ビクターのマニアックアイドル、究極のコンピ！

　レコード時代から、廃盤市場や復刻市場では圧倒的人気を保ち、コレクター心を刺激してやまない女性アイドル。
 
　1970年代から始まったといわれるアイドルポップスというジャンル切り拓いたのが、当時新進レコード会社のCBS・ソニーであり、その成功を追いかけるように力を入れ、好敵手となったのが老舗のビクター。この双璧をなす両巨頭が互いに切磋琢磨し、後進を牽引し、ヤングアイドルというジャンルを押しも押されもしない一大ビジネスへと成長させていったのは疑いようのない事実です。
 
　2000年代以降、名の通ったほとんどのアイドルは一通り復刻されているように思いますが、アイドルフリークはビッグネームのみならず、シングルを数枚だしただけで引退したようなB級、C級を珍重するというのが定石。
　ビッグネームを多数有するソニーの場合、単独ベスト中心につきマイナーアイドルは出足こそ遅かったようですが、2008年からはアイドル・ミラクルバイブルシリーズを市販からオーダーメイドファクトリー（ こちらなどで紹介）へと販路を移して展開。それこそD級、E級といえるような無名アイドルまでを、こそげ取るように復刻してきました。
 
　一方、ビクターはアイドル・ミラクルバイブルシリーズには参加していませんが、マイナーを含む自社アイドルの歴史的コンピ盤は80年代からしっかりとリリース。
　例えば86年の「宝石箱 アイドル伝説」、それをひな形に95年にTWIN BESTシリーズとしてリニューアルした「アイドル宝石箱」、2003年に初回発売された「デビュー！～ビクター・アイドルPOPS デビュー・シングル・ヒストリー～」、2014年のTWIN BESTシリーズの１つとして突然出た「アイドル・ポップス黄金時代」（ こちらで紹介）というように、ビッグネームのヒット曲に紛れて誰も知らないような女性アイドルソングがたくさんCD化されてきたのですね。
 
　またビクターの場合は、P-VINEの「お・し・え・てアイドル」シリーズや、Hotwaxの「Girls,It ain't easy」シリーズ（ こちらで紹介）など、持ち込みの企画にも対応し、そこでの初CD化も多かったイメージがあります。
 
　それでもこぼれてしまうものがあるのは致し方ないと思っておりましたが、ここに来て新たな企画が登場！　その名もズバリ「 ビクターアイドル超絶レアトラックス<1970年代編> 」！　1970年代のビクター女性アイドルの超絶レアトラックのみ全23曲を収録したという大英断の好企画となっております。
　リストを拝見したところ、前述のコンピ盤に収録されCD化済みのものもありますが、確かにマニアが泣いて喜ぶ超絶レア音源ぞろいのようです。
 
　現時点での予定曲を年代順にチェックしますと、最も古い物で、特撮ものでも人気を博した牧れいの72年作品。ビクターの文化放送系POPレコードレーベルから、翌年にかけてリリースしたシングル2枚のB面曲「恋はかんじるもの」「帰りたくないの」だそうです。デビュー同期はビクターのアイドルポップス第1号、麻丘めぐみだと思いますが、あちらはGAMシリーズ。新3人娘の隆盛で流行歌の主流になるアイドルポップスですが、黎明期は老舗のビクターにとってはまだ傍系という感じだったのでしょうかね。
 
　続いては73年デビュー、「スター誕生！」で百恵ちゃんと同じ決戦大会でスカウトされた松下恵子。同じスタ誕出身でビクター期待のイチオシ新人だった桜田淳子と同期で、麻丘めぐみとともに、ビクターさわやか3人娘としてプッシュされたこともありました。デビューシングルは両面ともCD化済みですから、ここでは74年の第2弾「ふるさとの詩集（ポエジー）／ひな菊の首飾り」がめでたく初CD化。岡崎友紀が歌った筒美京平作品を改題したものなので、筒美フリーク必携です。
 
　岩崎宏美が颯爽と登場した75年は、「君こそスターだ！」出身の石田文子（あやこ）。「わたしの恋はシャボン玉／恋のときめき」「あそび／一番星」という全シングル2枚4曲をコンプリート。阿久悠＋井上忠夫コンビの佳曲で、B面は初CD化です。素晴らしい美声の持ち主で曲も良かったのに、やっぱりヒロリンの影に隠れてしまった感じでしょうか。
 
　目黒ひとみ、北村優子がビクター新人のツートップだった76年度からは「全日本歌謡選手権」で勝ち抜いた竜エリザ。筒美京平作のデビューシングルB面曲「心が晴れるまで」と第2弾「そばに来て、ここに来て」。
　ほかには、みずきあい「愛はひき潮／霧雨のメランコリー」が入っていますが、Ａ面は松本隆作品なので風街フリークは要チェックですぞ。
 
　そして77年。ビクターでは前年デビューのダークホース、ピンク・レディーが独走し始めた年ですが、そういう意味でも、PLファンにウレシイのが「おはよう！こどもショー」で注目された小学生アイドル、リトル・ピンク。
　PLと同じビクターということもあって、ちびピンク・レディーという感じで公認っぽい雰囲気がありました。こどもショーで毎朝流れたデビュー曲「ピンクのいちご」は通販限定のCD-BOXでCD化されているため、第2弾「わたしはタバサ／おフロにはいりましょッ」がチョイスされています。
 
　ほかにも77年は豊作（？）で、双子のはつみ・ひとみの林春生＋馬飼野俊一というチェリッシュコンビによるデビュー曲「花時計」、レイシー！ファンシー！セクシー！な恵レイシー「可愛さはちょっぴりセクシー」、スタ誕出身の梓真由美「白い猫おいで／蒼い闇ん中」と、果たしてアイドルと呼んでいいのか微妙なセレクトとなっています。
　これならティファニーの「2人だけの結婚式」を入れてくれたっていいと思いませんか？
  
　石野真子がデビューした78年は、まず君スタ出身の古賀栄子。「夕だち日記／勇気下さい」「逢いたさ指数／コバルトの好きな女の子」という全シングル2枚です。前者は筒美京平ナンバーで、Ａ面は太田裕美「恋人たちの100の偽り」の没バージョンを焼き直して完成させたものでCD化済みですが、B面は待望の初CD化。後者は明星読者にはおなじみ、集英社・コバルト文庫のキャラクターとして歌ったイメージソングで、イルカが作曲しています。
　78年デビューの森まどかは、79年の第2弾にして小泉今日子「私の16才」の元歌として知られる「ねえ・ねえ・ねえ」のB面曲「マイ・ボーイ」がセレクトされています。
 
　と書き連ねただけでも、まさにビクターの蔵ざらえ。なんとも濃く、顔すら知らない人も含む、究極のマニアックコンピですが、狂喜乱舞する人も多そう。70年代はよくわからないという人でも、80年代編へと続ける意味でも購入必至。お値段はちょっと張りますけど、こういう企画を望む方は、とにもかくにも早めのご予約が大事ですぞ！