初CD化多数!ビクターアイドルの歴史、ここにあり!
昨年のオリコン年間ランキングでは、1位から4位までをAKB48が独占したほか関連グループが軒並みランクインを果たすなど、特定団体のみとはいえ女性アイドル上位時代が続いています。
いろいろ形は変わっても、アイドル商戦は今日まで連綿と続いているのだと感慨深いのですが、その根底にあると言えるのが、やっぱり一億層中流時代の象徴であり、国民の意識を統一したカラーテレビ。
そのカラーテレビをステージとして花開いたアイドルこそ現在のアイドルのルーツのような気がしますが、歌という分野でアイドルポップスというジャンルを開拓したのが新進レコード会社のCBS・ソニーであり、その成功を追いかけるように力を入れ、好敵手となったのが老舗のビクターと言えるでしょう。
この双璧をなす両巨頭が互いに切磋琢磨し、後進を牽引し、ヤングアイドルというジャンルを押しも押されもしない一大ビジネスへと成長させていったのは疑いようのない事実です。
その軌跡を振り返る時、楽しみの一つとなるのは、レコード会社によって異なる傾向。
作家の専属こそオープンになっていたものの、各社伝統のお家芸や強いライバル意識もあったようですし、デビューするアイドルの個性や歌はもとより、社内デザイナーの年齢やセンスの違いが如実に出るジャケットデザインなど各社のカラーの違いなどは、現代のコレクターにも偏愛されるポイントであったりします。
ただ、垣根を越えたコンピ盤が当たり前となった今では、会社別の展開が分かりづらくなっていますので、そういう趣味を持つマニアの皆さんには自社音源による廉価盤コンピがもてはやされているようです。
CD黎明期にはこぞって出ておりましたし、通販チャネルでは昔から各社連合のBOXで体系的に聴けたりしますが、近年静かに発売されていたEMI(こちらで紹介)やキング(こちらで紹介)、ワーナー(こちらで紹介)などは充実の仕上がり。マイナーなB級アイドルや初CD化曲が入ることも少なくなく、うかうかしてはいられない内容だったりするのです。
今回、ビクターからおなじみの廉価盤・TWIN BESTシリーズの1つとして、サラッと出ることになった2枚組「
タイトルだけ見ると、いつもの定番コンピかとシカトしてしまうところですが、侮ることなかれ! 売れた人もそうでなかった人も、ビクターアイドルの歴史がわかるラインアップで、2003年に初回発売された「 デビュー! ~ビクター・アイドルPOPS デビュー・シングル・ヒストリー~ 」の次作、いや86年の「宝石箱 アイドル伝説」をひな形に95年にTWIN BESTシリーズとしてリニューアルした「アイドル宝石箱」の続編という感じで、ほとんどがデビュー曲や代表曲以外の選曲となる全40曲で構成されています。
ディスク1は70年代編で、ビクターとしては初めてのアイドルポップス路線、麻丘めぐみ「わたしの彼は左きき」を筆頭に、桜田淳子「黄色いリボン」、リンリン・ランラン 「陽気な恋のキューピッド」、アン・ルイス「グッド・バイ・マイ・ラブ」、岩崎宏美「シンデレラ・ハネムーン」、ピンク・レディー 「カメレオン・アーミー」、石野真子「ジュリーがライバル」というビッグネームに混ざって、マイナーなアイドルの未CD化だったセカンドシングルなどがごっそり。
例えば、スタ誕出身で百恵ちゃんと同じ決戦大会でスカウトされた松下恵子「乙女ごころ」、スクールメイツ出身・友永順子のベンチャーズ歌謡「さすらい慕情」、ぎんざNOWによく出ていた松岡ひろみ(現在はジャズボーカリスト・稲里ひろみとして活動中)「東京-北京」、現・真咲よう子の紅谷洋子「恋は1/2」、戸田恵子として花開いたあゆ朱美「街あかり」、君スタ出身の石田文子「あそび」、安西マリアのビクター移籍後のナンバー「恋のスイング」などなど、マニアも垂涎の選曲。
またCD化済みではありますが、シェリー・イン筒美ディスコの「恋のハッスル・ジェット」のほか、スタ誕からはドラマ人気が高かった北村優子「ハロー・サンシャイン」や、しのづかまゆみ 「嫁入り前」や井上望 「好きだから」といった実力派、さらに男性アイドルではサンミュージック期待の大型新人だった太川陽介のイメチェンヒット「Lui-Lui」が入っています。
70年代はアイドルのビクター音楽産業というイメージがありますが、それは桜田淳子、岩崎宏美、ピンク・レディー、石野真子というように「スター誕生!」出身者がいずれもビッグになって大成功を収めたからだと思います。
一方、ディスク2は、松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」で幕を開ける80年代編。まさかの大成を遂げた荻野目洋子を頂点に、高岡早紀「悲しみよこんにちは」と女優として開花した面々や、最後の正統派アイドルと呼ばれた高橋由美子「友達でいいから」までを網羅。ヒット曲でなくとも大物ぞろいのこのラインアップはさすがビクターです。
ビッグになりすぎたキョンキョンが入っていないのが残念ですが、目玉は同じスタ誕出身で最初はキョンキョンよりプッシュされていた中野美紀のセカンドシングル「破れたダイアリー」の初CD化。あとはキョンキョンと「あまちゃん」でも共演した美保純「裏切り人形(ドール)」でしょうか。
男性陣では、子役出身、新八先生で注目された斉藤康彦の第2弾「U」に、CMで話題が沸騰した宮田恭男のデビュー曲「ガール」と、泣いて喜ぶ人も多そうです。
そういえばビクターの80年代アイドルの代表格の1人、年季が明けた酒井法子も入っていませんが、彼女をオーディションで破った2人、グランプリ・水谷麻里の松本+筒美コンビによる「乙女日和」、準グランプリ・岡谷章子の「インパクト」で補完している感じでしょうかね。
古くはRCAレーベルの森田健作、下って淳子やリンリン・ランランたちの縁といいますか、サンミュージックとの絆が固いのもビクターならではと言えそうです。
ほかにも、百恵ちゃんデザインの衣装で歌った甲斐智枝美のデビュー曲「スタア」、レコードデビューがぐんと遅くなった白石まるみのユーミン&マンタ作品「オリオン座のむこう」、伊藤さやかのアニメ主題歌「恋の呪文はスキトキメキトキス」、80年代ナベプロアイドルの代表格・坂上とし恵の鳴り物入りデビューシングル 「き・い・てMY LOVE」、実力派が徒になった気がする岡本舞子「ナツオの恋人ナツコ」など、それぞれに個性的な面々が脇を固めています。
こうして通して聴いたら、なんとなくビクターの社風のようなものも感じられるんじゃないかと思ったり。デビューからずーっと所属し続ける人が多い(もちろんヒットが前提だとは思いますけど)のも特徴的ですし、のりピー事件の時にも感じましたが1人1人のアーティストを大切にしてきた愛情も大きいような気がします。
近年はレコード会社の再編が進み、愛着のあった会社やレーベルがなくなったり、もはや当時のままの雰囲気でノスタルジーに浸りきることなど難しくなっておりますが、こういうコンピ盤でなら、脳内再現ができ、忘れていた細かい記憶もよみがえってきそう。大げさでなく認知症などを予防するためにも効果的な気がしますし、アンソロジーを編んでないレコード会社もこれに続けばと思います。
(2014.1.14)