幸さんのほか、前作同様、グラミー賞アレンジャーのジミー・ハスケルも4曲のアレンジを担当しております。
　台湾に留学したさだ繁理さんを思って書いたというシングル「案山子／SUNDAY PARK」を含む全10曲ですが、今回は過去の再発同様、リカットの際にリアレンジされた「檸檬／加速度」のシングルバージョンをボーナストラックとして追加収録されております。
 
　お得意の文芸翻案もの「檸檬」や、大きな話題となった「秋桜／最后の頁」のセルフカバーなど、名曲は多いのですが、ファン人気ナンバー1なのがラストを飾る「主人公」。
　毎度申しておりますが、1990年代以降に提唱された一人一人が主人公的な学校教育や、自分探しなどの人生哲学ブームのルーツといえるような作品で、個人的にはこの曲などに触発されたコアなまさしんぐファンには、教員や公務員になった人が多かったため、まさしんぐ概念が社会に反映されていった…などという解釈をしております。
 
　ということで、コアなファンには長年愛聴してきた名盤がハイレゾでどう音が変わるのかを確認する人も多いのではないかと思いますが、一般的なCDプレーヤーでも高品質なUHQCDとしてフツーに再生できますので、対応機器を持っていなくても安心して買い替え、買い増しを。
　過去の再発と同じく、アルバム解説やLP時代のオリジナル・ライナーノーツ復活（さだまさし、吉田正美の解説・楽譜）もありますので、初めて入手するという人にもやっぱりこちらをオススメします。