劇伴集パート２、赤い鳥の幻の音源がついに発掘！

　日本テレビのグランド劇場を代表する劇伴音楽を手がけた作曲家といえば、ビリー・バンバンのオリコンNo.1シングル「さよならをするために」（「３丁目４番地」）をはじめ、西田敏行「もしもピアノが弾けたなら」や杉田かおる「鳥の詩」（ともに「池中玄太80キロ II」）などの大ヒット主題歌でもおなじみ、坂田晃一先生。
 
　坂田メロディーに漂うのは、先生の優しいお人柄や、東京芸大という名門で学ばれた方独特の知的なムードはもとより、山本直純大先生のお弟子さんならではのポピュラー性。そしてヨーロッパ的でクラシカルなイメージと、日本人の心の琴線に触れる哀愁味を併せ持つ品格。それこそが作曲家・坂田晃一の真骨頂ではないかと思っておりますが、再評価が高まったのは2011年、森山良子の「さよならの夏」（「さよならの夏」）がジブリ映画のテーマソングとしてリメイクされたのがきっかけでした。
 
　翌2012年には、先生の代表的テーマソングを集めた作品集「 坂田晃一 テレビドラマ・テーマトラックス 」（ こちらで紹介）がリリースされ、2014年には「さよなら,今日は」（「さよなら,今日は」）で知られる朝倉理恵のほぼ坂田作品集といえるアルバム「誰のために愛するか」（ こちらで紹介）がソニーミュージックのオーダーメイドファクトリーでCD化。
 
　作品集の方も静かなロングセラーを続けていると聞いておりましたが、このたび続編「 坂田晃一/テレビドラマ・テーマトラックス2 」の発売が決定しました！
 
　有名曲は前作で網羅していましたので、今回はかなりマニアックな選曲となるようですが、なんといっても目玉は赤い鳥の「目覚めた時には晴れていた」（「2丁目3番地」）の発掘！
　前作の企画時のみならず、赤い鳥のBOXの時も、山本潤子さんのBOXの時も、あるべき所から一切見つからず絶望視されていたのですが、今回奇跡的に発見されたのだそうです。
　ドラマが放映されていた1971年以来レコード化を要望されていた名曲で、後にビリー・バンバンや伝書鳩がいくらカバーしても、オリジナルの赤い鳥を超えることはできないという声が非常に多かったと聞きます。待ちながら鬼籍に入った方も少ないことでしょうし、そういう意味でも今回はこの1曲だけでも購入価値があると思います。
  
　そして今回は前作のボーナストラック、西玲子「白い季節」の元歌としても知られるナオミ＆メープル「明日への出逢い」（「グランド劇場」）をはじめ、初CD化となるナンバーが多数。それも、風車「春を知らぬ季節に」（「氷紋」）、真木悠子「絵梨子のとき（「北都物語」）、古谷野とも子「愛はゆれている（「夏の影」）、真木悠子「明日の海が見える」（「新車の中の女」）といった前回と対になるサブテーマがずらり。
 
　また、今回は歌モノだけでなく、劇伴作曲家としての真骨頂であるインストもバッチリで、NHK朝の連続テレビ小説「雲のじゅうたん」「おしん」「チョッちゃん」、大河ドラマ「おんな太閤記」「いのち」「春日局」といった代表作のサントラも収録。先生も冒頭のシーンに出演なさっていた「家政婦は見た」や、ビートたけし一家を描いた「菊次郎とさき」は今回が初商品化です。
 
　さらに、先生の近年のお仕事から、フランスの女性彫刻家、カミーユ・クローデルをモチーフにした舞台「ワルツ～カミーユ・クローデルに捧ぐ～」の挿入歌「カミーユのワルツ」「MITASORA」もチョイス。歌入りのドラマ主題歌だけに特化した前作とは異なり、バラエティーに富んだ構成となっています。
 
　個人的には坂田作品で最もCD化を切望していた狩人の「愛ひとつ道しるべ」（NHK銀河テレビ小説「わかれ道」）がCD化された今、榊原郁恵が主演ドラマでカバーした主題歌「さよなら・今日は」（「先生は一年生」）の初商品化を願ってきましたが今回も叶わず。先生は実績を鑑みてももっと大規模なアンソロジーが組まれるべき作曲家でいらっしゃいますので、いつかBOXなどの大型企画が実現することを願っています。