15年ぶりのベストは新曲入りのシングル集！

　91年に放った大ヒット「ほっとけないよ」や、カバーした郷ひろみにバラードシンガーとしての活路を見出させた「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」などで知られる楠瀬誠志郎さん。
　90年代初頭に巻き起こった男性ボーカリストブームの波に乗ってやっとブレイクした感がありますが、シンガー・ソングライターとしてのデビューは早く、86年4月のことでした。
 
　その前からソングライターとして活動していて、アイドルフリークには、あの橋本美加子のセカンドシングル「蒼いときめき」や、小川範子への提供曲にして競作シングルとなった「ひとみしりAngel～天使たちの Lesson～」 、薬師丸ひろ子「手をつないでいて」などの作者としてもおなじみのことでしょう。
　スタ誕出身のアイドル・高橋美枝が作詞家（風堂美起）に転向して楽曲制作をしたことをチェックしていた人も多いことと思います。
 
　私なんぞはチャカと昆虫採集から入ってファンになったクチですので、もっと正当に再評価されてほしいアーティストの1人だと思っておりますが、フジテレビ系「LOVE LOVE あいしてる」にLOVE LOVE ALL STARSのメンバーとして出演されていた時の感じでもわかるように、ご本人は奥ゆかしくてグイグイ前に出るタイプではないんですよね。
 
　とはいえ、爽やかで弾力のあるハイトーンや繊細緻密なコーラスワークはもとより、シャイで誠実、そしてナイーブな詩世界そのものという感じのキャラクターは唯一無二。2010年からは第一線に復帰されており、先日間近で拝見してちっとも衰えていないことに驚いたものでしたが、ここに来て、久々となる2枚組ベストアルバム「 Single Collection and Something New 」（特典のポストカード付きは「 【メーカー特典あり】 Single Collection and Something New (ポストカード付) 」）の発売が決定しました！
 
　2004年にリリースされた本人セレクションによる2枚組「 GOLDEN☆BEST/楠瀬誠志郎 」以来、15年ぶりのベストとなりますが、今回は文字通りシングルコレクション。
 
　「宝島」から「天使の消えた聖夜（Silent Night Version）」まで、86年のデビューから94年にキティ移籍時代、そして97年のソニー復帰までのシングルA面曲を網羅。
　「ほっとけないよ」に続く「君と歩きたい」「とっておきの季節 (とき)」「星が見えた夜」という一連のスマッシュヒットをはじめ、ほとんどが大型タイアップだったので、耳馴染みの曲ばかりではないかと思いますが、そのほかにも、後に両A面扱いとなり達郎やユーミンに負けない（？）クリスマスソングとして知られる「一時間遅れの僕の天使」や、タイアップ付きでよく知られたカップリング曲なども追加。
　昼ドラ「ぽっかぽか」シリーズの主題歌として何度もシングル化された「しあわせまだかい」は95年のリミックスバージョンが収録されるようですが、さらにボーナストラックとして、昨年11月に行われたotonanoライブから「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」「小さな手のひら」というライブ音源曲と、新曲「トム・ソーヤ」を収録。
 
　岩谷時子作詞による本田美奈子とのデュエットシングル「Fall In Love With You―恋に落ちて―」が漏れているのが惜しいところですが、ファンならずともコレクションしておきたいベストになる模様です。
 
　2017年には14年ぶりとなるオリジナルアルバム「 LET'S SWEET GROOVE 」を発表した楠瀬さん。旧譜の方では須藤晃プロデュースの初期アルバムのみCD選書化されておりましたが、現在は大半の音源が配信で入手できるもののCD盤は入手困難ですので、これを機に再評価が高まり、過去の名作の再復刻が進むことを祈っております。