筒美京平のサウンドドラマで綴る、70’sヤングのテーマ!
昨年末こちらでご紹介したBlu-spec CD2による名盤復刻シリーズ。一報を入れてから発売まで間があるということで、アーティスト別にピックアップして紹介してまいりましたが、気がついたら早ひと月を切り、もはや秒読みとなっております。
ショップによっては今から予約しても発売日に入手できないかもしれませんけど、このアルバムはぜひともご紹介させていただくことにいたしましょう。そう、我らがシンシア、南沙織さんのアルバムです。
今回のシリーズは、内容によるチョイスというよりも大ヒットしたオリジナルアルバムというラインアップですが、シンシアの場合は最初からブレイクしているので、71年のデビューアルバム「 17才 」、72年のデビュー1周年記念盤「 純潔・ともだち 」、そして73年のCBS・ソニー5周年記念特別盤「 傷つく世代 」というヒットアルバムが選ばれております。
シンシアの初期は、有馬三恵子+筒美京平コンビが手がけたシングルでばく進しますが、アルバムはというと書き下ろしは少なく、当時のアイドルのLPの定石、オリジナル+カバーという構成がほとんど。ネイティブスピーカーなので英語曲は原語というのが大きな特長で、今回の3枚も基本的にはそういう構成です。
ただ、シンシアの場合、歌いながら歌唱力や表現力を身につけていったアイドルであり、中期まではキャリアを重ねるごとにアルバムのクオリティも上げていったシンガー。という意味では、フレッシュな魅力だけで押し切った「17才」も、ヤングのテーマの出発点「純潔/ともだち」もそれぞれに味わい深いのですが、この3枚ではやっぱりヤングのテーマのコンセプトが極まった「傷つく世代」がイチバンでしょう!
73年5月にリリースされたこの「 傷つく世代 」は、先行シングルにしてオリコン3位の大ヒットとなった「傷つく世代/昨日の街から」をベースに、書き下ろしのオリジナル曲、洋邦のカバーとバラエティーで構成。
一見、ありがちな寄せ集めアルバムかと思いきや、なんとこのアルバム、筒美先生が構成・音楽を担当したコンセプト・アルバム。サウンド・ドラマでつづるヤングのテーマと銘打ち、SEを多用して音楽でひとつの物語を構築しているのです。
オープニングの都会の雑踏から、海辺の波音、雷や雨音、ジェット機、車など、歌のシーンに合わせたSEのほか、シンシアが妹・ロージィに電話でおしゃべりするシーンも入っていたり。
シングル曲にも冒頭にSEかぶっておりますけど、「昨日の街から」の汽笛なんかは、デンスケ片手にSLとかの生録がブームを読んだ時代を反映してるといえそう。このへん、今回のブルスペ2で聴く意義も大きいんじゃないかと思っております。
オリジナル曲としては、シングルヒット「早春の港」や「遠い海」「あこがれの旅」などソフトロック系の小品に混じって、オージェイズの「裏切り者のテーマ」を思わせる「純情」といった筒美先生お得意のフィリーソウルがひときわ目立っていますが、これに有馬先生のヤングの思いをハードにぶっつけた詩が融合する展開にはシビれること請け合いです。「わたしは ふたしかな愛が好き…傷ついてもいい 人間らしく生きたいから」という酒井さん作であろう秀逸な帯コピーが泣かせますよね。
一方、カバー曲の方も、臨発でシングルカットされた「カリフォルニアの青い空/雨に消えた初恋」から映画「華麗なる賭け」の主題歌「風のささやき」という英語カバー、なんと奥村チヨのB面曲「愛の花咲く頃」まで、非常にスリリングな選曲となっています。
また、コーラスにはインテリ男女混合ユニット、リバティ・ベルスを起用し、お洒落な雰囲気を演出しているのも見逃せません。とにもかくにも人気絶頂の自信といいますか、シンシア独特のグルーヴ感といいますか、とにかく安定したパワーが心地よいアルバムです。
ジャケットのサイケな衣装はまさに当時のヤング、色味やプリント柄は現代の原宿ガール的な気もしますね。ちなみに当時のオリコンのアルバムチャートでは9位をマークしています。
というこのアルバム。91年のCD選書、2006年の紙ジャケ(BOX「Cynthia Premium」の1枚)に続いて3度目のCD化となりますが、果たしてブルスペ2でどんな感じに聴こえるのか興味津々。ですので、やっぱり買い増し決定です。もちろんこの3枚だけだと淋しいですから、今後もゾクゾクと続くことを願ってます!
あ、まだシンシアをちゃんと聴いたことがなくって、いきなりオリジナルアルバムは…という方はシングルコレクション「 GOLDEN☆BEST 南沙織 コンプリート・シングルコレクション 」(こちらで紹介)をどうぞ。
このベストは懐刻盤仕様で、シングルジャケットの別カット写真満載のオールカラーブックですし、シンシアが全幅の信頼を置ける小栗俊雄さんによるシンシア・レコーディング・ヒストリー(近況を含む秘話満載!)ですから、ファンの方でまだ持っていない人もぜひお求めを。手前ミソですはありますが、シンシア・ベスト史上最高の超お買い得盤ではないかと思っていますから!
(2013.3.22)
*名盤復刻シリーズについての詳細は、特設サイトまたは
SonyMusicShop
をご参照ください。
復刻タイトルのリクエストもできます。