ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#912
小坂明子/オリジナルアルバム・コレクション
(2018.12.21発売、DQCL-3488¥ 8,000+税)*Blu-spec CD2、オーダーメイドファクトリーで商品化が実現しました!

ついに復刻!ワーナー時代4作の紙ジャケBOX!

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 1973年のヤマハ・ポプコンと世界歌謡祭でWグランプリに輝き、彗星のごとくデビューした小坂明子さん。
 
 あれから45年、国民的大ヒットとなった「あなた」はずっと聴き継がれ、歌い継がれている名曲ですから、今さら語るまでもありませんが、あの時、何よりも世間の度肝を抜いたのは、16歳の現役女子高生による自作自演によるナンバーだったということ。
 それもいかにも天才ピアニストでございというようなタイプではなく、アッコちゃんという呼び名にふさわしく、ぽっちゃりふくよか、内気だけど笑顔が素敵な女の子の弾き語りだったからこそ、余計に話題に上り、好意的に迎えられたような印象があります。
 
 ちょうど花の中3トリオやフィンガー5の人気上昇と同じ時期だっただけに、同じミドルティーンアイドル的なイメージといいますか、まだ知名度の低かったポプコンがフォーク界の「スター誕生!」的にとらえられたというか、メディアではアイドル的な扱われ方もしていましたけど、特筆すべきは支持層の厚さ、それもヤングのための流行歌を快く思っていないような大人たちまでもが魅了されたこと。そうでなければあの時代、短期間でダブルミリオンに迫るセールスを記録することなど到底無理な話ですよね。
 個人的な思い出をたどってみても、当時のレコード店ではお年寄りまでもが「あなた」を買い求めていた光景がずっと脳裏に焼き付いております。
 
 ただ、「あなた」が余りにも名曲で、余りにも売れすぎたせいで、その後どんなにいい曲を出そうが、あの鮮烈なイメージを覆すことはできなかったのも事実でした。それはビッグネームにもかかわらず、旧譜の復刻が一向に進まないことにも影響を及ぼしているように思っていましたが、なんと、ここに来てついに登場となります!
 
 小坂明子の初期、ワーナー・パイオニア時代のアルバム全4枚を、紙ジャケ仕様のBlu-spec CD2で復刻しセットしたBOX「 小坂明子 オリジナルアルバム・コレクション icon」!
 今回は、ワーナーミュージックのアルバム復刻も実績を持つ、ソニーミュージックのオーダーメイドファクトリーからのリリースとなっておりますが、うち3枚が初CD化とはいえ、なんとエントリー即商品化が実現。まさに待望と申しますか、往年の小坂明子ファンの期待値がマックスだったことを物語っておりますね。
 
 というのもアッコちゃんのワーナー時代の音源は、レコード時代にはベストすら編まれていなかったようですし、CD時代になってからも移籍後のSMS(ワーナー・パイオニアから資本撤退した渡辺プロの興したレコード会社)時代を中心にしたベスト(渡辺プロのテープメーカー・アポロンから86年に初発売)に「あなた」と「もう一度」が収録されたほか、本家ワーナーから88年に「あなた/青春の愛」がCDシングルで、94年のQ盤「音泉」シリーズでファーストアルバムが復刻された以外はなかなか進まず、ほぼ未CD化の状況が長く続いていました。
 復刻ブームが訪れた2000年代に入っても、キングから発売されたヤマハ・ポプコン系のベストにB面曲も含む6曲が収録されただけで、本家ワーナーでは2005年のミニベスト「究極のベスト」で8枚のシングルA面全曲+1が何とかCD化されたに過ぎませんでした。
 シングルAB面全曲がCD化されるのは2011年に出た「 小坂明子 スーパーベスト・コレクション 」まで待たねばなりませんでしたし、それすら販売チャネル違いで、セカンド以降のアルバム曲は復刻の気配すらなかったわけですからね。
 ちなみに、SMSからフィリップスへ移籍しダイエットでイメチェンを図った83年に出された「 AGAIN 」は、金澤寿和さん監修のLight Mellowシリーズの一環として昨年CD復刻されております。
 
 で、今回めでたく復刻される4枚のアルバムを簡単に紹介しますと、まずファーストは74年2月発売の「あなた/小坂明子の世界」。
 シングル「あなた/青春の愛」が大ヒットしている最中に緊急発売されたような感じでしたが、それを証明するように、自作曲は「あなた」のリプライズを含め半分の6曲。残りは、高木麻早のファーストアルバムに入っていた「風が吹いてくれば」やウィッシュが後にシングルリリースする「六月の子守唄」「そんなあなたが」など、ヤマハの名曲集となっています。
 結果、ボーカリストとしてのみずみずしい才能も開花したといえますが、個人的なオススメは、あどけなさの中に音楽の楽しさがあふれている「二人でいれば」。小1の夏休みによく聴いた思い出があり、一時期はテーマソングのように口ずさんでいた大好きな曲です。
 なお、このファーストのみCD化済みですが、今となっては入手困難なので再発を待っていた人も多いことでしょう。
 
