ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#930
森高千里/ザ・シングルス <アンコールプレス>
2019.1.25再プレス、初回生産限定盤:WPCL-1112830、¥4,076+税)

25周年シングルA面コンプ初回盤が再プレス!

 2012年のデビュー25周年を契機に、映像作品を中心にした旧譜のリイシューを活発化させ、コンサート活動も再開させている森高千里さん。
 
 一昨年の30周年には過去のツアーのセットリストをそのまま再現したり、シングル曲を発売順に全曲披露したり、趣向を凝らしたライブを続けていますが、今年は1月26日から「この街TOUR2019」を敢行。
 このツアーではデビュー曲「NEW SEASON」をオープニングに、ほぼシングル曲で構成されたセットリストとなっており、往年のファンは大喜びしているそうですが、初日スタートのタイミングで2012年に出た3枚組のコンプリートシングルコレクション初回盤「 ザ・シングルス [3CD+フォト・ブックレット]<初回生産限定仕様> 」がアンコールプレスされました!
 
 このベストは、87年の記念すべきデビュー曲「NEW SEASON」から、産休前の99年にCMタイアップでセルフカバーした「一度遊びに来てよ'99」まで、レーベルの垣根を越えたシングルA面(両A面含む)全45曲を完全収録。
 森高の場合、バージョン違いやミックス違いがやたら多かったので、純粋なシングルコレクションとなる本作は、ファンならずともコレクションしておきたい好アイテムですが、今回アンコールプレスされる初回生産限定盤は、48ページの別冊フォトブックレット付きで、三方背ケースのスペシャルパッケージ、ピクチャーレーベルという豪華仕様となっております。
 
 各ディスク簡単に紹介しますと、DISC 1では、打ち込み全開の初期のユーロビートサウンドにのせ、ビジュアルも含め語り継がれている「ザ・ミーハー」や「ザ・ストレス」の強烈なインパクトをはじめ、南沙織のカバーにして出世作となった「17才」あたりがどうしても目立ちますが、ブレイク前夜では時代性を感じる「GET SMILE」やキュートな森高節の「ALONE」などなど名曲多し。
 
 ブレイク後では、ドラマ「時効警察」の主題歌としてカバーされて再評価を受けた「雨」、熊本弁が印象的でライブでは人差し指の振りがおなじみだった「この街(HOME MIX)」、筒美京平先生書き下ろしの「八月の恋」などが傑出していますが、自作詞で主張するアイドルというくくりで特筆すべきはグリコポッキーのCMソングにもなった「道」でしょう。
 本当に大好きな相手と過ごした日々ならば、単に通った道ばたの石ころやゴミでさえも忘れられない大切な想い出になる——そんなテーマと言葉のチョイスに衝撃を受け、森高の詞のスゴさを体感したことでした。
 
 例えば職業作家の先生方の詞が小説で、シンガー・ソングライター勢の詞がエッセイだとしたら、森高の詞はやっぱり個人の日記の域。でも、当時、同世代の若者として同じ時代を生きてきた感覚としては、まだホンネとタテマエがきちんと区別され両立してた頃、ホンネを徒然なるままに綴った日記の方が、とてもリアルで心に響いたのは確かだったと思います。20年ふた昔、SNSなんかで誰もがいつでも平気で発信できる今とはある意味まったく違う世の中だったワケですから。
 それでも、大人から見たら稚拙で常識外れな日記だったとしても、ザ・森高ダイアリーの根底に見え隠れしたのは、社会や人間に対する風刺の視点。 かの聖子もセルフ時代へと突入した時期、詞を書くアイドルなんてまったく珍しくありませんでしたが、彼女らと森高との決定的な違いはこの点にあったと確信しています。
 事実、最初はミニの脚線美とか、過激でヘンテコだったアイドル的要素ばかりが注目され、オタク文化の象徴のようだった森高ですが、次第に歌詞が共感を呼び、高く評価されて支持が広がったように思いますからね。
 
 もちろんその詞をサポートし、森高の音楽性を高めた作曲陣、斉藤英夫さんをはじめ、高橋諭一さん、安田信二さん、伊秩弘将さんらの力も大なるものがありましたよね。
 森高がドラム、キーボード、ギターなどを演奏し、ミュージシャンとしての色もアピールしていったのも、彼らのバックアップあってこそだったでしょう。
 
 続くDISC 2は、もはや怖いものなしの全盛期の大ヒットがズラリ。
 20才の時すでに21才をオバさんと定義していた森高ですが、「私がオバさんになっても」や「ハエ男」「ロックン・オムレツ」のようなコミカル風刺系と、初のオリコンNo.1「風に吹かれて」や「Memories」「夏の日」などいい旅・夢気分な叙情的名曲の対比は、時代がすべて味方しているというか、ある意味神がかっているような気さえします。
 その最高峰があの名曲「渡良瀬橋」であり、多くの人が意外がりつつもあの曲を森高の本質としてとらえたのでした。
 
 また、ANA沖縄のキャンペーンソング「私の夏」をはじめ、アサヒビールのCMソングにしてビアガーデンの乾杯やカラオケでもよく歌われた「気分爽快」や「素敵な誕生日」、明石家さんま主演のドラマ主題歌「二人は恋人」など、天下のビッグヒットが満載なので、とにかくパワーが感じられます。
 
 そしてDISC 3は成熟期といいましょうか、熟練の域ともいえるナンバーがいっぱい。
 サントリーアイスジンのCMソング「ジン ジン ジングルベル」や、代表曲の一つといっても過言ではないめざましテレビのテーマソング「ララ サンシャイン」、ホソノさんとのコラボ「ミラクルライト」、ローソンのキャンペーンソング「Let's Go!」「SWEET CANDY」、久保田利伸が曲提供の同名ドラマ主題歌「海まで5分」と見事なまでに強力タイアップばかりです。
 
 ただ、時代の寵児になった者の宿命で、次第に新鮮味は薄れ、消費されていくたびにアーティストパワーも感じられなくなっていったのも事実。 
 森高が牽引してたはずの時代が森高に追いついてしまったというか、こう企画先行の完全タイアップばかりになってしまうと、どうしても瞬発力勝負の感があった森高は…という感じだったような気がします。顎関節症での休養などもありましたし、その間に世紀末のめまぐるしさが森高を追い越してしまったのでしょうか。
 
 しかし、それだからこその名曲も多くて、引き続きの叙情路線「休みの午後」からの静や陰の部分、すなわち「銀色の夢」や最後のトップ10ヒットとなった「SNOW AGAIN」のはかなくて切ないこと。
 後期の名作「冷たい月」「私のように」といったシブめのナンバーもオススメです。
 
 というザ・森高シングルス。「この街TOUR2019」の物販で買うと、会場限定特典として全シングルのジャケ写入りクリアファイルが先着でもらえるそうので、コンサートに行かれる方はそちらでお求めになるのがよさそうです。
 
 
 

(2019.1.29)

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