 続くセカンドは、74年11月発売の「愛のメルヘン」。
 引き続き自作品とヤマハ系カバーという構成ですが、第2弾シングル「もう一度/ふたりだけの世界 」とそれに続く「 丘の上の教会/最後のラブレター 」の2枚のシングル、さらに74年を代表するヒット曲となった「あなた」を再収録している分だけ、自作品の割合が高くなっています。アッコちゃんの自作品には、チッチとサリーのおはなしのような、ほのぼのとした愛らしさがありますよね。
 ヤマハ系は「サルビアの花」「あなたの心のかたすみに」という多くのカバーが存在する名曲をピックアップ。よりイイ曲に聞こえるのは、やはりボーカルがあっこちゃんの美声ということに尽きますね。萩田光雄アレンジのライトメロウな感じは、小坂明子フォロワーとして同月にデビューした太田裕美へとつながる雰囲気。そういえば、地声からファルセットにつながる部分の多用も、筒美京平先生が太田さんで踏襲させた部分なのかもしれません。そういう意味では太田裕美ファンに聴いてきただきたい1枚です。
 なお、注目すべきはワンちゃんと一緒にニッコリ微笑んだジャケット。気さくな人柄が浸透したせいでしょうか、最もアイドルっぽい感じですが、LPはポスター付きでありました。改めて見ると、PTAも推薦するフォーク界のアイドルというか、NHKとかが好むアーティストというイメージですよね。そういうことでNHK「レッツゴーヤング」のレギュラーに起用されたのではないかと思っています。
 
 次の「ひとりごと」は、約1年の間があいて75年10月に発売となったサード。先行シングル「愛する人のために」「あこがれ/ごめんなさい」、リカットされる「ビートルズをおぼえていますか/赤い涙」を収録しております。
 アッコちゃんのLPといえば、ヤマハ出身のシンガー・ソングライターらしく楽譜付きでしたが、このアルバムには、まさにアッコのひとりごととでもいうべき原詩も掲載。それが何とも苦悩を感じさせるような印象で、今にして思えば「あなた」の呪縛を振りほどこうとする様子がまざまざと記録されているかのよう。
 メガヒットを持つ歌手ならではの宿命というか、超えねばならない試練なのでしょうが、この当時のアッコちゃんといえば、レッツヤンで、すうとるびと明るく掛け合いをしていた頃。冗談とはいえ、山田隆夫にからかわれておどけたりすることも多々あったように記憶していますが、そういう背景も含め18才の少女の胸の内を思うと、この内省的な日記のようなサードはヒジョーに感慨深いのであります。むろん世相を映しマイナー調の楽曲ばかりが流行った時代背景もあるでしょうがね。
 なので、小坂ファミリーによる「私が一番好きな人」「今の私に」 という組曲風の流れにホッとするのです。
 
 そしてワーナー時代のラストは76年8月の「海とショパンとバーボンと」。
 素晴らしくキャッチーなアルバムタイトル曲をはじめ、3曲に山川啓介さんを起用。そのせいもあって、ミュージカル的世界観が繰り広げられたような印象です。「Happy Now」に象徴されるように、前作と比べるとぐっと明るく、前向きになっていますが、それこそが小坂明子の本質であり、魅力ではなかったか、そう実感させる好盤だと思います。
 アレンジャーの1人として、赤い鳥にもいた渡辺俊幸さんが新加入したことも効果大。サウンドの洗練度がアップしていますが、これはドメスティックなフォークがすたれていったおかげもあるでしょう。
 先行シングル「ピアニッシモのかなしみ/またいつか」を収録。「またいつか」はレッツヤンのエンディングテーマでした。
 
 なお、このアルバムには翌77年9月にリリースされたワーナー時代最後のシングル「今だから/トワイライト神戸」をボーナストラックとして収録。前者はバリー・マニロウの歌で有名な世界的ヒット「歌の贈り物」のカバーで南沙織や岩崎宏美もレパートリーにしていたナンバーですが、アッコバージョンはなんとハイ・ファイ・セットの大川茂さんが日本語詞を担当しています。後者は松本隆作品ですが、今や松本さんは神戸にも居を構えておりますからね。風街フリークも要チェックの1曲ですぞ。
 
 という小坂アッコちゃんのワーナー時代のアルバムBOX。「あなた」だけでないアーティストであるのはもちろん、一流のシンガー・ソングライターであるとともに、あの美声と絶対音感を武器にした一流のボーカリストであったことも実感できるセット。
 今日までオールマイティーな音楽活動を続け、聖子や明菜に楽曲提供したり、アニソンやミュージカルに欠かせない存在となったり、紆余曲折はあったようですけれど、未来を嘱望されたあの頃の予想通りに才能を発揮し続けているアッコちゃんですが、これを機に初期作品の再評価も高まることを祈っています。
 
 
 

(2018.9.12)
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